CINEMASPECIAL ISSUE
柄本佑主演『木挽町のあだ討ち』
やっぱり映画は映画館で観たい

──FLYING POSTMAN PRESSは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>をコンセプトにしています。柄本さんの人生を豊かにしてくれた作品と言うと?
柄本 小学校の時に『座頭市物語』(1962)という映画を観て映画監督に憧れまして。以来、いろんな映画を観てきましたけど、確か高校の頃だったかな。『フレンチ・カンカン』(1954)というジャン・ギャバンが主演のミュージカル映画を観まして。どの映画がいちばん好きかと考えると、『フレンチ・カンカン』なんですよ。
──『フレンチ・カンカン』を劇場で観られたんですか。
柄本 新文芸坐で観ました。2本立てのうちの1本が『フレンチ・カンカン』で。実はもう1本のほうを目当てに観に行ったんですけど、『フレンチ・カンカン』があまりに面白くて、もう1本がなんだったかもはっきり覚えていないぐらい(笑)。観終わって家に帰って親父に「『フレンチ・カンカン』最高だったぞ」と話したら、その日の最後の回を親父が観に行ったんです。親父が帰ってきた頃には僕はもう寝ていたんですけど、親父がわざわざ僕を起こしてまで「めちゃくちゃ良かった」と言ったぐらい(笑)。いやぁ、あの映画は良かったです。
──なかでも好きなシーンは?
柄本 最後のカンカンを踊るところかな。紆余曲折あり、いざ、カンカンの幕が上がって踊り出す、あのラストシーンは大号泣でした。でも、やっぱりどのシーンも好きですね。幸福な時間だけが続くじゃないですか。もちろん、大変なこともつらいこともあるものの、そういったことも含めてすべてが幸福な時間という、あのミュージカル映画の豊かさというか。一切圧がなくて素晴らしい映画ですよね。また、頭で考えられて作られた映画じゃない。身体で作られた映画なんだなとも感じます。始まった瞬間から好きでしたもん。「あ、これ、もう好き」みたいな(笑)。で、始まった瞬間にもう終わる寂しさを感じ始めていましたね。あ、あと僕が割と影響を受けているのがアステアで。
──フレッド・アステアですか。
柄本 そうそう。うちのおばあちゃんがアステアの大ファンで。日本未公開のものも含め、アステアの映画は全部VHSを持っていたんです。海外に行った時に買ってきたりしていたみたいで。うちのおばあちゃんって怒ると本当に怖かったんですよ。ひとことも口をきいてくれなくなる(笑)。でも、タイミングを見てアステアの映画をかけると、ちょっとずつ機嫌が直っていくんです。「チキショー、いいなぁ」とか言いながら(笑)。アステアの何がすごいかって、“俺もできそうだな”と思わせるんですよね。でも、いざやってみると難しい。本当は難しいことをしていると知っているのに、アステアの映画を観るたびに、“やっぱり俺、これできると思うな”となるんですよね。
──さらっとやっているように見せることがいちばん難しいのかもしれないですね。
柄本 そうなんですよ。これは芝居でも常々思うことだけど、“この芝居はできないな”と思わせるより、“自分でもこの芝居できそうだな”と思わせるほうが、実は難しいんじゃないかなって。『社長』シリーズ(※東宝が1956年から1970年まで製作した森繁久弥主演の喜劇映画シリーズ)なんか観るとそれが如実で。『社長』シリーズの三木のり平さん、小林桂樹さん、加東大介さんあたりの芝居を観ていると、“楽しそうだな。俺もできそうだな”と思ってしまうんです。それで家で練習してみて、現場で試しにやってみるんですけど全然自分ができていないのがわかる。難しそうに見せないというのは、本当にすごいことだなと思います。
──映画館で映画を観る、というのもやはりいいものですよね。
柄本 それは本当にそう。やっぱり映画は映画館で観たいと、僕は愚直に思っているんです。これは明確に経験したことがあって。うちの親父は『緑の光線』(1986)という映画が好きなんです。中学校の頃に映画が好きだと初めて親父に話したら、「これ面白いよ」と、『緑の光線』のVHSを渡してくれた。それで観てみたんですけど、正直その時は何が面白いのか全然わからなかったんですよ。その後、高校の頃にはヌーヴェルヴァーグに興味を持ち始め、(ジャン=リュック・)ゴダール、(フランソワ・)トリュフォー、(クロード・)シャブロルあたりの映画を観るようになって。その流れの中に『緑の光線』を撮った(エリック・)ロメールもいたんです。確かあの時、ロメールはロメールでも『クレールの膝』(1970)のほうが観たくて新文芸坐のオールナイトイベントに行ったんです。ラインナップの中に『緑の光線』もあったものの、“『緑の光線』は寝ていればいいか”とさえ思っていた。そうしたら、『緑の光線』が圧倒的に面白くて。VHSで観たのは映画を観たうちには入らないなと思いましたね。やっぱり、映画というのはスクリーンでかけられるように作られているものなので。そんなふうにいつまでも愚直に思っていたいです。

──『木挽町のあだ討ち』ももちろん、まずは映画館で観たい1本です。
柄本 そうですね。特に冒頭の仇討ちのシーンなんかは、映像美というものが本当にありますから。それはやっぱり映画館の大きなスクリーンで、美しい光の粒子で観てもらうのが絶対にいいと思います。劇場で観ていただくべき映画になったんじゃないかと思います。
柄本 佑(えもと たすく)
東京都出身。俳優。近年の出演作に映画『きみの鳥はうたえる』(2018)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(2021)、大河ドラマ『光る君へ』(2024)、ドラマ『いつか、無重力の宙で』(2025/声の出演)など。6月に映画『メモリィズ』、2026年に『黒牢城』が公開待機

『木挽町のあだ討ち』
2026年/日本/120分
| 監督・脚本 | 源 孝志 |
|---|---|
| 原作 | 永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊) |
| 出演 | 柄本 佑 渡辺 謙 ⻑尾謙杜 北村一輝 ほか |
| 配給 | 東映 |
※2月27日(金)より全国公開
Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

