CINEMASPECIAL ISSUE
柄本佑主演『木挽町のあだ討ち』
枠があるほうが自由になれる

──総一郎は普段は軽やかに話しますが、時折ドスの利いた声を出したりもします。声色の使い分けが巧みだと感じました。
柄本 お話した通りで、目立たないようにしよう、森田座の方々が立つように自分は一歩下がっていようと思っていたんですけど、僕ってデカいんです。何も考えずに棒立ちしていると、逆に画的に目立っちゃう。多分、それと関係しているような気がします。何もしないと目立っちゃうので、声色を変えるとか、わちゃわちゃと動くとか、そういうことをしてなるたけ隠れようとしていた気がします。あとはやっぱり、監督が書いたホンで操作されていたので。僕が何かをしたというよりは、自然とそうなるホンだった気がします。
──時代劇がお好きだと公言されていますが、演じる身としてどんなところに楽しさ、やりがいを見出しているのでしょうか。
柄本 例えば、衣裳。僕の役は今回着ませんでしたけど、北村一輝さんが演じられた作兵衛は着流しを着ていて。実は着流しって普段から着ていないとなかなか、歩くことすら難しいものなんです。手で持って歩くと歩きやすくなるとか、そういうやり方は知っているものの、そう簡単にはできません。やりにくさとちゃんと向き合い、普通に歩けるところまで持っていこうとか。そういうのが楽しいんです。あと、畳一畳を歩く歩数が決まっているとか、何かをまたぐ時には必ず左足からだとか。“そんなところまで誰が観ているんだ?”というところまで(笑)、いろいろルールや縛りがある。そういう、わかりやすく挑めるものがあるのが楽しいんです。ある種の足かせではありますけど、僕は足かせがあるほうが、枠があるほうが自由になれると思ったりもする。衣裳にも所作にも決まりごとはなく、なんでもしていい、というほうが難しく感じてしまうところがありますね。また、時代劇のルールって長い歴史の中で培われてきたものじゃないですか。歌舞伎とか、映画が作ってきた歴史なんだなと感じられるのも大きいです。


