CINEMASPECIAL ISSUE
柄本佑主演『木挽町のあだ討ち』

柄本佑×映画『木挽町のあだ討ち』 時代劇の枠組みの中に自由を見出す
直木賞と山本周五郎賞をW受賞した永井紗耶子による同名小説を原作に、源孝志が監督と脚本を、柄本佑が主演を務めた映画『木挽町のあだ討ち』が2月27日(金)より公開となる。 物語の中心舞台は、江戸の木挽町にある芝居小屋・森田座。ここで起こった仇討ちに隠された真実を、かかわった一人ひとりの証言を章ごとに連ねて明かしていく原作小説に対し、映画では田舎侍の加瀬総一郎を主人公に据え、総一郎が聞き手となって森田座の面々に対峙し、真実を明かしていく。いわゆる刑事もの、探偵ものの趣がある語り口が楽しい上、視覚や聴覚に訴える見せ場も多く、映画の醍醐味を味わえる1本に仕上がっている。
物語について、時代劇について、そして、映画館で映画を観るということについて。ミステリーと人情が溶け合う物語で探偵的役回りを担った柄本佑に話を聞いた。
写真:小田原リエ スタイリング:坂上真一(白山事務所) ヘアスタイリング&メイクアップ:星野加奈子 取材・文:佐藤ちほ 衣装協力:ジャケット(HERILL)、そのほかは私物
森田座の物語をいかに魅力的にするのか
──映画『木挽町のあだ討ち』の原作小説は、出演のオファーを受ける前にお読みになっていたとか。
柄本 僕は本屋に行くのが好きなんです。目的の本をゲットしつつ、ちょっと徘徊して気になった本をジャケ買いするのが好きで。この本もそうやって見つけたんです。と言うのも、タイトルにある木挽町はうちの父(※俳優の柄本明)の生まれた場所でして。木挽町で柄本印刷という印刷屋をやっていたらしいです。そんなこともあり、これは読まなきゃと。とても楽しくて面白い小説でした。読み出したら止まらないんです。とある仇討ちにかかわった人たち、一人ひとりの証言で話が進んでいくという語り口がスリリングで、読んでいて楽しかったです。ただ、これは映像化は無理だろうとも思った記憶があります。その後、この本を原作とした映画への出演のお話をもらった時には妙縁に驚きつつ、あの話をどうやって映画にするのかなとも疑問に思いましたね。いただいた台本を読んでみたら、なるほど、原作には出てこない加瀬総一郎という男を主人公に据えて描くのかと。確かにこの方法だったら具現化できる。源(孝志)監督のアイディアが面白いと思いました。
──原作小説に描写のない加瀬総一郎という人物と映画の脚本で出会った際、その人物像はどう感じましたか。
柄本 監督は「この役は刑事コロンボである」とおっしゃっていて。刑事コロンボもそうですけど、例えば『鬼平犯科帳』シリーズで(二代目中村)吉右衛門さんが演じられた主人公の平蔵。主人公だからクレジットでも最初に名前が出てきますが、話によっては5分ぐらいしか出てこなかったりするじゃないですか。加瀬総一郎も同じで、要はこの物語の主役は森田座なんですよね。森田座という場所と、立作者の金治(渡辺謙)をはじめとする森田座の人たちが主役なんです。彼らの物語をいかに魅力的にするのかという役割が、総一郎という人にはあると思っていたので。自分も総一郎をやるつもりでホンを読んでいましたから、なるたけ森田座の方々の邪魔をしないようにしようと。森田座がしっかり立つよう、総一郎自体はあまり目立たずにやれたらいいのかなと思った気がします。

──原作に描写がない人物だからこそ自由に作っていけたのでは?
柄本 自由度が高い分、自分でも総一郎という人はどんなふうになるのだろうと思っていたのですが、撮影初日に監督が言っていたことがこの役をやるいちばんの手がかりになりました。田舎から江戸に出てきた総一郎が森田座を見つけ、『ここか』と言い、客の呼び込みをしている一八(瀬戸康史)のほうに行くという冒頭のシーンを初日に撮りまして。テストの時、人の往来を避けながら一八のほうに行ったんです。そうしたら監督が来て、「(人を)避けているけど、避けずに真っ直ぐ、ガンガンぶつかりながら行ってくれる?」と。「なるほど、そういう人なんですね」と。つまり、自分のアンテナがふれたら周りが見えなくなってしまう。猪突猛進というか、真っ直ぐ向かっていく。きっと総一郎の中では“菊之助(長尾謙杜)か、菊之助じゃないか”ぐらいにパッキリ分かれていると思うんです。総一郎は至るところでメシをごちそうになりますけど、久蔵(正名僕蔵)のところで食っている時なんてそれがわかりやすくて。久蔵は息子を亡くしていて、位牌があるのを見て総一郎は「息子さんですか?」と聞くんですけど、亡くなったと聞いてもメシを食う手は止まらないんですね。でも、菊之助の話になった途端ピクッと止まる。“菊之助か、菊之助じゃないか”と二分しているんです。脳天気で天然でありながら、菊之助のこととなると猪突猛進になる。そういう感じでやっていた気がします。衣裳に関しては監督のおっしゃる通り、コロンボでした。くすんだ茶色味だったり、シルエットだったり、まるっきり“フィーチャリング・コロンボ”なんです。衣裳合わせの時、監督が「もうちょっとコロンボっぽい色ない?」とおっしゃっていたのを覚えています。


