CINEMASPECIAL ISSUE
毎熊克哉主演映画『安楽死特区』
『安楽死特区』は究極のラブストーリー

──毎熊さんのフィルモグラフィには、いわゆる社会派な作品が多くあります。映画で社会的なメッセージを届ける、ということに魅力を感じているのでしょうか。
毎熊 子どもの頃は『ジュラシック・パーク』(1993)とか、『ターミネーター』(1984)とか、大型のエンタメ映画をよく観ていました。それで、純粋に映画って楽しいなと憧れて。いつしか自然と映画監督になりたいと思い始め、専門学校に入学するんですけど、自分で映画を作ってみてようやく、自分は映画でどんなことを伝えたいのかと初めて考えました。思いっきり壁にぶち当たりましたね。その後、演じるほうをやるようになってから大きかったのは、白石和彌監督の『止められるか、俺たちを』(2018)です。「映画で闘うんだ!」と衝撃を受けたんです。社会の何かしらの問題に対し、暴力ではなくて映画をもって闘うんだと。作品を通して何かしらを放つことを大切に考えるようになったのは、そのあたりからだと思います。ただ、エンタメ大作な『ジュラシック・パーク』だって『ターミネーター』だって、根底にはその時々の社会に対する何かしらの思いは込められていると思うんです。それは大人になってから気づいたことですね。そもそも、どんな映画にもエンタメ性と社会性があり、どちらのほうが色濃く出ているのかという、それだけのことなのかなと思ったりもします。
──観客として観て大きな影響を受けた映画も教えてください。
毎熊 1本1本、少なからず影響を受けていると思うんです。ただ、その中でも大きかったなと思うのは、映画を作ろうと東京に出てきたちょうどその頃に観た『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)ですね。あの映画を観て、「あれ、映画ってこれまで自分が思っていたものとは違うかも」と。これは『安楽死特区』とも繋がる部分ですが、『ミリオンダラー・ベイビー』の最後で安楽死が描かれるじゃないですか。全身不随になったマギー(ヒラリー・スワンク)の“死なせてほしい”という願いを、彼女を娘のように思っているフランキー(クリント・イーストウッド)が聞き入れる。で、すべて終わった後にフランキーがひとり、マギーが子どもの頃に父親とよく食べていたというレモンパイを食べているところが映る。そのシーンを観ながら、悲しいなぁと思いました。彼女の願いを聞き入れたら、絶対に自分の首を絞めることになる。一生自分を責め続けることになるとわかっていながら、聞き入れる。18歳の自分にとって、それは初めて観る愛の形でした。
──確かに、『安楽死特区』と通じるものがありますね。
毎熊 『安楽死特区』というタイトルはインパクトがありますし、明らかに社会派だろうと思われると思うんです。でも同時にエンタメなんですよね。『安楽死特区』は究極だと思うんです、ラブストーリーとして。タイトルに騙されずに、と言ったら言い方が悪いかもしれませんが(笑)、普通に楽しんで観てもらえる映画になったと思います。
毎熊克哉(まいぐま かつや)
1987年生まれ、広島県出身。俳優。近年の出演作に映画『初級演技レッスン』(2024)、『悪い夏』『「桐島です」』(いずれも2025)、大河ドラマ『光る君へ』(2024)、Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン3(2025)など。公開待機作に映画『時には懺悔を』(2026)がある

『安楽死特区』
2025年/日本/129分
| 監督 | 高橋伴明 |
|---|---|
| 原作 | 長尾和宏「安楽死特区」(ブックマン社刊) |
| 出演 | 毎熊克哉 大西礼芳 加藤雅也 筒井真理子 平田 満 余 貴美子 奥田瑛二 ほか |
| 配給 | 渋谷プロダクション |
※1月23日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開
Ⓒ「安楽死特区」製作委員会
