CINEMASPECIAL ISSUE
南沙良×出口夏希×吉田美月喜

映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』 南沙良×出口夏希×吉田美月喜 作品愛に満ちた現場で起きた化学反応
第28回松本清張賞を受賞した波木銅による新時代の青春小説を原作に、『猿楽町で会いましょう』(2019)の児山隆が監督を務めた映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』が、1月16日(金)より公開されている。
ラッパーを夢見ながらも、学校にも家にも居場所を見出せずに鬱屈とした日々を送る朴秀美、陸上部のエースで社交性に富み、スクールカーストの上位に属しながらも、家では問題を抱える矢口美流紅(やぐち みるく)。朴秀美があるものを入手したことをきっかけに、ふたりは漫画を自己形成のよりどころとする、斜に構えた毒舌キャラの岩隈真子も仲間に引き入れ、人生一発逆転を狙い、未来を自らの手で掴み取ろうとする。
今回話を聞いたのは、朴秀美役の南沙良、矢口美流紅役の出口夏希、岩隈真子役の吉田美月喜の3人。“それぞれの演技に魅力”に焦点を当てつつ、自由で刺激的な撮影現場を振り返ってもらった。
写真:徳田洋平 取材・文:佐藤ちほ 【南 沙良】スタイリング:武久真理江 ヘアスタイリング&メイクアップ:藤尾明日香(kichi.inc) 【出口夏希】スタイリング:道端亜未 ヘアスタイリング&メイクアップ:中山友恵 【吉田美月喜】スタイリング:有本祐輔(7回の裏) ヘアスタイリング&メイクアップ:田中陽子
現場でいろんな化学反応が起きていた
──『万事快調〈オール・グリーンズ〉』での共演を通じて感じた、3人それぞれの演技の魅力を聞かせてください。まずは南さんの演技の魅力から。特にここが良かった、というところは?
出口 沙良ちゃんが演じる朴秀美はラップをやっていて。私が演じる(矢口)美流紅の前で朴秀美が初めてラップを披露するシーンがあるんです。物語の中ではそのラップを聴いた美流紅が感動して朴秀美に抱きつくんですけど、私自身もすごく感動しました。その場で初めて沙良ちゃんのラップを聴いたので、感動プラス、びっくりしました。あまりに格好良くて。
南 うれしい。ありがとう。
──あのシーンのリリックは即興で、しかも長いですよね。南さん、相当練習されたのでは?
南 そ、そうですね…。
──もしかして、そこまでの練習量ではなかった?
南 実は……数回です。
──わずか数回の練習であの完成度ですか!
出口 そこがすごいですよね。
吉田 本当にすごい。
南 いやいや、そんな。もともとヒップホップは好きでよく聴いていて、耳馴染みがあったというのが大きかったと思います。
出口 あの難しい歌詞を覚えられたこと自体に感動しちゃう。
吉田 すごく長いもんね。
南 いや、みんなでもきっと覚えられるよ(笑)。
吉田 私は、それぞれのキャラクターが夢を語るシーンの時の南沙良ちゃんが好き。
南・出口 何、突然フルネーム(笑)。
吉田 なんか、自然とフルネームで出てきた(笑)。あのシーンではちょっとジャンキーなお菓子とか、ピザとかを食べながら会話するんですけど、沙良ちゃんの所作一つひとつが本当にナチュラルで。また、大ざっぱな感じが出ているのも朴秀美っぽいなと思って。
出口 わかる、あの食べ方がね。
吉田 そう、あの食べ方が。
──食べながら台詞を言う、というのは難しいものでしょうね。
吉田 難しいものなんです。でも沙良ちゃんは本当にナチュラルで。映画の撮影じゃなくて、本当にこんな感じで食べながら話しているんじゃないかとこちらが錯覚しちゃうぐらい。“すごい!”って思いました。
南 うれしい。ありがとう。

──次は、“出口さんのここが良かった”というところを南さん、吉田さんのおふたりから。
南 夏希ちゃんしか出せない輝かしい感じがあって。
吉田 うんうん、輝かしい感じ。
南 私が特に好きなのは、朴秀美が初めて美流紅の前でラップをやった後のところ。美流紅が朴秀美に対して、『私たちの人生ってブックオフで100円で買えるような物語じゃないから!』って言うところ。もともと、夏希ちゃんはすごいエネルギーがある人だと思っていたんですけど、あそこのシーンのエネルギーは特にすごかったです。本番の時、予期せず電車が通ったんですけど。
出口 通ったね。
南 その瞬間、電車の音に負けないぐらいの、それまで一度も聞いたことがない大きな声で、『私たちの人生ってブックオフで100円で買えるような物語じゃないから!』って。“カッケー!”って思いました(笑)。
──出口さん、それはとっさの判断ですか。
出口 すごい長台詞だったんですけど、私、何度も台詞をつっかえてしまっていて。“やっとできた!”と思った瞬間に電車が来ちゃったんです。
南 そうそう。
出口 “ここ、もう1回は嫌だー!”っていう叫びです(笑)。
吉田 そうだったんだ(笑)。
南 でもそれがすごく格好良かった。
吉田 私が美流紅っぽいなと思ったのが、初めてみんなでビニールハウスに行ったところ。私が演じた岩隈があることに誘われ、“いや、やんないし”みたいになっているところがあって。岩隈が『見つかったらどうするんだよ?』と言ったら、美流紅が『見つからないようにやるの』って、ちょっと岩隈の真似をしながら言ったんです。私、眉毛がすごく動くんです。その眉毛の動きを真似されて、岩隈としてイラッとしたんだけど(笑)。
南・出口 イラッとしたんだ(笑)。
吉田 イラッとしたんだけど(笑)、すごく美流紅っぽいじゃないですか。
南 ぽいね(笑)。
吉田 あの美流紅の、一瞬ズケッと来る感じがすごくいいなと思いました。大好きですね。
出口 なんか、ああなっちゃった(笑)。
吉田 そういうこと多かったよね、この現場では。
南・出口 うんうん。
吉田 “この人がこう来たからこう返そう”みたいに、その場その場で自由に演じられて、それがすごく楽しかった。現場でいろんな化学反応が起きていました。

──続いて、“吉田さんのここが良かった”というところを南さん、出口さんのおふたりから。
出口 美月喜ちゃんは表情の一つひとつ、動きのすべてが岩隈真子そのものなんです。
吉田 うれしい。
出口 肩の上げ方とか、ちょっとしたところも岩隈真子なんです。それを最初から最後までやってくださって。
吉田 何、急に敬語で(笑)。
出口 なんか出てきた(笑)。
──吉田さん、所作の一つを計算して?
吉田 最初は“こんな動きはどうかな?”とか、プラスプラスでいろいろと考えてみました。それを現場でやってみて、その後で引いていき、できるだけナチュラルに近づけていく。そういう引き算は自分の中でしていた気がします。
南 美月喜ちゃんはすべてにおいてちゃんとしているんです。ちゃんと考えているし、考えた上でナチュラルにすることができるから、本当に安心感がありましたね。多少私と夏希ちゃんが暴れたとしても(笑)、美月喜ちゃんがいれば大丈夫。全部回収してくれるんです。それって本当にすごいことだと思っていて。
出口 本当にそうだよね。
南 私が好きだったのは、岩隈が『漫画描くぞ!』と言うところ。あそこ、ヤバくない?
出口 ヤバかった。私もあの『漫画描くぞ!』は大好き。
吉田 完成した映画を観て気づいたんだけど、あそこの岩隈、目がバッキバキだったよね(笑)。
出口 バッキバキだったね(笑)。超笑った。
吉田 あのシーンの撮影は楽し過ぎて。撮りながら私自身本当にテンションが上がっちゃっての『漫画描くぞ!』です(笑)。
南 あの『漫画描くぞ!』は天才じゃない?
出口 天才。
吉田 ありがとう(笑)。

──ここまで伺って、誰もが自由に発想してそれを提示でき、受け手側も自由に返せる現場だったことがよくわかります。それは児山隆監督の演出の方針だったのでしょうか。
南 そうですね。そもそも、児山監督はあまり演出をつけない方で。児山監督は、私たち自身にいろいろと考えてほしかったんだろうなって。なんとなくそう感じます。

