CINEMA
映画『ウォーフェア 戦地最前線』

アレックス・ガーランド監督最新作 実話に基づく“戦場”体験、圧倒的没入感
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)においてアメリカ合衆国の分断、そして、いつ起こるとも知れない内戦をリアルに描いた、脚本家で映画監督のアレックス・ガーランドの最新作。共同脚本・監督に迎えたのは、長年の従軍経験と特殊部隊教官の経歴を持ち、退役後はハリウッド映画界でスタントマンやアクション演出を担い、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』ではスタント・コーディネーターを務めたレイ・メンドーサ。メンドーサの実体験をもとに同胞たちにも話を聞き、アメリカ軍の特殊部隊の小隊が2006年にイラクで陥った危機的状況をリアルに再現する。

2006年、アメリカ軍の特殊部隊の小隊はイラクの危険地帯ラマディでアルカイダ幹部の監視と狙撃の任務に就いていたが、アメリカ軍の想定より早く事態を察知したイラク兵に先制攻撃を仕掛けられ、市街で突如、イラク兵士たちと全面衝突。退路もなく完全包囲される中、特殊部隊員には重傷者が続出。指揮をあきらめる者、通信を絶つ者、痛みや恐怖で悲鳴を上げる者…そんな隊員たちにさらなる銃弾が降り注ぐ。小隊は逃げ場のないウォーフェア=戦地最前線から、いかにして脱出するのか──。

ドラマシリーズ『Reservation Dogs(原題)』(2021~2023)のディファラオ・ウン=ア=タイ、『デトロイト』(2017)や『ミッドサマー』(2019)などのウィル・ポールター、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(2024)や『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(2025)などのジョセフ・クイン、Disney+ドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」(2024〜)のコズモ・ジャーヴィス、『メイ・ディセンバー ゆれる真実』(2023)のチャールズ・メルトンら、実力派キャストが集結。俳優たちは撮影の3週間前から元特殊部隊のメンバーが考案・監督する特別プログラムに参加し、本物の兵士と同じ装備をつけて訓練を敢行。寝食を共にしながら訓練に耐え、“共演者”から“戦友”に変わった段階で実戦形式のリハーサルを実施し、撮影に備えた。
さらに、2006年当時の光景をできる限り忠実に描くべく、イラクの市街の一部を再現。その中で本物の爆発物を使用しつつ、複数台のカメラを同時に回し、カットをかけずに撮影することを徹底した。
完成した映画は、“戦場”そのものを体験するものとなっている。観客は戦地最前線に立つ兵士のひとりになったかのように錯覚しつつ、兵士視点で一部始終を受け止めることになる。“戦場”に閉じ込められる95分間、圧倒的な没入体験がここに。
point of view
戦争映画の名作の数々を思い起こせば、リアルな描写が重要であることは間違いない。同時に、兵士の英雄的行動を描くこと、つまりは劇的な効果を狙った脚色や装飾を作品に盛り込むこともやはり重要だと思える。アレックス・ガーランドが手がけた『シビル・ウォー アメリカ最後の日』もやはり戦闘、あるいは戦争状態にある土地に生きる人々をリアルに描写するものだった。その上で寓話、作り手の主張を折り込み、エンタテインメント性も備えた。そんな作品だったように思う。
本作はそれとはまた違っている。アレックス・ガーランドはこう語る。「現実では人々は窮地を抜け出したりしない。状況が厳しい時、ディゾルブもカットも景気のいい音楽もない。状況が許し、緊迫感やその瞬間から解放されるまで、人々はその状況にい続けるんだ。それが本作のやり方だ。映画的な安心感ではなく、あくまで現実に固執する」。
本物の戦場とはどんなものなのかを、実際にそこにいた兵士たちの記憶に固執しつつ描いて観客に体験させる。本作で描かれる戦場には一瞬の安らぎもないし、都合良くヒーローが現れたりもしない。音楽で感傷をあおることもなく、聞こえてくる音と言えば怒号や悲鳴、着弾や爆発の音ばかり。兵士たちはただただ必死にその場を耐え抜き、どうにか生き延びようとする。題材にしているのは20年ほど前に起こった戦争だが、本作で描かれるような戦場は今なお世界各地にあるのだと肌で感じ、心底恐ろしくなった。“今そこにある戦争”の真の姿を、“当事者視点”でまざまざと突きつけてくる。
本作では作り手が意見を表明してはいない。それでも、観客は強烈な何かを受け止めることになるはずだ。

『ウォーフェア 戦地最前線』
https://a24jp.com/films/warfare/
2025年/アメリカ/95分/PG12
| 脚本・監督 | アレックス・ガーランド レイ・メンドーサ |
|---|---|
| 出演 | ディファラオ・ウン=ア=タイ ウィル・ポールター ジョセフ・クイン コズモ・ジャーヴィス チャールズ・メルトン ほか |
| 配給 | ハピネットファントム・スタジオ |
※1月16日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開
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