CINEMASPECIAL ISSUE
佐々木蔵之介と高杉真宙が刑事役
作品は、送り手と受け手が作り合うもの

──FLYING POSTMAN PRESSは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>をコンセプトに展開しています。人生を豊かにしてくれたと思う作品はありますか。
佐々木 僕は東京の大学に入ったんですけど、その後、神戸の大学に編入学しまして。神戸に行く前の春休みに、安藤忠雄さんがデザインして立てられた下町唐座という劇場に唐十郎さんの舞台を観に行ったんです。当時東京で一緒に暮らしていた兄が建築を専攻していて、その兄から「面白い劇場がある」と教えてもらい、当日券を買って観に行って。唐十郎さん、緑魔子さん、麿赤児さん、石橋蓮司さん、柄本明さんという、すごい人たちが出ている『さすらいのジェニー』を。正直、話はさっぱりわからなかった。でも、なんだかすごいものを観たなと。舞台の中央にプールがあり、寒い中そのプールに役者たちがバシャバシャ入っていくんです。で、最後にはプールの奥にある壁がバーンと開いて、唐さんたちが隅田川に流れていくという。
高杉 すごいですね!
佐々木 すごかった。渦巻くエネルギーみたいなものにのみ込まれたような感覚があった。それまで演劇を観たことがなかったわけではないけど、ああいうものを観たのは初めてで、「なんじゃこれは!?」と衝撃を受けました。
──それは強烈な原体験ですね。
佐々木 本当に。あれは浴びて良かったなと思っています。のちに唐さんとも麿さんとも蓮司さんとも柄本さんとも会うことになるんですが。
高杉 すごい!
佐々木 あそこにいた人たちとね。感慨深いなと思いましたね。
高杉 僕もひとつ挙げるとしたら舞台です。僕は福岡出身なんですけど、小学校3年生の頃にキャナルシティ劇場に劇団四季の『人間になりたがった猫』を母親に連れられて観に行きました。それが僕の人生初の舞台で、言葉に言い表せない感動がすごくあった。お話も素敵でしたし、目の前で生で演じているという、それ自体にものすごく感動したんです。また、観劇中にふと隣りを見たら母親が泣いていて。見ちゃいけないものを見てしまったような気がして、その母親の涙も含め強烈に覚えているんです。で、『ロミオとジュリエット』(2023)で初めてその舞台に僕も立つことになって。
佐々木 キャナルシティ劇場に?
高杉 そうです。初めてキャナルシティ劇場で舞台を観た時のことを強烈に覚えていたので、あそこに自分も立てるのかと思うと本当にうれしくて。「あの時座ったのはこの席だった気がする!」とか言って、だいぶ高揚しました。あれは縁を感じた瞬間でした。
──今、おふたりは俳優として作品を世に送り出す側にいらっしゃいます。
高杉 最近、観客ファーストになりたいという思いが強くなってきました。忙しい方々も多い中、貴重な時間を使ってもらっているわけですよね。だとしたら、観てくれる人たちにとって得るものがある時間になったらいいなと強く思うようになって。出演させていただく作品を選ぶ時も、そこは忘れずにいたいなと思っています。
佐々木 特にお客さんにお金を払っていただいて、劇場に足を運んでいただくなんて時には、それに見合うものをお渡ししたいなとは僕も思います。お互い様なんですよね。例えば、「観て励まされた」とお客さんに言っていただいたとして。その言葉にこちら側も励まされるんです。作品というのは送る側と受け手側、お互いが作り合うものだという思いがあります。
高杉 お客さんの協力が必要ですよね、本当に。
佐々木 本当に。お互いを高め合うような関係性でいられたらなと思います。
佐々木蔵之介(ささき くらのすけ)
1968年生まれ、京都府出身。近年の主な出演作に映画『ゴジラ-1.0』(2023)、『映画 マイホームヒーロー』(2024)、ドラマ『Destiny』(2024)、舞台『ヨナ-Jonah』(2025)など。12月26日(金)より『劇場版「緊急取調室 THE FINAL」』が公開。2026年にドラマ『浮浪雲』が放送予定
高杉真宙(たかすぎ まひろ)
1996年生まれ、福岡県出身。近年の主な出演作にドラマ『法廷のドラゴン』『三笠のキングと、あと数人』『夜の道標 –ある容疑者を巡る記録–』(いずれも2025)など。現在はドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』が放送中。2026年1月9日(金)より主演映画『架空の犬と嘘をつく猫』が公開される

『盤上の向日葵』
https://movies.shochiku.co.jp/banjyo-movie/
2025年/日本/123分
| 監督・脚本 | 熊澤尚人 | 
|---|---|
| 原作 | 柚月裕子「盤上の向日葵」(中央公論新社) | 
| 出演 | 坂口健太郎 渡辺 謙 佐々木蔵之介 土屋太鳳 高杉真宙 音尾琢真 ほか | 
| 配給 | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹 | 
※10月31日(金)より全国公開
©️2025 映画「盤上の向日葵」製作委員会
