CINEMASPECIAL ISSUE
佐々木蔵之介と高杉真宙が刑事役
状況は特殊でも心を寄せられる主人公

──おふたりは大河ドラマ『光る君へ』(2024)で一度共演されています。
佐々木 『光る君へ』では、僕は気のいいおじさん役だったんですよ。
高杉 僕が演じた藤原惟規の姉まひろ(※紫式部)の結婚相手の宣孝役を演じていらして。
佐々木 そうそう。それが今回は口の悪い上司になった(笑)。
高杉 はい(笑)。
佐々木 役どころはまったく違うんですけど、『光る君へ』で一度ご一緒していたので、バディもやりやすかったです。

──本作で改めて向き合い、互いに役者としての新しい魅力を発見したりもしましたか。
佐々木 真宙君は常にこれで良しとはせずに、どんな表現方法があるのか、どういうふうにものを考えたらいいのか、どう感情を繋げていったらいいのかと、ずっと考え続け、試していっている。本番中もカットがかかるまでずっと考えながら芝居している。その姿を、僕は素敵だなと思いながら見ていました。一切気を緩めることなく考え続ける真宙君は一緒に演じる相手としてすごく信頼できる、いいパートナーです。『光る君へ』ではそこまでガッツリとやったわけではなかったので。今回一緒に芝居ができたおかげで、真宙君のそんな部分を知ることができました。
高杉 うれしいです。ありがとうございます。蔵之介さんがおっしゃる通りで、『光る君へ』の時はご挨拶するぐらいで、たくさんお話しさせていただくという感じではなかったんです。だから、蔵之介さんとこうしてバディを組めたこと自体、僕は幸せだなと思っていて。もしも自分ではないほかの役者が佐野役を演じ、蔵之介さんとバディを組んでいたとしたらうらやましかったと思います。蔵之介さんは地面に立っているその姿からして違う。そこにいるだけで世界が広がっていくというか。僕自身、蔵之介さんの近くにいるだけで世界が広がっていくことを実感していました。僕もこんなふうにいられたらと、今回ご一緒させていただいて改めて思いました。
──どんな魅力を持った映画に仕上がったと感じていらっしゃいますか。
佐々木 好きなものに集中している時の目の美しさ。集中していく中でガーッと血が巡っていくような感覚。そういうものを持っている人はすごいなと、映画を観て改めて思いました。何か見返りがあるからやっているわけではない。そういう、何ものにも代えられない瞬間を求めているんですよね。これは蛇足ですが、以前、『ゲゲゲの先生へ』(2018)という水木しげる先生の世界をモチーフにした舞台をやりまして。「なんぼ描いても描いても儲からない。生活が苦しい」と口では言っていたとしても、漫画を描いている瞬間そのものが、水木先生にとってかけがえのないものだったんだろうと。そういう話をしたことを思い出しました。何かに集中している時の熱量とか、湧き上がってくる喜びとか、それは観ていて本当に美しいなと思いました。
高杉 上条という棋士が何者なのか。彼が歩んできた人生や置かれている状況は特殊ではありますけど、彼が葛藤する姿は特殊ではないと僕は思っていて。誰かの影響を強く受けざるをえない過酷な人生を送ってきて、その中で、自分としてはどうしたいのかと。そんなふうに葛藤する上条に心を寄せて、彼に救いがあればいいと思っていただけるんじゃないかなと。僕自身もこの映画を観てそんなふうに思いましたし、そこが魅力のひとつになっていると思います。

