FLYING POSTMAN PRESS

鈴木福に聞く「正倉院 THE SHOW」

受け継がれてきた1300年の奇跡に触れ
正倉院という愛の物語を歩く

 1300年という時を経て受け継がれる奈良・正倉院の宝物を全身で感じることができる体感型展覧会「正倉院 THE SHOW-感じる。いま、ここにある奇跡-」が、現在上野の森美術館で開催中(11月9日まで)。10万人を超える来場者を迎えた大阪展に続き、東京展でもオフィシャルサポーターを務める鈴木福さんに話を聞いた。

取材・文:俵本美奈



“体感型”展覧会「正倉院 THE SHOW」

──「正倉院 THE SHOW」は10万人以上の来場者を迎えた大阪展に続き、東京での開催が始まっています。

鈴木 私にとって身近な東京で開催されることはとても嬉しいですし、上野は海外の方にも訪れてもらいやすい場所なので、さらに盛り上がってくれればと思っています。「再現模造」の展示だったり高精細な3Dデジタル映像、音楽やファッション、写真、陶芸など現代アーティストとのコラボレーションで、宝物の魅力を見たり聴いたり香りを嗅いだり、全身を使って楽しむことのできるすごく素敵な空間だと思います。

──鈴木さんにとって、もともと正倉院はどんなイメージでしたか?

鈴木 やはり正倉院は教科書の中の存在という印象で、修学旅行で東大寺に行った際にちらっと認識していたくらいだったのですが、今回の展覧会は教科書の勉強というイメージを壊してくれるもので、楽しく学んで、大きな刺激をもらうことができました。

──正倉院がなぜ作られたかといったところも知らない人は多いかと思うのですが、本展は聖武天皇と光明皇后の紹介から始まり、これは愛の物語なのだなと感じました。

鈴木 私も今年の春、番組のロケで奈良の正倉院や東大寺を訪ねて、正倉院は奈良時代、聖武天皇が崩御した際に、光明皇后が遺愛品を収めるために建てた、“愛”から始まる奇跡の宝庫なのだと知りました。

▲献納された宝物が綴られた目録「国家珍宝帳」。660点以上が並ぶ目録の最後に記されたのが、聖武天皇と光明皇后が使用したふたつの御床(ベッド)であることにも注目したい。

──展示の中で特に印象的だったものはありますか?

鈴木 螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)です。展示された再現模造は単なるレプリカとは異なり、材料や技法を当時のまま再現し、職人の手で歳月をかけて作られています。なかでも螺鈿紫檀五絃琵琶は夜光貝の輝きが本当に美しく、人がらくだに乗っている姿や、鳥や花など、絵柄もとてもかわいいなと思いました。

──私も3D映像で大きくスクリーンに映し出されることで、動植物の絵柄のかわいさにハッとしたところがありました。

鈴木 そして私は母、祖母は箏、祖父、叔父は尺八の演奏家で、父は和楽器問屋の職人と、生まれた時から和楽器の音色を聴いて育ちましたので、1300年前の楽器で昭和の時代に録った音源を聴いた時はとても興奮しました。さらにそれらを用いて亀田誠治さんが生み出した新たなメロディを聴くことができて感慨深かったです。

──音楽、そして蘭奢待の香りの再現もユニークな体験でした。

鈴木 そうですね。織田信長など時の権力者が熱望したという幻の香木「蘭奢待」の香りを最新技術で再現したことに驚きました。お寺などで嗅ぐような甘いお香の香りに近いものを感じました。こちらもぜひ会場で体験していただきたいなと思います。