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“甲田まひる”という表現者
楽曲制作からファッションまで 完全プロデュースの甲田まひるの才能
現在公開中の映画『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌『ナツロス』は、切なさとポップさを融合し、絶妙なテンションで主人公・森蘭丸の心情に寄り添っている。楽曲制作は、24歳のシンガーソングライター・甲田まひる。
5歳でピアノを始め、小学生の時にはジャズピアニストになると決め、中学で本場、ニューヨークへと渡った。現在は楽曲制作からヘアメイク、ファッションまで完全自己プロデュース、ダンスやモデルもこなす甲田はどんな人物なのか? そして今何を感じているのか?
話を聞くと、大きく膨れ上がる可能性を全身で抱え、開花直前といった印象を受けた。ここまで自ら道を切り開き、猛スピードで吸収してきたカルチャーが、この先甲田の中でどう熟成され、“甲田まひる”という表現者をカタチ作っていくのか、楽しみでならない。
取材・文/俵本美奈
『ナツロス』で森蘭丸の複雑な心境を表現
──新曲の『ナツロス』が、現在公開中の映画『ババンババンバンバンパイア』の挿入歌に使われています。夏らしくて最高にキュートで、中毒性のある楽曲となっていまが、完成した映画はご覧になりましたか?
甲田 はい。曲を書くにあたって、映像が完成前の段階から合わせると合計10回以上は映像を観て、話の流れは把握しているはずなのに、初日に映画館に観に行ったら、面白過ぎてずっと声出して笑ってました(笑)。吉沢亮さんのあの絶妙な間は、素が面白い方でないとできないんじゃないかと思いました。キャラクターが全員はまり役でした。
──『ナツロス』の制作はどのようにされたのでしょうか。
甲田 この映画は“浜崎監督だからできたんだろうな”と思えるほど、監督が本当に面白い方で、台本と漫画を読んで映像を観た時に“なんでもありだな”と感じたので、いただいたリファレンスの曲を聴いて意図を汲みつつ、ブラッシュアップして結構ぶっ飛ばしました(笑)。
──原作や脚本を読んで、押さえておきたいと思ったポイントはどこでしたか?
甲田 やっぱり蘭丸と李仁くんのもどかしい感じにグッときちゃって。きっと面白いだけでなく、蘭丸の複雑な心境を伝えたいストーリーなんだろうなと思ったので、その部分をうまく歌にしたいという思いがありました。
──そこで、キーワードを出していったり?
甲田 そうですね。セリフで引っかかる部分やストーリーを表しているところは全部書き出しました。タイアップの時はいつもだいたい手書きで書くんです。関係性を理解するために、相関図を自分で書いたりして。夏の雲の映像が始まりだったので、「入道雲」という言葉は絶対に入れたいなとも思いました。
──<1biteだけでOKAY>など、さりげなくバンパイア要素が入っているところもかわいかったです。
甲田 ラッパーなので、そうやって仕掛けるのは大好きです(笑)。
──銭湯で撮影された『ナツロス』のMVは、浴衣のような衣装も甲田さんらしくて素敵でした。
甲田 MVの制作が決まった時点で、自分の中で浴衣を衣装に落とし込みたいということは思っていて、その後打ち合わせをして、デザインを決めていきました。布もデザインして、オリジナルで作ってもらっているんです。私の名前の(Codaの)マークも入っています。
──そうだったんですか! それはもう一度映像をよく観てみたくなります。
甲田 めっちゃかわいいんですよ。デザインは小さい頃からファッションの仕事に就きたいと思っていたくらい好きだし、ヘアメイクなどもいつも自分で決めるので、自分のビジュアルはほぼ自分で作っています。あと今回は「棺桶に入りたい」というのもリクエストしました。
──あの、ピンクの棺桶ですね!
甲田 棺桶をリクエストしたら、MVの監督があのピンクの棺桶を持ってきてくださったんです。その瞬間、“これは良い映像になりそう”と直感しました。ポップでお祭り感を出していただき、撮影も楽しかったです。