CINEMA
真夏はエンタメな大作映画
怖い日本映画、“竜“を体感する映画 真夏にぴったりのエンタメな大作
夏の大型休暇を取る人も多い今日この頃、スクリーンには国内外の大作映画が目白押し。その中から、“怖い”映画とスケールの大きなアドベンチャーに焦点を絞って注目作をピックアップ。日本映画で肝を冷やすもよし、恐竜やドラゴンの大迫力を満喫するもよし。さあ、真夏の映画館へ。
真夏の日本映画は“怖い”に限る
菅野美穂×赤楚衛二×白石晃士監督 ある場所を巡るミステリー“場所ミス”
<このホラーがすごい!2024年版>で第1位を獲得し、発行部数 70万部を超える著者・背筋による小説『近畿地方のある場所について』を原作に、監督を『ノロイ』(2005)や『貞子vs伽椰子』(2016)を手がけた白石晃士が、脚本を白石と大石哲也が務め、原作者の背筋が脚本協力として参加して映画化。行方不明になったオカルト雑誌の編集長が進めていた特集企画を引き継いだ編集者・小沢とオカルトライターの千紘が、編集長が消息を絶つ直前まで調べていた数々の資料を紐解いていくうちに衝撃の事実を知り、怪奇現象に巻き込まれていくさまを描き出す。
調査を進めるにつれて“ある場所”へと導かれていくオカルトライター・千紘に菅野美穂、調査を進めるほどに“ある場所”の謎に魅せられていく編集者・小沢に赤楚衛二。ふたりの緩急のついた演技が観客を恐怖の世界へと誘っていく。 編集長はなぜ姿を消したのか? 編集長が残した資料は何を示しているのか? 幼女失踪、中学生の集団ヒステリー事件、ある都市伝説、心霊スポットでの動画配信騒動…。それらすべてがひとつに繋がり、謎が解き明かされた時、物語は新たな局面を迎える。その先に待ち受ける衝撃の結末とは──。
主人公のオカルトライターと編集者は、行方不明になった編集長が失踪直前まで調べていた資料を一つひとつ調べていく。その多くは映像資料で時代背景はさまざまなのだが、映像の質感、音響、ノイズ、テロップのフォントや入り方、背景の処理の仕方など、いずれも各時代をよく表していて、“本物”感がすごい。いわゆるモキュメンタリー(※フェイクドキュメンタリー)映像であり、モキュメンタリーの第一人者である白石晃士監督がその手腕をいかんなく発揮。劇映画部分とのバランスも良く、この物語を語る上で効果的だと感じられる。
そして、やはりジャパニーズ・ホラーは怖い。土着的ホラーとでも表現すると感覚的にわかってもらえるかもしれない。土地に伝わる噂や儀式と人間の情念が深く結びついてしまった時の、あの独特の恐怖。しかもその恐怖は、人間が心に闇を持つ限り広がり続けていく。世界に悪夢を見せるジャパニーズ・ホラーがまたひとつ誕生した。
『近畿地方のある場所について』
https://wwws.warnerbros.co.jp/kinkimovie/
2025年/日本/104分
監督 | 白石晃士 |
---|---|
原作 | 背筋「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA) |
出演 | 菅野美穂 赤楚衛二 ほか |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
※8月8日(金)より全国公開
©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
監督:川村元気×主演:二宮和也 【異変】探し無限ループゲーム映画化
インディゲームクリエイターのKOTAKE CREATEがたったひとりで制作し、世界で累計販売本数190万本超え、大ヒットした【異変】探し無限ループゲーム『8番出口』。これを原作に、『告白』『悪人』(いずれも2010)、『君の名は。』(2016)、『怪物』(2023)などの企画・プロデュースを務め、初監督作『百花』(2022)では第70回サン・セバスティアン国際映画祭にて最優秀監督賞を受賞した川村元気が監督と共同脚本を務めて実写映画化。第78回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ミッドナイト・スクリーニング部門」に出品して話題を呼んだほか、アジアやヨーロッパなど100以上の国と地域での上映も決定している。
主人公の男が迷い込んでしまったのは、無限にループする地下通路。【異変を見逃さないこと。異変を見つけたら、すぐに引き返すこと。異変が見つからなかったら、引き返さないこと。8番出口から外に出ること。】というご案内に従って地下通路を進むものの、次々と異変に襲われていくさまをスリリングに描いていく。主人公の男を演じるのは二宮和也。共演にドラマ『VIVANT』(2023)で強烈なインパクトを残した河内大和、小松菜奈らが揃う。
95分間の劇場サバイバル体験。さあ、主人公と一緒に絶望的にループする無限回廊へ。
本作の舞台は多くの人が日常的に利用している通路だ。よく利用する通路が永遠にループし、抜け出せないことを想像してみてほしい。怖い、怖過ぎる。
本作の恐怖は“日常と繋がっている”からこそのもののように思える。いつもの場所を歩いていたと思ったら、いつの間にかそこは異空間だった。想像できてしまうからこそ恐ろしい。映像的にはギミックが満載だが、“日常と繋がっている”という感覚はずっとそこにあり、だからこそ主人公が抱く不安やこみ上げる恐怖心が生々しく迫ってくる。
主人公がループしながら内省するさまもよくわかる。自分は何か大切なものを見落としてしまったのではないか──? 主人公が【異変】を見つけて引き返したり、【異変】に気づかずそのまま進んでいったりする様子が人生の選択のように思えてくる。これはただのゲームではなく、人生の話なのかもしれない。ギミックとヒューマニズムがバランス良く並び立つ1本だ。
『8番出口』
https://exit8-movie.toho.co.jp
2025年/日本/95分
監督 | 川村元気 |
---|---|
原作 | KOTAKE CREATE「8番出口」 |
出演 | 二宮和也 河内大和 浅沼 成 花瀬琴音 小松菜奈 ほか |
配給 | 東宝 |
※8月29日(金)より全国公開
©2025 映画「8番出口」製作委員会