CINEMASPECIAL ISSUE
トム・クルーズ主演映画『M:I8』
『ミッション:インポッシブル』第8作 シリーズで積み上げてきたものの集大成 トム・クルーズは不可能を可能にする
『ミッション:インポッシブル』が公開されたのは1996年のこと。当時トム・クルーズはすでに大スターだったが、映画で主演のみならずプロデュースも担ったのは『ミッション:インポッシブル』シリーズ第1作が初めてだった。あれから約30年。シリーズ第8作となる『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が5月17日(土)から22日(木)まで先行上映、5月23日(金)に全国公開となる。トム・クルーズは『ミッション:インポッシブル』シリーズの製作を振り返り、こう語っている。「楽な日は1日もありませんでした。でも、後悔はまったくありません」。トム・クルーズがすべてを出し尽くした集大成の1本がここに。
イーサン・ハント、最強の敵に挑む
IMFエージェントのイーサン・ハントと彼のチームが、不可能と思えるような究極のミッションに挑む姿を描く映画シリーズ第8作。過去作同様に主演とプロデュースを務めるのはトム・クルーズ。シリーズ第5作以降を手がけ、トム・クルーズとのタッグは本作で11回目となる盟友クリストファー・マッカリーが監督と共同脚本を担う。
本作の前編である第7作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』(2023)において、イーサン・ハントと彼のチームは、人類を抹殺しようと目論むAI“エンティティ”という最強の敵を目の前にしていた。橋にぶら下がった状態の電車からなんとか自分たちを救い出したイーサンとグレース(ヘイリー・アトウェル)、イーサンと長年苦楽を共にしてきたチームメンバーのルーサー(ヴィング・レイムス)とベンジー(サイモン・ペッグ)らはこれからどうなってしまうのか。第7作はそこで終わっていた。
その続きを描く本作。イーサンと彼のチームは、AI“エンティティ”の代行者であり、イーサンとの間に因縁があるガブリエル(イーサイ・モラレス)に追い込まれながらも、かつてガブリエルのもとで働いたパリス(ポム・クレメンティエフ)を仲間に引き入れ、A I“エンティティ”を打ち負かす唯一の武器を手に入れようとする。ただ、ひとつ大きな問題があった。その武器は黒海の底、氷の下に沈むロシアの潜水艦セヴァストポルの中にあるというのだ。果たして、イーサン・ハントと彼のチームに待ち受ける運命とは──。
トム・クルーズは限界を超え続ける
『ミッション:インポッシブル』シリーズの歴史は、常に自分の限界を超えようとしてきたトム・クルーズの挑戦の歴史とも言える。CGに頼らず自ら演じることを信条とするトム・クルーズは本作でもその姿勢を貫き、不可能と思えるような、これまで誰も観たことのないようなアクションを次々と披露している。第7作では“断崖絶壁からバイクに乗ったままダイブ”や走る列車上でのバトルなどで観客の度肝を抜いたが、第8作でもまたすごいものを見せてくれる。とりわけ注目したいのは、海中と空中のアクションシーンだ。例えば、イーサンが氷の下に沈んだ潜水艦にひとり潜入するシーン。高過ぎる水圧、低過ぎる水温と戦うのはもちろん、予想外の“不安定な立地”もイーサンにとっては脅威に。大げさではなく、数秒に一度、命が危険にさらされるような状況をイーサンがどう切り抜けるのか。手に汗握り、固唾をのんで見守ることになるはずだ。
空中アクションシーンは『ミッション:インポッシブル』シリーズと『トップガン マーヴェリック』(2022)の融合とでも言うべき、とんでもないものに仕上がっている。飛行中の飛行機からまた別の飛行中の飛行機へと移動し、翼の上を歩くというアクションを、やはりトム・クルーズは自分で演じたという。観ているこちらも緊張のあまり肩に力が入って口は渇き、その一挙手一投足から目が離せなかった。
ここまでのアクロバットではなくても、ただひたすら全力で走るだけでもトム・クルーズは観客を魅了する。人間が、そして映画ができることはまだまだあるのだと、無限の可能性を信じ、尋常ではない努力を重ねて限界を超えようとしているのがその姿ににじんでいるから。俳優が生身で演じる迫力に勝るものはない。そう、トム・クルーズは長きにわたって伝え続けている。
大切なのはキャラクターとストーリー
トム・クルーズは44年ものキャリアを積み重ねてきた中で、映画でいちばん大切なのはキャラクターとストーリーだと学んだという。『ミッション:インポッシブル』シリーズが世界中の映画ファンに愛され続けているのも、何よりキャラクターとストーリーが魅力的だから。
トム・クルーズ演じるイーサン・ハントは常に“正しい”ことをし、“善”であり続けた。自身の正義感や善意がミッションをより困難にすることもあるが、それでもイーサンは自身の姿勢を貫いていく。現実では悪が正義を打ち負かし、善意が悪意に脅かされるようなことが頻繁に起こっているからこそ、観客はそんなイーサンに希望を抱き、心の底から応援したくなるのだろう。
『ミッション:インポッシブル』シリーズはチームワークを描いた映画でもある。イーサンは決して自身のチームのメンバーを見捨てたりしない。第8作でイーサンはチームと別行動することになるが、離れていても心はひとつ。イーサンはチームのために、チームはイーサンのために、それぞれの場所でそれぞれの能力を生かしつつ全力を尽くそうとする。いつだって自分以外の誰かのために命をかけるその姿が、観客の胸を熱くさせる。
そんな魅力的なキャラクターたちが紡いできたストーリーのすべてが第8作で繋がっていくさまを観て、深い感動を覚えた。「この映画の鍵となる言葉のひとつに、『私たちの人生は、そこまでに自分が行った選択の積み重ねだ』というものがあります」と、クリストファー・マッカリー監督は語っている。シリーズ第1作『ミッション:インポッシブル』(1996)から約30年。第8作では第1作に立ち戻り、その後に作られたシリーズすべてに触れながら圧倒的なクライマックスを描いていく。
もちろん、第8作は単体で観ても楽しめる映画ではあるけれど、過去作を知っていればその楽しさや感動は倍増するはず。イーサンのこれまでしてきたことを思い出しながら、その時々の選択が結実する瞬間をぜひスクリーンで見届けてほしい。
映画の常識を変え、不可能を可能にし続けてきた『ミッション:インポッシブル』シリーズの集大成にして最高傑作が誕生した。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
2025年/アメリカ/169分
監督 | クリストファー・マッカリー |
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出演 | トム・クルーズ ヘイリー・アトウェル ヴィング・レイムス サイモン・ペッグ イーサイ・モラレス ポム・クレメンティエフ グレッグ・ターザン・デイヴィス ほか |
配給 | 東和ピクチャーズ |
※5月17日(土)~22日(木)先行上映、5月23日(金)より全国公開
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