FLYING POSTMAN PRESS

森山直太朗が見た、素晴らしい世界

家族の再生を諦めていない自分がいた

──いろんな思いを抱えて迎えるエンドロールで流れる『新世界』が、素晴らしかったです。

森山 父が亡くなる2ヶ月くらい前、父の死が近いんだなということを悟った時に、死んだらもう会ったりしゃべったり触れたりはできなくなるんだと思ったら、無性にきゅーっと寂しくなったんですね。同時に、父の人生を顧みた時に、彼の人生は本当に幸せなものだったのかなと思って。幼少の頃に母親を亡くして、その寂しさを抱えたまま生きて、なかなか素直になれない人生を送った父だったから、彼が今見ている世界ってどんなものなんだろうって。周りの人以上に自分の死期を強く感じていたと思うし、死ぬとわかっているのはどんな境地なんだろうとか、いろんな感情になって、あの曲ができたんです。

──そうだったんですか。

森山 父のやりきれなさと父がたった今感じている幸福や感謝みたいなものを、僕が書きたいというより、父に書かされたような感覚がありました。あの曲の中で語られている主語って、120%父の目線で、僕はまったく介在していないんです。あれは、父が僕の中に入っちゃったんじゃないかなと思うくらい、体感で言うと3分、実際は5分でできた曲でした。もちろん後から手直しした部分はありますけど。

──それがこの映画のエンディングとなったと…。

森山 作ったことも忘れていたんですが、白ホリのエンドロールを観た時に、“そういえば”と思い出して曲を聴いてもらったら、監督が「これでいきたいです」と言ってくれて。『素晴らしい世界』というツアーの後に『新世界』を出すなんて、狙っているように思われるかもしれないんだけど、まったくそんなことなくて。

──映画を観終わった後の感情にぴったりと寄り添ってくれました。

森山 エンドロールなんて監督もみんなほぼ初めて作るから、最初は文字が小さ過ぎて見えないという問題が起こって(笑)。今回は再編集して少し大きくしましたけど、10月に上映した時は、誰も何も見えない、点がただ上に流れていくという状態でした。

──たしかに、さりげなかったです(笑)。長いツアーの中での気持ちの変化についても聞かせていただけますか。

森山 20周年記念のアルバム『素晴らしい世界』のアニバーサリーツアーとして回っていたんですが、単純に“今僕たちは素晴らしい世界に生きているんだよ”と伝えるようなステージではないから、“素晴らしい世界ってどこにあるんだろう”という、積み上がったものを切り崩したり破壊したりして、またそこに立ち上がるものを模索するようなことの繰り返しでした。20年分の経験とスキルと、自分なりの舞台に対する思いはちゃんと表現できているつもりだったから、感覚的には“やってるぞ”という気持ちで、ひとつのツアーが馬車みたいにある方向に向かって進んでいるワクワク感はあったんですが、進めど進めど答えがどんどん遠くなっているような気がするっていうか。

──映画の中で両国国技館のMCでもおっしゃっていましたね。

森山 そう、僕がその完成形を追い求めちゃっているから、どんどん辛くなっていくんですよね。それは、映画の中でも描かれているように、僕には小さい頃から家族の景色がなかったから、それをどこかでもがいて足掻いて、また家族3人で一緒にいたいという気持ちがあって。40歳も過ぎれば諦めるんだけど、どこかで諦めていない自分がいたんですよね。

──ご自身の心の内と真っ直ぐに向き合う直太朗さんの姿が、とても印象的でした。

森山 きっと幼少の頃に置いてきぼりになった気持ち、怖いとか寂しいとかっていう気持ちがずっと自分の中にあって、そこを最後の最後に求めて、父の死の前に家族の再会があって、両国のラストシーンがあって。まさか、最初に「100本やろう」と言った時には、その景色、そのタイミングが重なり合うなんて思ってもいなかったですから。

──想像もしなかった答えに辿り着く、クライマックスでした。

森山 だから、一応僕の名義のツアーで、僕はこの物語の登場人物としているけれども、これはそれを媒介にして、“番場監督が見た、素晴らしい世界”だと思っているんです。僕も監督の目を通して、素晴らしい世界ってこういうことだったんだって教えていただいたというか。価値観とか認識とか、自分が想像できている範囲のものなんていうのは、やはり自分を超えないものだから、その想像の範囲を超える作品を作ってくださったことに、本当に感謝しています。


森山直太朗(もりやま なおたろう)

1976年東京都生まれ、フォークシンガー。2002年10月、ミニアルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビュー。以来、独自の世界観を持つ楽曲と唯一無二の歌声が幅広い世代から支持を受けている。近年ではNHK連続テレビ小説『エール』に出演するなど俳優としても活躍している

『素晴らしい世界は何処に』

https://subarashii-sekai-movie.asmik-ace.co.jp/

2025年/日本/101分

監督 番場秀一
出演 森山直太朗
主題歌 『新世界』森山直太朗(ユニバーサル ミュージック合同会社)
配給 アスミック・エース

※3月28日(金)より【2週間限定】全国公開中

©2025 SETSUNA INTERNATIONAL

New digital single『新世界』
2800円(tax in)
※3/28先行配信

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