FLYING POSTMAN PRESS

メキシコの実話『型破りな教室』

治安最悪な街の小学校で起きた奇跡
未来を作る型破りな教育、感動の実話

 犯罪や貧困が日常と化した、アメリカとの国境近くのメキシコの街マタモロス。この地の小学校に赴任した教師が、そのユニークで型破りな授業で子どもたちに学ぶ楽しさを伝え、国内最低レベルにあった成績を国内トップクラスへ導いたという実話を映画化。メキシコ本国では300万人を動員する大ヒットとなり、アメリカでもスマッシュヒットを記録。さらに、2023年のサンダンス映画祭において映画祭観客賞(フェスティバル・フェイバリット賞)を受賞するなど高く評価された感動作が日本で公開へ。監督・脚本・製作の3役を担うのは、これが長編2本目となるクリストファー・ザラ。『コーダ あいのうた』(2021)の音楽教師役で注目を集めたエウヘニオ・デルベスが本作でも教師役を務め、熱のこもった演技を披露している。

 机も教科書も必要ない。学ぶために必要なただひとつのこと、それは自分の頭で考えること。ひとりの教師の型破りな教育は、未来を望むことさえしなかった子どもたちを根底から変えていく。学ぶ喜びを知った子どもたちの瞳が輝き出す、その様子に胸を打たれる。


point of view

 犯罪と貧困が隣り合わせの国境の街。家族を助けるために働かざるをえなかったり、負の連鎖によりギャングに入ることを既定路線にされたりと、この街の子どもたちが置かれている状況は過酷だ。また、本来、教育の場として機能しなければいけないはずの小学校にも希望は見当たらない。教育設備は万年足りることはなく、意欲のある教員もほとんどいない。つまり、日本のような安定した国に生まれ育った子どもたちに当たり前にある“学び成長する機会”を、この街に生まれ育った子どもたちが得るのは至難の業というわけだ。そんな街にやってきた破天荒な教師フアレス。子どもたちが自ら興味を持ち、自ら学びたいと思ってほしい。その一心で指導要綱無視のユニークな授業を展開するフアレスはどこか、『いまを生きる』(1989)でロビン・ウィリアムズが演じた教師を思わせる。エウヘニオ・デルベスが演じる本作の主人公の教師も、『いまを生きる』の教師に負けず劣らず情熱的。生徒役の子どもたちはほとんどが演技未経験だったそうだが、エウヘニオ・デルベスの熱意が子どもたちの中に眠っていた力を引き出したのだろう。一歩ずつ成長していく姿がしっかりと刻まれている。

 子どもたちの瞳がすべて。生まれて初めて学ぶ意欲を持ち、将来に希望を見出すことができた子どもたちのきらめく瞳が、教育の本質を伝えている。“学校もの”の新たな秀作、胸に響く1本が誕生した。


『型破りな教室』

https://katayaburiclass.com/

2023年/メキシコ/125分/PG-12

監督・脚本・製作 クリストファー・ザラ
出演 エウヘニオ・デルベス ダニエル・ハダッド ジェニファー・トレホ ほか
配給 アット エンタテインメント

※12/20(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開

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