FLYING POSTMAN PRESS

年末年始は映画で笑い納め&初め

北欧のド田舎メタルバンド、再び旅立つ

 フィンランドの片田舎に住む、フィンランドで最も無名なヘヴィメタルバンド<インペイルド・レクタム(※直訳すると直腸陥没)>。結成から12年、ライブをしたこともなければオリジナル曲を作ったこともなかった<インペイルド・レクタム>が初めてオリジナル曲を完成させ、ノルウェー最大のフェスに参加するべく人生初の大冒険へ。その珍道中を描き、日本で異例のスマッシュヒットを飾った『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』(2018)。その続編がついに公開となる。前作に引き続き、監督・脚本を務めるのはユッカ・ヴィドゥグレンとユーソ・ラーティオ。<インペイルド・レクタム>メンバーを演じるヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オヴァスカ、サムリ・ヤスキーオ、チケ・オハンウェ、劇中音楽を担当するミカ・ラマサーリも続投。さらに、スウェーデンのオカルトロックバンド<YEAR OF THE GOAT>や、日本が世界に誇る<BABY METAL>が参戦する。

 前作のラストで逮捕された<インペイルド・レクタム>は、服役中にドイツのフェスへの出演をオファーされるも辞退。だが、ギタリストの実家であるトナカイ粉砕場が経済危機により乗っ取られる寸前だと聞き、脱獄を決意。ドイツのフェスへの出演料でトナカイ粉砕場を救うべく、再びオリジナル新曲をひっさげて旅に出る。どうも『ブルース・ブラザース』(1980)のプロットを思わせるが…まあいい。負け犬として生まれ、勝つことを決意した<終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル>バンド(※前作参照)、ここに復活。果たして、旅の先で彼らを待ち受けるものとは⁉


バンド&音楽あるあるネタの波状攻撃

 結成12年ながら実はライブ童貞だったり、過激な音楽を鳴らしながらも根はピュアで真っ当だったり、スピード違反を取り締まるカメラ(オービス)を利用してアーティスト写真を撮ったり、トナカイにインスパイアされて名曲を作ったりと、“無名バンドあるある”と、思いがけない行動で笑わせてくれた前作。続編では“メジャーデビュー直前のバンドあるある”で笑わせてくれる。超大物音楽プロデューサーは絵に描いたような商業至上主義者だし、もちろんメンバーは方向性の違いで仲違いするし、ボーカルはソロとして盛り立てられる。案の定、音楽業界の荒波に揉まれる<インペイルド・レクタム>がだいぶ面白い。また、脱獄犯である彼らは人間的にまともで、彼らを追ってくる刑務官のほうが人間的にヤバイという逆転の構図も笑いの宝庫に。さらには、正統派メタラーが<BABY METAL>に魅せられる様子も描かれ、笑いながら共感してしまうこと請け合いだ。世界を虜にしたメタル・コメディ第2弾、そのキャッチコピーは<長いクソに巻かれやがれ!>。意味不明と切り捨てずに劇場へ。ケラケラ笑ってウッカリ胸アツな映画鑑賞となるはずだから。


『ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち北欧メタル危機一発!』

https://heavytrip-2.com/

2024年/フィンランド/96分

監督・脚本 ユッカ・ヴィドゥグレン ユーソ・ラーティオ
出演 ヨハンネス・ホロパイネン マックス・オヴァスカ サムリ・ヤスキーオ チケ・オハンウェ ほか
配給 SPACE SHOWER FILMS

※12月20日(金)よりシネマート新宿ほかにて全国順次公開

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