FLYING POSTMAN PRESS

【推しの子】櫻井海音の覚悟の創作

作品を観て間違っていなかったと思えた

──ドラマ、映画と合わせて撮影期間は約5カ月に及んだとか。その間、スタッフからは「役を抜かないでほしい」という要望があったそうですが。

櫻井 すごいことのように聞こえるかもしれませんが、普通にごはんも食べましたし、お酒も飲みましたよ(笑)。“四六時中アクアでいる”みたいなことではなくて、“アクアを演じる自分”をずっと頭に置いておいたというか。で、いつでもそれを引っ張り出せる状態を保っていた、という感じです。今はもうその状態はキープしていないので、今アクアを演じてほしいと言われても絶対にできないですね。ただこれはアクア役に限ったことではなくて、どの役でも同じです。

──長い間じっくりと向き合った作品が完成した今の心境は。

櫻井 僕らとしては、「【推しの子】」の実写化作品でできることはすべて出しきったと思っています。撮影期間はもちろん、準備期間も含めた数カ月間、原作の先生たちやアニメにかかわられたみなさん以外で言えば、誰よりも「【推しの子】」という漫画に真面目に向き合った人たちが作ったドラマと映画です。その点に関しては自信があります。

──楽しみと不安と、どちらが大きいですか。

櫻井 今は“早く配信されて、みなさんに観ていただきたい”という気持ちのほうが強いです。

──映画のほうはどんな作品になっているのでしょうか。

櫻井 ドラマは割とポップな部分があるというか、キャラクターの魅力が光るシーンが多かったりしますが、映画はガッツリとこの作品の根幹を描いています。物語の核心に迫っていくんです。この間、初号試写で僕たちも初めて完成した映画を観ましたが、“これまでやってきたことは間違いではなかった”と思えました。安心して、みんななんかふわふわしていました。ドラマシリーズを観た時にも“間違っていなかった”とは思えましたが、映画を観てより感慨深いものがありました。あとは、僕らが精一杯紡いだこの作品をどう世間のみなさんに観ていただけるのか。みなさんに評価していただけた時、初めて達成感を感じられるのかなと思います。