FLYING POSTMAN PRESS

【推しの子】櫻井海音の覚悟の創作

ドラマ&映画『【推しの子】』主演
櫻井海音がアクア役に没頭した日々

 自分の推しアイドルであるアイの子どもとして転生したアクアとルビー。やがてアイがストーカーに殺害されると、遺された子どもたちは芸能界に飲み込まれながら、アイの死の真相を追いかける。“ファンタジー+サスペンス+芸能界の光と影”で魅せる大ヒット漫画「【推しの子】」を原作とした実写作品がこの冬、誕生。11月28日(木)にドラマシリーズがPrime Videoにて世界独占配信開始、その続きとなる映画が12月20日(金)に公開。原作漫画に忠実に、しっかりと物語の結末まで描ききるという。

 そんな話題のドラマ&映画『【推しの子】』においてアクア役を担うのは櫻井海音。彼もまた原作ファンのひとりであり、だからこそプレッシャーを感じつつ、原作愛を胸にアクア役に没頭したと話す。配信&公開を控えた現在の率直な思いを尋ねた。

写真:小田原リエ スタイリング:藤井晶子 ヘアスタイリング&メイクアップ:高草木 剛(VANITÉS) 吉沢実希 取材・文:佐藤ちほ
衣装協力:ジャケット 72600円 ニットベスト 29700円(いずれもティーエイチ プロダクツ/TARO HORIUCHI Inc.  e-mail:contact@a-tconcepts.com) 



常に正解は原作にあると思っていた

──大ヒット漫画「【推しの子】」の実写化作品において、主人公のアクア役で出演オファーが届いた際はどんなことを思いましたか。

櫻井 僕はもともと原作のファンで、ずっと読んでいました。もしもこの漫画が実写になることがあれば、自分がアクアを演じたいと思っていて。そうしたら、本当にオファーをいただいた。もちろんプレッシャーも感じましたが、それ以上に高揚感がありました。自分が本当に好きだと思う作品に携わることができることがとてもうれしかったです。

──櫻井さんが思う原作漫画の魅力とは。

櫻井 第一に、すごくリアルに芸能界を描いていること。まずそこが面白いです。ドラマや映画、恋愛リアリティーショーとか、いろいろ描かれますが、そのすべてがリアルだと感じます。アイドルの現実は僕はわかりませんが、ルビー役の齊藤(なぎさ)さんはすごくリアルだと言っていて。また、ただリアルに芸能界を描くだけじゃなく、問題点もちゃんと指摘されているのがいいんです。芸能界の中にいる我々がなかなか言えないことを言ってくれているなと思います。あと、ただひとりの正義を描くのではなく、人それぞれの正義があって、それがぶつかり合うところも描かれていて、その人間ドラマも面白いなと。プラス、サスペンス要素まであるじゃないですか。本当にこれまで読んだことのないもので、原作の赤坂アカ先生、横槍メンゴ先生は天才なんだなと。つくづくそう思います。

──ご自身が演じるアクアの人物像はどう言い表しますか。

櫻井 アクアは一見クールで感情を表に出すタイプではないんです。でも、内側には熱いものがあって。母親のアイ(齋藤飛鳥)への想いと、アイを死なせた相手に対する復讐心を秘めていて、その自分の内側にあるものにずっと縛りつけられているようなところがある。人に弱みも見せず、なんでもひとりで解決しようとするところもあると思います。そのあたりをいかに自分が原作通りに表現できるのかと、常に考えていました。

──実際に演じる上では原作が寄る辺となったわけですね。

櫻井 とにかく原作でした。現場でもたびたび原作を読み返し、これから撮るシーンでアクアがどんな立ち方をしていたのか。どんな間合いで話しているのか。そのあたりを確認したり、想像したりしながら、どう自分が再現できるか模索していきました。常に正解は原作にあると思っていたんです。もちろんそれは、今回のドラマと映画の物語が原作に忠実に描かれているからこそできることで。原作を読み返せば脚本の意図もわかる。そう考えながら演じていました。

──漫画の登場人物を生身で演じるとなると、難しい表現もあったことと思います。

櫻井 確かに難しい部分もありました。原作に忠実に再現することを大事にしつつ、生身の人間がやるからには動きや台詞の言い方にリアリティも出していかないといけない。そのあたりの塩梅は常に意識していたところです。

──原作は漫画ですから音はありません。台詞の言い回しはどう考えていたのでしょう。

櫻井 アクアは淡々と、一定のトーンでしゃべるイメージがありました。ただ、そのシーンごとに声の使い分けは考えていたかもしれないです。落ちているシーンでは普段より落としてみたり、ポップなシーンではアクアらしさはキープしつつも、ちょっとだけ声のトーンを明るくしてみたり。もちろん、作品全体で観て違和感がないぐらいの使い分けですが。

──俳優になったアクアがドラマや映画に出演するという展開もあります。劇中劇ではまた別の役を背負うことになるわけで、それも難しい表現だったのでは。

櫻井 そうですね。原作を読めばアクアがどんな芝居をするかはわかるんです。ただ、それを僕が表現するにあたって、実際どんな声のトーンにしたらいいのか、どんな表情を浮かべたらいいのか。そのあたりはかなり考えました。もうひとつ、この作品の劇中劇にはそれぞれ意味合いというか、作品全体における役割があると思っていて。それぞれの劇中劇で何を表現したいのか。その点をちゃんと理解した上で演じないといけないのも難しく、だからこそ面白くもありました。