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ビートルズの目に映った世界の熱狂
ジョンの写真の前で涙。10分間佇んだ
──安田さんの中で印象的だったお写真を具体的に3点挙げていただけますか?
安田 いちばんはパリのジョン・レノンの写真ですね。少年のような笑顔で、撮っているポールを見ているんです。ジョンは後に「僕にはパートナーがふたりいた」と言っていて、それがポール・マッカートニーとオノ・ヨーコなんです。もちろん当時の奥さんであるシンシア・レノンのことも大好きだったと思うんですが、その言葉に嘘はないんだなというのが、このポールを見つめているジョンの顔を見ていたらわかる気がしました。ポールにしか見せない素のジョン・レノンが見れるような気がして、本当に泣けてきて、この写真の前で10分間立ち尽くしました。
John Lennon. Paris, January 1964 © 1964 Paul McCartney under exclusive license to MPL Archive LLP Exhibition curated by Sir Paul McCartney with Sarah Brown on behalf of MPL Communications Limited and Rosie Broadley for the National Portrait Gallery, London, and presented by Fuji TV.
──そうだったんですね。
安田 ビートルズのTシャツを着てジャージでマスクをしたおっさんが、ひたすら10分間佇んで泣いてるんですよ。通りかかった人たちはさぞ気持ち悪かったと思います(笑)。
──2枚目はいかがですか?
安田 ジョージ・ハリスンが帽子を2枚重ねしている写真はたまらないですね。「ハットをふたつ重ねたらきっと面白いよ」ということをジョージが言って、それを撮ったとコメントにありましたが、ジョージ・ハリスンなりのユーモアで、そうした提案からもメンバー同士の近しさが感じられます。あとはもう、この世にいないということが、やっぱり大きいです。マイアミでくつろぐサングラスをかけたジョージ・ハリスンの姿も見ているだけで泣けてくるというか。あの時はただのお兄ちゃんで、マイアミのプールで過ごしてたんだなと思うとじわっとくるものがあります。
──最後、3枚目はいかがですか?
安田 3枚目は、メンバーは誰も写っていないんですが、おそらくポール・マッカートニーが移動中の車の中から写したであろう、街並みにいる人たちの中の少女の写真。これは写真としてとても惹きつけられるものがありました。スカーフを巻いた無垢な少女のその瞬間の表情が閉じ込められていて、まさにタイトルどおり“Eyes of the Storm”、メンバーが見ていた風景なんだろうなと思いました。この3枚はとても印象に残っていますね。
──4人を取り巻くファンの熱狂だったり、警備する警察官、メディアのカメラマン、飛行場の整備士の笑顔など、メンバーが見ていた光景がそのまま映し出されていますよね。
安田 映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』(1964)のオープニングは、ロンドンで大勢の女性のビートルマニア(ファン)に追いかけられる4人の姿から始まるのですが、これはデフォルメではなくリアルに行われていたんだっていうのが、アメリカ上陸時の街並みとファンの熱狂の写真からわかります。本当にリアルでした。