FLYING POSTMAN PRESS

ビートルズの目に映った世界の熱狂

『ポール・マッカートニー写真展』
安田顕に聞く、未公開写真が持つ魅力

 ポール・マッカートニーが撮影した未公開プライベート写真など約250点を展示した『ポール・マッカートニー写真展 1963-64~Eyes of the Storm~』大阪展が、10月12日からグランフロント大阪 北館ナレッジキャピタルイベントラボにて開催される。

 ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4名が世界を熱狂させ社会現象となる1963年12月から、『エド・サリバン・ショー』でアメリカに凱旋した1964年2月までの約3か月間の記録。

 これらの未公開写真の魅力を本展大阪会場のサポーター、俳優・安田顕に聞いた。ビートルズファンならではの視点はもちろん、ファンならずともビートルズの曲を知っている誰もがこの貴重な機会を目撃しておきたくなる『ポール・マッカートニー写真展』の観賞ガイド!

取材・文:俵本美奈



メンバーにだけ見せる表情が魅力的

──ビートルズマニアとしても知られる安田さんですが、東京展が開催された時はすぐに観に行かれましたか?

安田 本当は初日に行きたかったのですがちょうど舞台の本番中で、舞台が終わってすぐに行きました。音楽好きな人たちが集まるよく行くバーでお会いしたお客さんが、「僕、ビートルズは詳しくないのですが、あの時代のアメリカだったりフランスだったり、ファンの空気とか日常の街並み、当時の時代が切り取られているので、ビートルズ好きじゃなくても面白い」とおっしゃっていて、そういう見方もあるんだと思って、僕も観に行きました。

──実際にご覧になっていかがでしたか?

安田 先ほどのお客さんから聞いた視点もなるほどなと思いましたし、やっぱりポール・マッカートニーが写すビートルズのメンバーの姿ですから、気を許しているんですよね。すごく素の表情が見られるし、リバプールから出てきてロンドン、イギリス国内で人気者になり、ヒット曲を出してNo.1を取って、アメリカ進出を果たし社会現象になるという過程の3ヶ月が見られます。この現象って、例えばBTSが世界のアイドルへと大きく成長していく過程とも同じような気がして。今アイドルを追いかけている方々にとっても、親近感のある写真展の仕組みになっているんじゃないかなと思います。

──確かにそれは感じました。

安田 同じように音楽を志す人たちであれば、雲の上の存在のような歴史上の人物であるビートルズも、この時代を自分たちと同じように生身で生きていたんだなと感じられるんじゃないかなと思うんです。4人を身近に感じて、自分も音楽活動で同じような可能性があるかもしれないと思わせてくれる写真展でもある気がします。

──メンバーの笑顔が本当に無邪気ですもんね。

安田 マイアミのプールの写真なんて本当にね。ジョン・レノンがプールではしゃぐ姿を初めて見れたような気がするし。髪の毛がペタッとなったジョンが江頭2:50さんみたいなポーズを取っていて、本当にただの若い兄ちゃんが初めてアメリカに行ってマイアミのプールではしゃいでいるように見えて、素敵でしたね。

──ビートルズ旋風が巻き起こって、もっとプレッシャーを感じている時期なのかなと思っていたから余計に驚きました。

安田 もちろんプレッシャーはあったと思うんです。でも上っていく自分たちをどこか他人事のように感じていたような気もするというか。ビートルズってなぜ永遠かと言うと、7年半しか続かなかったところだと思うんです。再結成もしなかったからこそ、永遠に輝き続ける。解散する時の自分たちのことも、一緒に天下を取りにいって上り詰めていく自分たちのことも知っているポール・マッカートニーが今80代を迎えて、60年前の初めてアメリカに行った時の写真を見つけた時に、思い出すのは楽しい思い出しかなかったんじゃないかなと思うんです。ジョン・レノンが亡くなって44年、ジョージ・ハリスンが亡くなって24年経っていて、もうふたりは歳を取らない。自分は年老いながらも音楽を続けていて、ファンに対して音楽をすることを生きがいとしている。そんな彼が、自分の写真に写っているジョン・レノンを見て、“確かにあの時一緒に生きてたんだ”と思ったんだとしたら、もう泣けてきてしょうがないんですよね。それを、今の80代のポールの声で解説するって、本当にすごいことです。

──本当にそうですね。伝説だけど、まだ生きている歴史というか。安田さんも音声ガイドを聴きながら回りましたか?

安田 回りました。ぜひおすすめしたいんですけど、忙しい!(笑) 解説を聴きながらスマホのアプリで日本語訳を読んで、“あ、ここにも載ってんじゃん”って展示の壁の訳を読んで、撮影は自由だっていうから写真も撮らなきゃいけない! 二重三重で忙しい! で、思ったのが、まず写真展に行く時間を作ることが大事。そして、そこで打ち解けた表情のメンバーだったり、ビートルズと共にビートルズを作り上げた人たちの写真を見て、この時代に彼らは本当に生きていたんだということに想像を巡らせる。それで十分だなと思いました。