FLYING POSTMAN PRESS

伊藤万理華と中川大志の挑戦的創作

創作以前と創作以後も大切にしたい

──FLYING POSTMAN PRESSのコンセプトは<GOOD CULTURE, GOOD LIFE>です。カルチャー作品に影響を受けたことはありますか。

伊藤 パッと思い浮かんだ映画が『エターナル・サンシャイン』(2004)です。初めて観たのは2016年頃だったと思います。ストーリーもいいのですが、映像表現がとにかく面白くて。登場人物の髪の色の変化で時系列がわかるようになっていたり、登場人物の感情を画で表現したり。例えば、登場人物が寂しい時には室内にいながら雨が降ってくるとか。

中川 夢の中にいるみたいな。

伊藤 そう、夢の中にいるみたいな。常識を覆すような映像表現で、最初に観た時、衝撃を受けて。“映画って自由でいいんだな。表現は無限にあるんだな”と観て思えたんです。今もこの映画の映像表現は私の中では理想のひとつです。

中川 僕は映画好きの親の影響をかなり受けていて。名作と呼ばれるような映画は子どもの頃、ひと通り見せてもらっていました。同級生がマンガやアニメを観て盛り上がっている中、僕は『グレムリン』(1984)とか、『グーニーズ』(1985)とか、昔の洋画の名作に夢中になっていて。DVDには特典映像がついていることもあるじゃないですか。僕は映画のメイキングを観るのもすごく好きだったんです。小さい頃から自然と“この映画はどうやって撮ったんだろう?”と、制作の裏側にも興味がありました。当時から俳優業に興味があったわけではないのですが、あのメイキングを観ていた時間ごと、今に繋がっているような気がします。今でも制作の裏側を見るのは好きです。映像作品でも舞台の現場でも仕込みを見ているのが好きで、技術部のスタッフさんたちからいろいろと話を聞くのが楽しいです。

──映画やドラマ、舞台を世に送り出す側にいる今は、日々どんなことを大切に創作していますか。

伊藤 日常の中で“あ、これいい”って思う瞬間があるんです。何かをすごくきれいだと感じたり、面白いと思ったりする瞬間が。何かがのどに詰まっているような感じで言葉にはならないのですが、すごく胸がときめいている。最近も、友だち何人かと一緒に私の部屋で過ごしているうち、そんな瞬間が訪れました。ふと“あ、これいい”ってみんなで共有する瞬間があり、それをきっかけにして誰かが絵を描いてみたりと、創作が始まっていったんです。そんな瞬間をこれからも大切にしていきたいです。日常の中にあるときめきが創作意欲に繋がると思っています。

中川 僕は小さい頃から人を驚かせるのが好きでした。“ここはお客さんをどう驚かせよう”とか、そういうことを常に考えているような気がします。それが僕のモチベーションになっていたりするので、これからも観てくださる方の存在を大切にしながら仕事をしていきたいです。


伊藤万理華(いとう まりか)

1996年生まれ、大阪府出身。近年の主な出演作に映画『サマーフィルムにのって』(2020)、『もっと超越した所へ。』(2022)、『まなみ100%』(2023)、ドラマ『パーセント』(2024)、舞台『宝飾時計』(2023)など。11月に映画『オアシス』、2025年1月に『港に灯がともる』が公開される

中川大志(なかがわ たいし)

1998年生まれ、東京都出身。近年の主な出演作に映画『スクロール』(2023)、『碁盤斬り』『夏目アラタの結婚』(いずれも2024)、ドラマ『Eye Love You』『95』『滅相も無い』(いずれも2024)、舞台 地球ゴージャス『儚き光のラプソディ』(2024)などがある

『チャチャ』

https://notheroinemovies.com/chacha/

2024年/日本/108分

監督・脚本 酒井麻衣
出演 伊藤万理華 / 中川大志 ほか
配給 メ〜テレ カルチュア・パブリッシャーズ

※10月11日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開

©2024「チャチャ」製作委員会