FLYING POSTMAN PRESS

この夏観たいアクション+αな映画

怒りと痛みを抱えた<モンキーマン>

 俳優のデヴ・パテルが8年の構想期間を経て監督、共同脚本、主演を務めて作り上げ、第31回サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞を受賞。プロデュースを担うのは、『ジョン・ウィック』シリーズ(2014~)を手がける製作陣と、『ゲット・アウト』(2017)などを手がけるジョーダン・ピール。もともと配信作品として製作が進められていたが、作品を観たジョーダン・ピールが「劇場で観てもらうべき作品だ」と、自身の制作会社で買い取ることに。そうまでして劇場公開にこだわったアクション・エンタテインメントが、ついに日本の劇場で公開される。

 舞台は架空のインドの都市。幼い頃に故郷の村を焼かれ、孤児となったキッドはやがて、猿のマスクを被って<モンキーマン>と名乗り、闇のファイトクラブの殴られ屋に。そんなある日、キッドは偶然にも自分からすべてを奪った者のアジトに潜入する方法を見つける。長年押し殺してきた怒りをついに爆発させた彼は、復讐の化身<モンキーマン>となって壮絶な戦いに身を投じていく。

 闇ファイトにおけるワイルドな殴り合い、トゥクトゥクを使ったスピード感溢れるカーチェイス、ナイトクラブを舞台にした『ジョン・ウィック』シリーズ並みのノンストップバトルなど、デヴ・パテルがしっかりと体を作り上げて披露するアクションはどれも見もの。その異常なほどのテンションとむせ返るほど濃密なアクションを、劇場で体感してほしい。


アクション+復讐劇

 デヴ・パテルは本作においてブルース・リーの映画や香港アクション映画、韓国発の復讐劇へ敬意を払いつつ、ハリウッドのスケールをプラス。結果、ハイブリッドな進化を遂げたアクション・エンタテインメントに仕上がっている。とりわけ大きい+αは、復讐劇であるという点だ。

 デヴ・パテルはヒンドゥー教の神ハヌマーンの伝説にインスピレーションを得て、傷ついた青年が復讐の天使となって、腐敗した指導者たちに立ち向かう物語を考えついたという。とは言え、本作は完全無欠の神の復讐劇などではない。社会的弱者の立場にある青年が、怒りと同じぐらいの痛みをその身に抱え、何度失敗しても、踏みにじられても立ち上がり、やがては神に代わって復讐を果たす、そんな物語だ。

 復讐劇として説得力があるからこそ、圧倒されるだけではなく、主人公に大いに共感しながら映画を楽しめるはず。感情をあらわにしながら戦う主人公に胸を熱くするひとときを。


『モンキーマン』

https://monkeyman.jp

2024年/アメリカ・カナダ・シンガポール・インド/121分/R15+

監督・脚本・主演 デヴ・パテル
出演 シャールト・コプリー ピトバッシュ ヴィピン・シャルマ ほか
配給 パルコ ユニバーサル映画

※8月23日(金)より全国公開

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