12/8公開!『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』原作者・汐見夏衛を迎えてのトークイベントを開催

12/8(金)公開の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。公開に先立つ12/1、椙山女学園大学にて試写会前にスペシャルトークイベントが開催された。愛知県在住で元高校教師の原作者・汐見夏衛、西麻美プロデューサー、椙山女学園大学・高橋麻織准教授の3名が登壇。高橋が、汐見、西の両名に原作、そして映画についての話を聞く形でトークが進められた。

高橋 一足先に本編を拝見させていただきましたが、主演のおふたりの瑞々しい演技と、メインビジュアルともなっている百合の花の映像がとても美しく、印象的でした。まずは、汐見先生に原作小説執筆のきっかけをお聞きできればと思います。

汐見 私は以前、高校の国語教師をしていました。夏になると戦時中のお話を教材として扱うことが多かったのですが、その中で、今の若い世代の方々にとっては、戦争はひいおじいちゃん・ひいおばあちゃんの時代の話、遠い時代の話になっているなと感じることが多くて。自分は祖父母が戦争を経験していて、小さな頃から戦争に行った話や、生活に苦労した話を聞いていたので、「おじいちゃん、おばあちゃんはこんな生活をしていたんだなぁ」と、戦争を身近に感じていたのですが、若い子たちにとっては“教科書の中の話”になって、こうして徐々に忘れられていってしまうのかなと。でも、この歴史をやっぱり忘れてはいけない、何かできないかと考えました。授業で戦争の体験談などを扱っても、怖くて目を背けたくなるという子がいて、その気持ちもわからないでもない、じゃあ小説という形でフィクションにすれば、今の若い子にとっても読みやすく、心に入っていきやすいんじゃないかなと。ちょうど趣味として小説を書いていたこともあり、戦争の時代をテーマにした小説を書いてみようと思ったことがきっかけです。

原作者・汐見夏衛

高橋 西プロデューサーも、映画化するに至ったきっかけをお聞きかせいただけますか。

西 先生のお話に通じるところがあるのですが、私は生まれが長崎で夏休みになると、1ヶ月ほど祖父母の家に帰っていたんですね。その時に『硫黄島からの手紙』などの映画を観ていて、祖父母は戦争に行っていてもおかしくない年齢だったので、戦時中の話を聞いたんです。そうしたら祖父は体が細くて戦争には行けなかったことを話してくれて。それに負い目を感じていたのか、祖父は戦争映画をよく観ていて、私も一緒に観ていました。そうした経緯があり、この仕事に就いた時に、いつか自分が思う戦争映画を作りたいと思っていました。私は『男たちの大和/YAMATO』のような戦争映画も好きなのですが、自分が作るとなった時にどうなんだろうと。そう思っていた中、3年半前に先生の小説と出会いました。後書きなども拝読して本当にやる気にさせていただき、「この作品ならもしかしたらできるかもしれない」と思い、今に至ったという感じです。

高橋 西さんのお話をお聞きして改めて思ったのですが、戦争のみを題材とした作品もある中で、現代の女子高校生が戦時中の日本へ迷い込んでしまうという設定が面白いですよね。この設定の意図をお聞かせください。

汐見 私の中で若い子たちに知ってほしいという思いがあったのですが、戦時中の10代の女の子を主人公にした話なら読んでくれるかと言ったら、多分そうではないと思うんですね。じゃあ、現代の少女が過去を知るという形であれば、ちょっと読んでみようかなと思ってもらえるんじゃないかと。また、この作品はもともと小中学生が主なユーザーの小説サイトで書いていたもので、そこでは少女漫画的な世界観の作品を多く扱っていて「恋愛ものを読みたい」と思って来てくれている方が多かったんです。それなら、現代の女の子が戦時中という時代・場所で恋愛をするという形なら、興味を持っていただけるのではないかと考え、こうした設定にしました。

西麻美プロデューサー

高橋 それはすごく感じましたし、この作品の良いところだなと思います。今、主人公の設定というお話がありましたが、原作では、女子中学生が主人公で、映画では女子高校生になっています。色々と設定が変わっていますが、その点についてはどのような意図があったのでしょうか。

西 14歳の女の子と20歳の男の人との恋愛って、活字や漫画だとあまり違和感を感じないかもしれませんが、生身の人が演じるとなった時に、少し違和感を感じるのではないかなと。また、福原さんにぜひ演じていただきたいという前提もあり、先生にご相談の上、高校生にさせていただきました。その他の大きな変更としては、百合の生い立ちの部分があります。原作では、百合はお父さんのことを初めから知らず、お母さんが水商売をやっていて、それが反抗の理由・きっかけとなっていますが、映画では高校生という設定にしたことに付随して、もう少し大人な理由にした方が良いのかなと。そこから、映画の中では、実はお父さんは他人の子どもを助けて死んでしまった、お母さんは苦労しながらもきちんとお昼のお仕事している、だからこそ腹が立つというか、そうした設定に変えています。また、お父さんの姿は、人のために死んでいく特攻隊と少し重なり、百合の「(人を助けても)自分が死んだら意味がない」という怒りに繋がっていくような設定にしました。

高橋 なるほど、お話を聞いて納得しました。また、映画の中では、史実がわかっている現代の視点で百合が発言してしまい、警官に問いただされるシーンが心に残りました。この場面への思い入れなどはありますか。

西 ここは絶対に入れたいと思っていた場面です。この話を描く上で一番のポイントとなっていたのは、「現代の常識と、当時の常識がどれほど違うか」ということでした。時代と場所が変わるだけで、まったく変わってしまう常識の脆さというか、どちらが間違っているといったことではなく、時代と場所によって育まれてきた常識というのがあって、それが影響しているということを描きたかった。当時の軍国教育で育まれた考え方も、その時代では仕方のないもので、本当に国のためを思う気持ちが強い警官と、一方で、現代の価値観で、命がかかっている戦争を見て正しいとは考えられない百合が衝突する場面は、その象徴として入れたかったんです。

高橋 現代でも別の国に行くなどして文化の違いなどを経験することはありますが、時代と場所が変わるとこんなにも常識が変わるのかということは、普段感じられないことですよね。ぜひ、若い皆さんに学んでいっていただきたいなと思います。

西 そうですね、映画をご覧になった方が、そうしたことを感じて、色々と考えるきっかけにしていただけたらと思います。

高橋麻織准教授

高橋 本作では多くの人物が登場しますが、それぞれキャラクターが立っているなと感じました。私は特に、石丸役の伊藤健太郎さんの演技が素晴らしいと感じたのですが、キャストの皆さんはどのように役作りをされていたのでしょうか。

西 役作りということもあるのですが、まず脚本制作にあたっては、役に合った方をキャスティングさせていただいて、役者さんが決まり、そこで当て書きしたものをリライトしています。わかりやすい例で言うと、嶋﨑さんが演じた板倉は、大阪出身の嶋﨑さんに合わせて関西弁に直させていただいています。そうやって当て書きをした上で、その中で、皆さん役を捉えて、役作りしてくださっているかと思います。伊藤さんはご本人が持っていらっしゃる根明な部分がよく出ていると思います。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、石丸と千代とのシーンは本当に素晴らしくて、現場スタッフが泣いてしまうくらい良いシーンなので、ぜひ楽しみにしていてください。

汐見 私は、福原さんとは、彼女からお話したいと言っていただいたこともあり、撮影現場で長い間お話をしました。特に、原作と設定変更されている部分で思い悩んでくださって、様々聞いてくださいました。お話する前に演じていらっしゃるところを拝見したのですが、立っているだけで百合に見えて。一番大事なのは、戦争時代に行く前と後で、どれくらい成長して変化しているのかという部分なので、そこさえ表現できていれば全く問題ないですし、福原さんの先ほどの演技に何よりも説得力があると思いましたので、思うように演じてくださって大丈夫ですとお伝えしました。原作も現場に持ち込んで何度も読み返してくださっていて、そこまで大事にしていただけるだけで、原作者としては幸せだなと。そんな風に役作りを考えてくださっていることに感激しました。

最後は、西、汐見からの会場に集まった参加者へのメッセージで、トークショーが締め括られた。

西 こういった場に立つと、思いが迸って戦争がどうのとか言ってしまうのですが、今日ご覧いただいて、少しでも面白いと思っていただいたら、周りのお友達やご家族にすすめていただければと思います。

汐見 まとまりのない話になってしまったのですが、こんなにもたくさんの方が来てくださり、しっかりと話を聞いてくださったことに感激しました。映画はもちろん原作とは異なる形の作品なので、「こういう意図で、きっとこうしたんじゃないか」と考えるのも楽しいと思いますし、原作を知ってくださっている方も楽しんでいただける、学びの機会にしていただけるのではないかと思います。今夜は本当にありがとうございました。

【STORY】

親や学校、すべてにイライラして不満ばかりの高校生の百合(福原遥)。
ある日、進路をめぐって母親の幸恵(中嶋朋子)とぶつかり家出をし、近所の防空壕跡に逃げ込むが、朝目が覚めるとそこは1945年の6月…戦時中の日本だった。
偶然通りかかった彰(水上恒司)に助けられ、軍の指定食堂に連れていかれる百合。
そこで女将のツル(松坂慶子)や勤労学生の千代(出口夏希)、石丸(伊藤健太郎)、板倉(嶋﨑斗亜)、寺岡(上川周作)、加藤(小野塚勇人)たちと出会い、日々を過ごす中で、彰に何度も助けられ、その誠実さや優しさにどんどん惹かれていく百合。
だが彰は特攻隊員で、程なく命がけで戦地に飛ぶ運命だった−−− 。

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
原作汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(スターツ出版文庫)
出演福原遥、水上恒司
伊藤健太郎、嶋﨑斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、中嶋朋子、坪倉由幸/松坂慶子
監督成田洋一
脚本山浦雅大 成田洋一
製作映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』製作委員会
配給松竹
©2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

12月8日(金)全国公開