「本当に吉永さんから生まれてきたとしか思えない」│映画『こんにちは、母さん』吉永小百合&大泉洋合同記者会見

  • 関西

時代とともに家族の姿を描き続けてきた山田洋二監督の91歳にして90本目の監督作となる映画『こんにちは、母さん』 が9月1日(金)より公開される。山田洋二監督、吉永小百合主演で母の愛を描いてきた『母べえ』('08)、『母と暮らせば』('15)に続く「母」3部作にして集大成ともいえる本作。
7月10日(月)に大阪で行われた『こんにちは、母さん』合同記者会見に主演の吉永小百合と大泉洋が登壇。和やかな記者会見の模様をお届けします!

山田監督のアイデアは
センスに溢れていて全部面白い(大泉)


——ようこそ大阪へお越しいただきました。それでは、一言ずつご挨拶をお願いいたします。

吉永 吉永です。『こんにちは、母さん』という作品の舞台は、大阪ではなく東京の下町の話ですけれども、大泉さんとご一緒に心を込めて出演いたしました。今日は皆さまの前でいろいろ喋りたいこともありますし、聞いていただきたいという思いもございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。



大泉 今日はどうぞよろしくお願いいたします。大阪には映画のキャンペーンで来させていただくこともありますが、どうしてもトークが下品になったり、ぼやいてしまったり、時には失礼なことを言うこともあります。でも、今日は、私の母親役の吉永小百合さんとともに会見を行うということですので、大泉史上、上品なご挨拶にしたいと心から思っております。どうぞ皆さま、私を挑発することのないようにしていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

——ありがとうございます。吉永さん、山田洋二監督とは8年ぶりにご一緒されたと伺っております。

吉永 8年になるんですね。(前回ご一緒したのは)2015年でしたね。ちょうど戦後70年という時に、『母と暮らせば』(山田洋二監督が作家・井上ひさしさんに捧げて長崎を舞台に描いた作品)に出演させていただきました。

——久しぶりの山田組はいかがでしたか?

吉永 前回よりも、もっともっと突き詰めて、監督はいろんなことを新しくやってみようというお考えで、撮り方も全く違いましたし驚きました。

——大泉さんは、山田監督映画へのご出演、そして吉永さんとの共演ともに初めてでしたが、今回はどのようなお気持ちで撮影に臨まれましたか?

大泉 私の世代ですと山田洋次監督は巨匠で、これまでにさまざまな作品を拝見していましたので、オファーをいただいた時にはちょっと信じられなかったです。その山田監督の映画に出られるということ、そして、あの吉永小百合さんの息子役を演じるということも光栄でございました。当初“吉永小百合さんから大泉洋は生まれない” とコメントを出させていただきましたが、撮影が始まると、本当に吉永さんから生まれてきたとしか思えないです。今やもう、札幌に帰って自分の母を見ると、“なんでこの人がいるんだろう?” “吉永さんじゃないのか” と若干違和感があるぐらいです(笑)


——山田組の雰囲気はいかがでしたか?

大泉 山田監督は、常に真剣で厳しく演出が入る時もあり、緊張感があるのですが、山田監督が大真面目に言う、台本にないアイデアが全部面白いんです。セリフを変えられたこともあったのですが、センスに溢れていて。山田監督の映画が面白いのは、山田監督のアイデアで面白くなっていくんだなと改めて実感いたしました。

——今回、吉永さんは下町で生きていく(大泉洋さん演じる神崎昭夫の)お母ちゃん、あるいは(永野芽郁さん演じる神崎舞の)おばあちゃん役という、これまでとはイメージが少し違うような新鮮な印象を持ちました。その中で、役作りなどにおいて気をつけられたことや意識されたことはありますか?

吉永 原作は母と息子ですが、監督から「孫のいる役はどうですか?」と聞かれて、「大丈夫です!」とお答えしたのですが、どうも最初はそういう風になりきれなくて。動作もパッパッと歩いてしまって、「ダメですよ、小百合さん。もうちょっとゆっくり歩いてください」と注意されたりもしました。大きな孫と友だちになれるような感じのおばあさんであり、息子が悩んでいるのをとても心配して、なんとか元気にしようとしているような優しさもある肝っ玉母さんでもあり、今までの山田組の母さんとは違う新しさみたいなものは出したいと思って演じました。

——お二人がもし本当の親子だったら、お互いの魅力的なところと苦労しそうなところを教えていただけますか?

吉永 いつも何かに興味を持って、楽しそうにしていらっしゃるところが魅力的ですね。困るところは、プライベートではとっても高級なお酒しか召し上がらないとちょっと伺いましたので…(一同笑)

大泉 何をそんな、一体どこからそのような危険な情報が!

吉永 シャンパンがお好きだとちらっと伺いましたので。

大泉 シャンパンも飲みますけども、そんな高級なものなんてことはございません。

吉永 失礼しました。


大泉 ご心配なく(笑)。吉永さんの魅力的なところは、なんともいえずチャーミングなところですかね。今回の映画では、吉永さんは好きな人にフラれてしまうのですが、一升瓶でお酒を飲んで酔っぱらっている姿が可哀そうなんだけども可愛らしいですし、恋をして、美しい青い着物を着てデートに出かけていく姿はやっぱり美しい。可愛らしくて美しいところが魅力かなと思います。困るところなんて本当にないですけど、そうですね…元気すぎるところでしょうかね。動きが早いんですよ。私は割とダラダラとしている方なので、もし実の息子でしたら、「テキパキ動きなさい!」と怒られそうな気がします。


人間の心の温かさや
ぬくもりを感じてもらいたい(吉永)


——お二人が考える、今回の作品の魅力を具体的に教えてください。

大泉 この映画は、ある種普遍的な家族の物語ではありますが、映画を観終わった時に、じっとしてはいられないような、すぐに行動を起こしたくなるような気持ちになりました。私のようなまだまだ現役で働いている男性からすると、会社で働いている男のつらさだったり、大きな決断をする時の潔さだったり、昭夫の今後を応援したくなるような映画でもあります。もうひとつは、自分にとっては常に母親であった人が、ひとりの女性として好きな人ができて、ふたりの恋がどうなっていくんだろうという、どこかハラハラした気持ちにもなります。そして、最後は、“また頑張っていこう!”と親子が前に進んでいこうという姿に、勇気づけられるような気持ちになりました。家族の物語ではありますが、自分を鼓舞されてるような気がする不思議な映画です。山田洋二監督という人は、山田監督から観ると僕たちのような若い世代をこんなにもハラハラさせる新しい映画を作れるんだなというのに驚きました。

吉永 今、AIがどんどん私たちの生活の中に入っていて、語り合ったり手を取り合ったりることが少なくなってきてしまっているのではないかととても危惧しています。この映画では、人間の心の温かさやぬくもりを感じていただけたらとても嬉しいです。今、日本も世界的にも大変な時代になっていますけれど、 話し合うことでいろいろ解決して、手を取り合って生きていけたらいいなと、この映画を通してお客様に感じていただけたらとても嬉しいです。

——親子3世代の物語で、さまざまな世代の方が観に来られることと思います。そんな方々に、この映画を通じてどのようなメッセージをお伝えしたいですか?

吉永 私たち世代の方には、いくつになっても前を向いて自分のできることをやっていくっていう大切さをお伝えしたいです。(福江は)ボランティアでホームレスの炊き出しをやっていますが、いろいろな意味で自分のできることをやって「元気でいきましょう」「年を重ねましょう」ということを言いたいです。大泉さんぐらいの年齢の方は、ものすごく悩みの多い世代だと思うので、ストレスを溜めないように、しっかり運動などもして元気でいて欲しいです。 若い10代ぐらいの子たちは、ここ何年も学校はオンラインでしかできなくて、みんな閉塞感というかつらい思いをしてきたと思うんです。これから少しずつ良くなるから、友だちを作りましょうということを提唱したいと思います。

大泉 吉永さんの世代、僕の世代、そして永野芽衣ちゃんの世代と出てくるわけで、その世代ごとの悩みが見事に描かれていて、老若男女すべての方が楽しめる映画だと思います。若い方が観ると山田さんの撮る映画の新しさを感じられると思いますし、映画好きの方が観ると、いろんなことがあるシーンをこのワンカット、このアングルでずっと押していくのかと面白いでしょうし、いろんな楽しみ方がある作品だと思います。そして、僕の母の世代の方は、恋をする方が増えるんじゃないかという気がします。いくつになっても恋をしていくというのは、素晴らしいことだなと思わせていただきました。



——では、最後にお二人からご挨拶をお願いします。

大泉 どの世代の方が観ても本当に楽しめる素敵な映画です。改めて、人と話すこと、恋をすること、人生に悩んでもなんとか前に進むということが大切なのではないかと思わせてくれる映画です。たくさんの方と観て、おおいに笑って、その喜びを共有していただけると楽しい時間になるのではと思います。どうぞ劇場でご覧ください。よろしくお願いいたします。

吉永 アニメーションに比べて、実写の映画はなかなか映画館で観てくださる方が少ないので、ちょっと心配しています。この映画はご家族で観ていただいても、お友だちと観ていただいても、いろんな形でご覧いただける作品になっていると思います。 9月1日の公開です。ぜひぜひ劇場でご覧ください。




『こんにちは、母さん』
出演 吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、ほか
監督 山田洋次
原作 永井愛
配給 松竹
© 2023「こんにちは、母さん」製作委員会

9/1(金)より全国公開