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『銀河鉄道の父』の舞台挨拶(名古屋)に役所広司と成島出監督が登壇!
- 名古屋

今もなお唯一無二の詩や物語で、世界中から愛されている宮沢賢治は「ダメ息子だった!」という大胆な視点から、賢治への無償の愛を貫いた宮沢家の人々を描き、第158回直木賞を受賞した同名小説を映画化した『銀河鉄道の父』。5月5日(金・祝)の公開を前にミッドランドスクエア シネマで行われた舞台挨拶に、主演を努めた役所広司と成島出監督が登壇した。

まずは名古屋の皆様にご挨拶をお願いします。
役所 名古屋の皆さんこんにちは。今日はゆっくりこの映画を楽しんでください。
成島監督 以前役所さんとご一緒させていただいた『聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実』や『ファミリア』では名古屋で、今回はお隣の岐阜でロケをさせていただき、とても縁深い東海地方の皆様に本作を御覧いただけることを大変嬉しく思っています。
監督は以前から宮沢賢治を題材にした映画にしたかったとお聞きしました。
成島監督 はい、そうです。ただ、賢治は本当に複雑怪奇なところがある人で、なかなか一筋縄ではいきませんでした。そんな中、本屋さんでふと原作本を見つけ、読んでみたらすごく面白くて。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、政次郎はすごく厳しい人物だったと有名なのですが、全く逆の親ばかでユーモラスでチャーミング、イクメンの走りのような人物として描かれていて。これは面白い、ぜひ映画にしたいと思ったんです。
役所さんは宮沢賢治についてはどんなイメージをお持ちでしたか?
役所 お恥ずかしながら、あまり詳しくなくて、「銀河鉄道の夜」と「雨ニモマケズ」くらいしか知りませんでした。今回この映画に携わり、原作や様々な資料を読み、宮沢賢治の文学の素晴らしさがわかるようになったと感じています。
ご自身が演じられた政次郎についてはいかがですか?
役所 厳しい顔をしていますけど、隙だらけの親父です。一家の大黒柱として子どもの教育もしっかりしなければならないと眉間にシワを寄せていますが、妻や子どもたちは、そんな父を心配してくれています。
役所さんは菅田将暉さんとは初共演ですね。
役所:はい、田中泯さん以外の宮沢家のメンバーとは初共演ですね。
成島監督 原作を読んだときから、政次郎は役所さん、賢治は菅田さんに演じていただきたいと思っていました。現場で宮沢家を演じる皆さんの奏でるハーモニーが素晴らしく、本当に理想的なキャスティングができたと、監督としては幸せです。
役所 コロナ禍の撮影だったということもあり、距離を取りながらではありましたが、一緒に座っているだけで、だんだん家族になっていくことができました。
賢治の一番の理解者である妹のトシを演じられた森七菜さんとのご共演はいかがでしたか?
役所 政次郎は自分が大黒柱だと思っていますが、トシが影の大黒柱です。森七菜ちゃんは自分にその要素はないと言っていますが、やはりとてもしっかりしている方です。監督はその芯の強さを見抜いてキャスティングしたんだと思います。
観る人の立場や年代で、印象が変わる作品だと思いますが、演出にあたってキャストの皆様とはどのようにお話されていたのでしょうか?
成島監督 細かい演出はしませんでした。賢治どこに向かって良いのかわからないという叫びも、トシの健康な体で人の役に立てる人物になりたいという願いも今の若者と同じだと思います。だから明治から昭和初期を舞台にした時代劇ではありますが、時代劇だとは思わず、無理に作り込まないで演じて欲しいと話しました。
作品の中で注目して欲しいシーンはどこでしょうか?
役所 農業と執筆活動に落ち着いた賢治と政次郎が庭先でお茶を飲むシーンですね。二人にとって一番幸せな瞬間だったような気がします。宮沢家はそれぞれがそれぞれの役割を果たしていて、お互いのことを大切にしている。その愛情と絆がとても表現されているので、そこにも注目していただきたいです。

本作は岐阜県恵那市で撮影が行われました。
役所 『キツツキと雨』という映画でもお世話になりましたが、その時は森の中での撮影ばかりだったので、こんなにいい場所があったんだと驚きました。地元の婦人会の皆さんが「おかえりなさい」と書かれた垂れ幕を作ってくださったり、エキストラとして市民の皆さんにもご協力いただいたり。恵那市の皆さんにはこの映画を支えていただき、本当に感謝しています。
成島監督 岩村町は信長の叔母にあたるおつやの方が女城主だった伝統のある町でとても素敵な場所でした。今、日本の古い町並みを撮影するのは本当に大変なんです。日本映画界の宝になりますから、ぜひ保存していただきたいですね。また、病院のシーンは名古屋市の末森城跡の横にある古い建物で撮影しました。末森城の城主は信長の弟だったので、信長つながりですね。
最後に、名古屋の皆さんにメッセージをお願いします。
成島監督 本作は偉人物ではなく、今に通じる家族の物語です。同じ地平で笑って泣いていただき、賢治の作品のように本作も皆さんの心に残れば幸いです。劇場って不思議なもので、一人笑っている人がいると「笑っていいんだ」と笑いが伝播するので、ぜひくすくすと笑いながら観てください。泣けたという感想はよくいただきますが、それだけでなく笑って政次郎を応援していただけると嬉しいです。
役所 「おもろうてやがて悲しき」という王道ですがよくできたお話です。強要はしませんが、面白かったらぜひ笑ってください。そしてこの心温まる作品を広めてくださいね。
【STORY】
質屋を営む裕福な政次郎の長男に生まれた賢治は、跡取りとして大事に育てられるが、家業を「弱い者いじめ」だと断固として拒み、農業や人造宝石に夢中になって、父・政次郎と母・イチを振り回す。さらに、宗教に身を捧げると東京へ家出してしまう。そんな中、賢治の一番の理解者である妹のトシが、当時は不治の病だった結核に倒れる。賢治はトシを励ますために、一心不乱に物語を書き続け読み聞かせる。だが、願いは叶わず、みぞれの降る日にトシは旅立ってしまう。「トシがいなければ何も書けない」と慟哭する賢治に、「私が宮沢賢治の一番の読者になる!」と、再び筆を執らせたのは政次郎だった。「物語は自分の子供だ」と打ち明ける賢治に、「それなら、お父さんの孫だ。大好きで当たり前だ」と励ます政次郎。だが、ようやく道を見つけた賢治にトシと同じ運命が降りかかる──
『銀河鉄道の父』
出演 | 役所広司 菅田将暉 森七菜 豊田裕大 池谷のぶえ 水澤紳吾 増岡徹 坂井真紀 / 田中泯 |
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監督 | 成島出 |
原作 | 門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社文庫) |
主題歌 | いきものがかり「STAR」(ソニー・ミュージックレーベルズ) |
配給 | キノフィルムズ |
5月5日(金・祝)ミッドランドスクエア シネマほか全国ロードショー