映画『ロストケア』松山ケンイチ&長澤まさみ&前田監督舞台挨拶「初共演が今であることはすごく運命を感じた」

  • 関西

松山ケンイチ×長澤まさみが初共演したことでも話題の社会派エンターテインメント、映画『ロストケア』が全国公開中。
介護問題に鋭く切り込んだ葉真中顕の小説を前田哲監督が映画化し、介護士でありながら、42人を殺めた殺人犯・斯波宗典役を松山ケンイチ、その彼を裁こうとする検事・大友秀美役を長澤まさみが演じる。社会に絶望し、自らの信念に従って犯行を重ねる斯波と、法の名のもとに斯波を追い詰める大友の互いの正義をかけた緊迫のバトルが繰り広げられる本作の舞台挨拶が3月26日(日)TOHOシネマズ梅田で行われ、松山ケンイチ、長澤まさみ、前田哲監督が登壇した。

背中をさすってあげたり
押してあげたりできるような作品になった


……松山ケンイチさん、長澤まさみさん、前田哲監督、大阪にお越しくださりありがとうございます。一言ずつご挨拶をお願いします。

松山 皆さん、今日はお越しいただきどうもありがとうございます。斯波役を演じさせていただきました。短い時間ですが、よろしくお願いします。

長澤 本日はありがとうございます。 たくさんある映画の中で、この作品を選んでくださったことをとても光栄に思います。今日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします、

前田監督 大阪は生まれ育った場所なので、こうして皆さんの前で上映できて本当に嬉しいです。ありがとうございます。よろしくお願いします。

……いろんな反響があったと思いますが、皆さんのところにはどのような声が届いていますか?

松山 自分の人生についてや今の自分の身の周りの環境の中に穴があることを認識せざるを得ないというような感想がありました。すごく重い題材だと思いますが、皆さんの日々の人生の心の動きというか感情が人生を充実させていくと思いますので、そういう意味では皆さんの背中をさすってあげたりとか、押してあげたりできるような作品になったと思います。個人的には「『ロストケア』で検事の大友秀美を演じた長澤まさみという俳優が、『シン・仮面ライダー』でサソリオーグといういう怪人を演じているギャップに驚いた」という感想がすごく面白くて。その感想が一番観たくなるじゃないですか? 2本立てでセット上映とかしてもらいたいですよね(笑)



長澤 普段から自分が出演する映画を観てくれている仲間だったり、お世話になった先輩方だったりが必ずメールで感想をくださるんですけど、(『ロストケア』を観て)「いい映画を作ったね」と褒めていただくことが多かったです。実際に介護をされている方や、自分の親と向き合ってる人たちからの声はすごく自分に響くものがたくさんあって、本当にこの作品に関われて良かったです。


前田監督 僕のところには「松山ケンイチと長澤まさみがすごい芝居をしている。すごく心に響いた」という声が一番多く届きます。僕を褒めてくれる声は全然なくて(笑)


松山 いやいや。あのシーンを作ってるのは間違いなく監督ですから。

前田監督 ありがとう。地元やからフォローしてくれたんやね(笑)。でも、本当にお二人の芝居がすごいことになっているので、それを広めて欲しいのが一番です。現場で一番間近でお二人の演技を見ていて震えていました。カメラワークとかカット割りを考えて生の感じをお届けできたのかなと思います。


ケンちゃん&まーちゃん&てっちゃん
漫才トリオ誕生!?


……松山さん、長澤さん、大阪はお久し振りですか?

松山 昨年、舞台で大阪に来ました。

長澤 昨年の秋にドラマの撮影で大阪にお邪魔していました。なんならしょっちゅう大阪に来ている方だと思います。

……大阪のお客さんを前にして舞台挨拶をされて気持ちは変わりますか?

松山 上映後の舞台挨拶なので皆さんがどういう風に迎え入れくれるんだろうかなと、ものすごく緊張していました。その緊張を紛らわすために会場の裏で「まーちゃん(長澤まさみ)、衣装も含めた感じでイカ焼きです! って言ってよ」とか言って緊張を紛らわしていました。

……(長澤さんがクルりと一回転して客席に衣装を披露し、会場からは拍手が起こる)


松山 やっていただいて、ありがとうございます。

前田監督 僕はイカなんって言ってないですよ。天使ちゃん!

長澤 本当に映画の公開を誰よりも楽しみにしていたのがケンちゃん(松山ケンイチ)と監督だと思うので、(映画をご覧になったばかりの)お客さんの気持ちや余韻をすごく大切にしたいという思いから、どういう風に出て行けばいいんだろうと悩んでいました。

松山 監督が何か喋ってスベったとしても、僕が何か変なことを言ったとしても、まーちゃんが全部まとめてフォローしてくれますから。

……(笑)。すごく雰囲気のいい撮影だったのが伝わってきます。本作はご覧になられた方も立場によって受け止め方も違うと思います。お二人は容疑者と検事という対峙する役で初共演でしたが、初めての共演シーンはどのようにして臨まれましたか?

松山 (まーちゃんと)話したことがないということをきちんと演技で使いたいなと思っていました。お互いのバックグラウンドがわからない状態で本番のセリフや目線で何か生まれてくるものがあるんじゃないかと思って演じました。

……お二人は事前にお話しない状態で撮影が始まったのですね。

長澤 はい、そうでした。ケンちゃんは憧れていた先輩のひとりでもあるので、共演するのはすごく楽しみでもあり緊張する反面、そこに怖気づかずにやれることをやりたいという思いもありました。いろんな俳優さんと共演していく中でやっぱり組み合わせというのもすごく難しかったり、自分が求めていてもはまりが悪かったりとかいろいろあるのですが、そういった中でケンちゃんとの共演が今であることはすごく運命を感じました。お互いの初めての会話がこの作品のセリフであって良かったと感じていて、それが映画に焼き付いていると思います。みんなたくさんの人に観てもらいたい思いが強くて、“どうすればたくさんの人に観てもらえるか”という話をこんなにする作品はなかなかないので、私にとってはそんな時間もかけがえのないものでした。俳優の思い、作り手の思いがとても詰まった作品なので、映画館でぜひ観てもらいたいです。

……映画をご覧になった皆さんの心にはそれがすごく届いていると思います。お二人は「ケンちゃん」「まーちゃん」と呼び合っておられるのですね。

前田監督 お二人とも撮影中は距離を置いて全然喋ってないんですよ。終わってから「ケンちゃん」「まーちゃん」と呼び合って、漫才コンビみたいですね

松山 まーちゃん、ケンちゃん、てっちゃんでしょ(笑)


長澤 トリオ!

前田監督 いやいや。お二人の相性はコンビ感があってすごくいいんですよ。だから喋っていなくてもああいう芝居ができたんだと思います。でも、喋り出したら漫才コンビになる。

……映画の中で松山さんの横顔が映った時の目が優しいんですよね。あれは意識されたのですか?

松山 監督とカメラマンの板倉さんのおかげです。

前田監督 それは長澤さんさんをずっと見つめてるからなんですよ(笑)

長澤 意味が違って聞こえます。

松山 この流れが現場でもあったんですよ。僕らはめちゃくちゃ緊張感持って演技してるんですけど監督が来てこういう感じで喋って「あ、違うか」ってどっか行っちゃうパターンがよくありました。

前田監督 ものすごく緊迫したふたりのやり取りだったので、ちょっと緩めないといけないかなって。

……その辺は監督のムードメーカー的な感じで。

前田監督 演出ですね。

長澤 そうだったんですか!

……この映画を拝見した後はいろんな方とお話したくなる作品ですよね。

長澤 (松山さんに向かって)感想貯めてるもんね?

松山 もうすごい(感想を)漁ってますから。すごいストックしています。



『ロストケア』
出演松⼭ケンイチ ⻑澤まさみ
鈴⿅央⼠ 坂井真紀 ⼾⽥菜穂 峯村リエ 加藤菜津 やす(ずん) 岩⾕健司 井上 肇
綾⼾智恵 梶原 善 藤⽥⼸⼦/柄本 明
監督前⽥ 哲
脚本⿓居由佳⾥ 前⽥ 哲
原作葉真中顕「ロスト・ケア」(光⽂社⽂庫刊)
主題歌森⼭直太朗「さもありなん」 (ユニバーサル ミュージック)
配給東京テアトル ⽇活
©2023「ロストケア」製作委員会

全国公開中