「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」短編4本が3月10日(金)より名古屋にて期間限定ロードショー

  • 名古屋

日本映画の活性化を目指し、優れた若手映画作家の発掘と育成を行う「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。これまで参加者の中から続々と長編商業映画監督が誕生している。今年度は15名がワークショップに参加。そこから製作実地研修へと進み、最終課題である短編映画を完成させた4名の作家に話を聞いた。


『うつぶせのまま踊りたい』 岡本昌也監督

©2023 VIPO

【STORY】

山田芽衣子は大人になりきれない。行き場のない感情を短歌にしたためることで退屈な毎日をやり過ごしていた。ある日、山田の働く喫茶店に環七子が訪れる。山田の短歌を偶然目にした七子は山田のポエジーに共鳴し、強引に山田を喫茶店から連れ出すのだった。社会に適応しながらも自由を求める山田と、自らの過去に囚われながらも自由奔放に生きようとする七子。ここじゃないどこかを目指してもがく二人の「おとなこども」が、詩という共通言語を介して変わってゆく。

キャスト:福永朱梨、日下七海

映画に興味を持ったきっかけは?

もともと演劇に携わっていたので、映画を観るのは好きでした。映画の原体験というと「ハリーポッター」シリーズを大きな劇場で観たことでしょうか。

本作のテーマについて教えてください。

僕はまず最初に作品のタイトルから考えるタイプで、いくつかタイトルに使いたい単語をストックしています。今回はその中から『うつぶせのまま踊りたい』を採用して、その後内容を考えていきました。詩をテーマにしたのは、ロジカルではない感情を扱いたいなと思ったからです。

本作の製作を通じて、学んだことはありますか?

これまで観てきた映画が、ここまで計算して作られていたのかと感動しました。今までは自主制作だったので、編集が終わった段階で、ほぼほぼ完成という感覚だったのですが、そこから色や音の調整によって、さらに映像が良いものになっていく様は、まさに画竜点睛。仕上げの重要さを実感しました。


『ラ・マヒ』 成瀬都香監督

©2023 VIPO

【STORY】

人に嫌われることを恐れ無難に生きてきた荻野愛は、同級生の堂島月子と再会する。愛とは正反対に「自分らしい生き方」を追い求めてきた月子は、現在プロレスラーになっていた。月子の試合に衝撃を受けた愛はプロレス団体ムーンライトに入門し、プロデビューを目指す。道場の仲間に囲まれ、徐々に馴染んでいく愛。しかし月子はそんな愛に厳しい眼差しを向けていた。他人の目を気にして今ひとつ自由になりきれない愛に、月子は「私の前でそんなプロレス見せないで」と言い放つ。愛は無事にデビュー戦を飾ることができるのか?

キャスト:まりあ、夏すみれ、ライディーン鋼、夏目朱里、中野深咲

映画の道を志すようになったのはいつ頃からですか?

10年くらい前、韓国に住んでいたのですが、ちょうどポン・ジュノ監督の『母なる証明』が劇場公開されました。韓国の映画界では、社会的に難しい題材にいち早く取り組んでいた時期で、熱量の多い文化である韓国の映画作品は血が湧き上がるような作品が多く、惹きつけられるものがありました。

タイトルの『ラ・マヒ』にはどんな意味があるのでしょうか?

「ラ・マヒストラル」とうプロレスの技があり、それを略して「ラ・マヒ」と言うんです。スペイン語で“あっぱれな技”という意味の言葉で、本作の登場人物たちには、これからあっぱれな人生を送ってほしいと思い、このタイトルを付けました。

撮影中に印象に残っていることは?

予算の都合上、試合シーンでエキストラを150人雇って美術を犠牲にするか、エキストラを50人にして美術を優先するかの2択を迫られまして。迷いながらも後者を選んだのですが、スタッフさんたちのカメラワークやライティング技術のおかげで、客席は満員かのように見せることができ、プロの技を感じました。


『サボテンと海底』 藤本楓監督

©2023 VIPO

【STORY】

今年35歳を迎える俳優、柳田佳典は映画やCMの撮影前に俳優やタレントの代わりに準備作業を請け負うスタンドインの仕事を生業としている。映画に出たい気持ちを抱えつつも、なかなかチャンスに恵まれずスタンドインの仕事をこなす日々。そんな自分を必死に肯定しようとする柳田。そんなある時、CMの現場で一緒に仕事をした人気俳優の小倉涼とプライベートで飲みに行けることに…そして、とある映画のオーディションに参加することを決意する。

キャスト:宮田佳典、佐野岳、大友一生、石川浩司、ふせえり

映画製作に関わるようになったきっかけについて教えてください。

初めて映画製作に携わったのは、高校2年生のとき。シネフィルの男子と同じクラスになり、夏休みに一緒に映画を撮りました。その後、多摩美術大学の映像演劇学科に進み、大学では演劇を学び、学外の仲間とは映像製作に取り組んできました。美大生ということで美術スタッフとして参加することが多かったのですが、ずっと監督にも挑戦してみたいという思いも抱えていて。今回初めて監督として映画を撮影することができました。

実際に監督に挑戦をしてみて、いかがでしたか?

監督ってこんなにも考えなければいけないことが多いのかと驚きました。学生の撮影現場では監督の頭の中にあるものを表現したくても、技術が追いつかないことが多いのですが、プロの皆さんは私のしたいことを汲んでアイデアを出してくれるので、とても勉強になりました。

『サボテンと海底』というタイトルはどのように付けられたのでしょうか?

もともと別のタイトルを付けていたのですが、とある事情で変更せざるを得なくなってしまったんです。どうしようかと焦りながら、スタッフさんと主人公の部屋について話し合っているときに、サボテンを置くことになりました。ただの思いつきだったのですが、よく考えてみると、身を守るための分厚い皮で覆われていて、水をあげすぎてしまうと枯れてしまうサボテンが主人公に似ているなと。なのでタイトルにもサボテンという言葉を使いました。


『デブリーズ』 牧大我監督

©2023 VIPO

【STORY】

うだつの上がらないCM監督・和田と若手カメラマン・佐々木、プロデューサーの青木は、企業広告の撮影のためスクラップ工場に来ていた。和田と佐々木は、ゴミで出来た人形が地面に転がっているのを発見する。すると、突如開いたワームホールに巻き込まれ、青木を残し砂漠の異星に飛ばされてしまう。そこには、地球のゴミで作られた衣服と仮面を身に纏い、生活をする謎の民族がいた。彼らは一体何者なのだろうか?地球に帰るための二人の苦難が始まる。

キャスト:山根和馬、森優作、カトウシンスケ

映像作品の製作を始めたきっかけを教えてください。

何もかも上手くいかなくなって、現実逃避になんとなく映画を観てみたら、だんだん止まらなくなって。その時に観た作品の中に『ホドロフスキーのDUNE』がありました。アレハンドロ・ホドロフスキー監督が『DUNE』という映画を撮ろうとして失敗するまでのドキュメンタリーなのですが、『ONEPIECE』みたいにどんどん仲間を集めていく様子に憧れて。絵が描けたり、音楽が作れたりする友だちがいたので、一緒に映画を作らないかと口説き、自主映画製作を始めました。

今回SF作品に挑戦しようと思った理由は?

初めて映画を撮ったときの予算は5000円でした(笑)。その時と比べると信じられない額の予算をいただけたので、せっかくならば幼少期に観ていた『スタートレック』のような作品を撮りたいなと思いまして。“スペースデブリ(宇宙ゴミ)”が集まる星で、そのゴミを使いながら生活している民族なので『デブリーズ』。改訂をしていくうちにパラレルワールドのようになりましたが、最初は宇宙を舞台にした脚本でした。

本作の製作を通じて、学んだことはありますか?

コミュニケーションの重要さですね。特に衣装製作の際に自分の頭の中にある言葉にならないイメージをどう伝えるかが難しくて。デブリーズの文化をスタッフさんたちと話し合いながら、例えばボンドは使わないなど、衣装製作のルールを一緒に作っていきました。




完成作品は3/10(金)からミッドランドスクエア シネマにて、期間限定ロードショー。3/11(土)には監督ほかによる舞台挨拶も予定されている。

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