16年ぶりに映画となって帰ってきた『Dr.コトー診療所』。主演の吉岡秀隆、中江監督が来福!

  • 福岡

累計発行部数1200万部を超える山田貴敏を代表する漫画「Dr.コトー診療所」を元に、2003年、2004年、2006年と立て続けにテレビドラマ化し、大ヒットとなった医療ヒューマンドラマシリーズが、映画となって帰ってきた。離島に赴任してきた外科医“Dr.コトー”こと五島健助を演じる吉岡秀隆をはじめ、日本を代表する名優たちが奇跡の再集結。さらに髙橋海人、生田絵梨花の新キャストも加え、「Dr.コトー診療所」の“今”を描く。来福した主人公“Dr,コトー”役の吉岡秀隆、そしてドラマシリーズでも演出を務めた中江功監督に、16年ぶりとなる本作への思いを訊いた。


……映画化に至ったきっかけのひとつにコロナ禍があったそうですね。
中江「コロナに入った頃は(映画化のことを)考える余裕もなかったけど、身近な人が大病したり、コロナで亡くなったりした方もいていたので、皆どうしているのかなと思いました。そこでまた会いたいなという思いはきっかけになりましたね」

……この16年の間に「Dr.コトー診療所」のことを考えることはありましたか?
吉岡「監督と会うとそういう話はありましたね」
中江「まだ先生はあの島を自転車で走っているよね、みたいな話はしていました。(吉岡さんから)いつか白衣を脱ぐ時があるんじゃないかと話していたことを思い出して、白衣を脱ぐ機会を作らなきゃいけないんじゃないかと思った時期が一時期ありましたね」

……絶海の孤島にある過疎高齢化と財政難という問題。実際の医療の現場とも重なる部分もありますが、今の医療についてお話を聞く機会はありましたか?
中江「ドラマのモデルになった甑島(こしきしま)の診療所を見に行くことがあって、長く先生がいることは島民にとって良いことなんだけど、それが当たり前になるのは非常に危険なことでもあるとおっしゃっていましたね。でも昔ドラマを観て医者になりたいと思った先生が、実際に医者になって医療指導で駆けつけてくれたのは感慨深かったです」

……約3週間に渡る島ロケとうかがっていますが、苦労はありませんでしたか?
吉岡「苦労は…なかったですね(笑)。残念だったのはコロナ禍で島でのご飯を皆と一緒に行けなかったことですね。ドラマの時は、泉谷(しげる)さんが全員連れて毎日のようにご飯に行ってましたね」
中江「前の連ドラの時はその倍くらいいたので、あっという間でした」
吉岡「この映画でコトー先生も家族になっていて、島で滞在していた宿でも(小林)薫さんや朝加(真由美)さん、柴咲(コウ)さんと一緒に自然と食事をして、朝加さんが台所に立っている姿はもう家族でした(笑)。できるだけ同じ時間を共有しました」

……コロナ禍の撮影でチームワークを高めるようなエピソードはありますか?
吉岡「皆、良い人たちばっかりだったし、チームワークというよりは皆お互いを尊敬し合っていることと、それぞれ自分の役が好きなんだと思いました。例えば泉谷さんはご自身が演じられた重さんのことが好きだし、なんと言っても一番の理解者だと思うんです。そういうことが、それぞれにあると思います」

……TVドラマシリーズから映画化するにあたってこだわられた点は?
中江「映画は大きいスクリーンで観ることができるし、それに活かせる島だと思うんです。それをそのまま嘘偽りなく撮らなきゃと思いました」
吉岡「最初はドラマと映画どっちにする?みたいな話から始まりましたが、話しているうちにこれが最後だろうなという気がしたので何となく映画で、という流れになりました。せっかく映画にするんだったら、映画を観るというよりは映画館が志木那島になるというものにしたいと思いました。もっと言えば、舞台となる与那国島の美しさを知ってもらいたいし、旅行気分で来ていただいて、そこで起こるドラマの中に引き込まれてもらえたら嬉しいです」

……コトー先生の代名詞でもある自転車も電動自転車に進化していましたね。
吉岡「そうですね(笑)。自転車もオーディションしましたよ、電動自転車も色々種類があって。でもドラマの時の自転車と形は変わってないんです。あと往診カバンも今の物も試しましたが、どうもしっくりこなくて。それで当時使っていたものを持ったら、やっぱりこれだなって。でもボロボロになっていたので、持ち道具のスタッフさんが直してまた使えるようにしてくれました。こうして一つ一つの道具も、スタッフが16年の時間をとことん考えて、話し合って準備してくれました」

……今作から新たに加わった医師・織田判斗役の髙橋海人さん、島の看護師役の生田絵梨花さんとの共演はいかがでしたか?
吉岡「何の違和感もなかったです。与那国島でずいぶんリハーサルしていたし、スタッフとも和気藹々とやっているのをこっそり見ていたら、僕はいないほうがいいかなって(笑)。それでこっそり帰っていくのをスタッフに見られていたのでちょっと恥ずかしかったです。でもふたりは大丈夫だなってその時に感じましたね」
中江「島から撮影に入ったのが良かったんじゃないですか。島だと日帰りできないから泊まりで一緒にいると話す機会も増えて、その雰囲気を最初に味わえたことですぐ馴染めたのかなと。でも緊張はしていたと思いますよ」

……台風が上陸して野戦病院と化したシーンの髙橋さん、生田さんの存在感は見事でした。
中江「実はあの撮影だけで10日もやっていて。判斗先生は作品の中でうねりになっているし彼の成長も描かれています。彼の言う正論と葛藤が良いスパイスになっているし、第三者的な彼がそれを言い放つことで意味があると思います」

……ドラマシリーズで島の漁師・原剛利(時透三郎)の息子・剛洋役で出演していた富岡涼さんが本作のためだけに俳優復帰されましたが、監督自らオファーされたそうですね。
中江「キャストの皆さんも「剛洋は出るの?出るなら本人だよね」と言うんです、簡単に(笑)。それから連絡を取って会いに行って「皆さん待ってるよ、どうする?」と話したら「やってみます」と。気が変わらないうちに話をどんどん進めていきました」
吉岡「(再会して)彼が一番コトー先生のことを知ってました。涼君はこのドラマ後に俳優業を引退されていたので、そこでこの作品が瞬間冷凍されているんです。だから今回チンしたら当時の新鮮な感覚が一気に蘇ってくるような感じでした。海人君と涼君と僕の3人で何となく宿のベランダにいた時も、涼君のそんな話を横で海人君が判斗先生の顔になって聞いていたのが印象的でしたし、与那国島の満点の星空の下でそれぞれに医療に関わる役として語り合ったとても良い時間でした」

……16年ぶりに本作で改めて見つけた発見や気付きはありますか?
吉岡「継承ですね、僕は。この映画をやることによって当時小学生だった人たちがお医者さんになってくれているという話を聞くと嬉しいんです。2003年のドラマをスタートする時から監督と話したのは、医療に関わる人たちが納得してくれるドラマにならないといけないという思いがあって。医療に関係する人たちが頷いてくれた先にヒューマンドラマがあると。だから実際にお医者さんなったということは、とっても嬉しいことです。判斗先生や剛洋君に何かをバトンタッチできるというか、世代交代みたいなことがこの作品において僕の中で大きなテーマのひとつかもしれませんね」
中江「人はずっと生きてきて、これからも生きていくんで、その一部分を切り取った作品なのかなと思っています。それぞれの役にセリフがあってそれを演じているだけなのに、なぜか普通にあの島に住んでいた人たちだなとドキュメンタリーのような感覚になり、自分でも不思議な作品だと思っています。あと役者さんは今まで演じてきた役が自分の中のどこかで残っていたり、生きていたりすると思うんです。だからこのドラマで背負わせた分、どこかで区切りを付けてあげないとこれを抱えたまま色んな役をこれからもやらなきゃいけない。そのためにこの作品はやらなきゃいけないと思いましたし、やってみたら意外と僕の中でも残っていた作品だったことを改めて気付きました。やっている時は大変でしたけど寂しさもありますね。でも生きている瞬間を切り取った作品ですし、これからも彼らは生き続けると思うので、またどこかで会えるんじゃないかと期待しています」

 

Ⓒ山田貴敏 Ⓒ2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

Dr.コトー診療所

STORY
人を救って人に救われて、ずっと、ここで生きてきた。
日本の西の端にぽつんと在る美しい島・志木那島。本土からフェリーで6時間かかるこの絶海の孤島に、19年前東京からやってきた五島健助=コトー。以来、島に“たったひとりの医師”として、島民すべての命を背負ってきた。長い年月をかけ、島民はコトーに、コトーは島民に信頼をよせ、今や彼は、島にとってかけがいのない存在であり、家族となった。数年前、長年コトーを支えてきた看護師の星野彩佳と結婚し、彩佳は現在妊娠7ヶ月。もうすぐ、コトーは父親になる。
コトーは、彩佳、和田、そして新米医師の織田判斗、そして数年前から診療所に勤める島出身の看護師・西野那美と共に診療所を切り盛りしていた。しかし、2022年現在、日本の多くの地方がそうであるように、志木那島もまた過疎高齢化が進んでいる。財政難にあえぐ近隣諸島との医療統合の話が持ち上がりコトーに島を出て拠点病院で働かないかとの提案が。そうなればコトーは長年暮らした島を出て行くことになる。それが島の未来のためになると理解しながらも、コトーは返事を出来ずにいた。
そんな折、島に近づく台風。毎年多くの台風の通り道となっている志木那島だが、想像を超える被害がもたらされているという連絡が役場に入ってくる。
次々と診療所に運び込まれる急患。限られた医療体制で対応を強いられる診療所は野戦病院と化す。そして再び、コトーたちは“家族”である島民たちへの思いと人の命の尊さに向き合い葛藤することになる。
時として残酷な自然、時を経て宿った新たな命、失われゆくもの、立ちはだかる現実。
島はすべてを包み込んで、人々は、そこに生きている。

原作:山田貴敏「Dr.コトー診療所」(小学館)
監督:中江 功 脚本:吉田紀子
出演:吉岡秀隆 柴咲コウ
   時任三郎 大塚寧々 髙橋海人(King & Prince) 生田絵梨花
   蒼井 優 神木隆之介 伊藤 歩 堺 雅人
   大森南朋 朝加真由美 富岡 涼 泉谷しげる 筧 利夫 小林 薫
※12/16(金)より全国公開