「モノクロの作品だけれど、観る人の中で色づいてカラフルに見える」 映画ライターSYOさんが語る映画『カモン カモン』の魅力

  • 名古屋

クリエーターから絶大な支持を集めるマイク・ミルズ監督と『ムーンライト』『レディ・バード』『ミッドサマー』など話題作を世に送り出し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの映画会社A24がタッグを組んだ映画『カモン カモン』が4/22(金)にいよいよ公開。そこで、マイク・ミルズ監督、そしてA24の大ファンでもある映画ライターSYOさんに今作の魅力を聞いた。

まずはマイク・ミルズ監督作品との出会いを教えてください。

初めて観たのは『サムサッカー』です。自分と同じ世代が主人公の物語なので、とても共感を覚えました。マイク・ミルズ監督の見ている世界の色や感じている寂しさが僕と一緒だなと感じているので、『カモン カモン』の公開も待ちに待っていました。

そんな本作を観ての感想はいかがですか?

マイク・ミルズ監督が新作を発表するたびに思いますが、この作品に出会うために生きてきたんだなと。モノクロの作品ですが、観る人それぞれの中で色づいて非常にカラフルに見えると思います。伯父と甥が一緒に過ごすという構図を作るには、ネグレクト的な方法になってしまいがちですが、この作品には悪人は登場しません。ジェシーの父親はこころの病気を患っていて、彼を支えるために母親もジェシーを残していかなければならない。そのことに対する葛藤が描かれているところが好きだし、この優しい人達を助けたい、こんな世界っていいなと感じました。新型コロナウイルスのことなど、様々な問題やしがらみから僕たちを解き放って、様々な人の人生を肯定してくれるような作品です。

作品中に差し込まれているインタビューシーンも印象的です。

監督にインタビューをした際に、今作は彼の子供から着想を得ているので、彼のプライバシーを守るため、話を広げようとインタビュー映像を挟んだとおっしゃっていました。彼の身内に対する敬愛を感じましたし、理由があっての構造であるというのがその面白さだと思います。

SYOさんは現在映画ライターとして活動をされていますが、映画を好きになったきっかけは?

両親、特に母親が映画好きだったからです。当時住んでいた福井のミニシアターで色んな映画を観て、月に1度は家族みんなで金沢のシネモンドに足を運んでいました。「名探偵コナン」が好きで劇場版を母親と観に行ったら、『オール・アバウト・マイ・マザー』も一緒に観せられたり(笑)

映画だけでなく、アニメや漫画といった分野でも活動をされているSYOさんですが、今後のビジョンについてはどうお考えですか?

2020年に独立をしてフリーランスになったので、まずは食いっぱぐれないことが第一ですね(笑)。今の仕事は既存の作品の二次的なものが多いですが、両親がクリエーターということもあり自分のルーツはそこにあると感じているので、脚本や小説を書くなど0から作り出す仕事もしていきたいなと思います。


さらにSYOさんは伏見ミリオン座にて開催された試写会のトークショーに登壇。マイク・ミルズ監督愛に溢れたトークを繰り広げた。


海外からグッズを取り寄せるほどA24推しだというSYOさんは『カモン カモン』のTシャツに『ミッドサマー』のピンバッジという出で立ちで登場。今作の推しポイントは「他者や世界に対する眼差しのやさしさです。明日どうなるかわからないような不穏な世界で生きている僕たちに、すごく普遍的な他者を慈しむ、敬愛を持って人に接する大切さを改めて感じさせてくれました」と語った。

長年憧れてきたマイク・ミルズ監督へのオンラインインタビューを行った際は、感極まって終了後には泣いてしまったそうで、監督の印象について聞かれると、「想像以上に温和な方でした」と回答。

最後に試写会の参加者に「2回目を観るときは、ストーリーはすでにストーリーは頭に入っていると思うので、ホアキン・フェニックスの微細な表情の変化や音楽など細部を楽しんでいただきたいです」とコメントし、場を締めくくった。

【STORY】

NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが…


『カモン カモン』

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監督・脚本マイク・ミルズ
出演ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
音楽アーロン・デスナー、ブライス・デスナー(ザ・ナショナル)
配給・宣伝ハピネットファントム・スタジオ

4月22日(金)より伏見ミリオン座ほかにてロードショー