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「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2021」短編4本が3月18日(金)より名古屋にて期間限定ロードショー
- 名古屋

本プロジェクトは、日本映画の活性化を目指し、優れた若手映画作家の発掘と育成を行う「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。これまで参加者の中から続々と長編商業映画監督が誕生している。16年目を迎える今年度は15名がワークショップに参加。そこから製作実地研修へと進み、最終課題である短編映画を完成させた4名の作家に話を聞いた。
『遠くへいきたいわ』 団塚唯我監督

©2022 VIPO
【STORY】
アルバイト先へ面接にやってきた竹内(39)を見て動揺を隠せない紗良(21)。竹内の勤務初日、開店作業を終えたふたりはオープンを待つばかりのはずだったが…。互いに亡くしてしまった母/娘の面影を見出し合うふたりは、束の間の逃避行に何を求めるのか。 キャスト:野内まる 河井青葉 フジエタクマ 津田寛治 金澤卓哉
まずは本作のテーマについてお聞かせください。
女性ふたりの逃避行が撮りたいと思い、そこから自然に出てきたテーマが“家族の喪失”でした。母を亡くした娘と、娘を亡くした母。ふたりの関係性が逃避行の中でどのように変化していくかを描いた作品です。30分という短い作品ではありますが、それ以上の時間に感じてもらえるよう、音楽や、編集で時間感覚をわかりにくくしています。また、ふたりの関係性を視覚的にも感じてもらえるように、後ろ姿のシルエットを同じにするなどの演出もしています。
キャスティングはどのように行われたのでしょうか?
主演の野内まるさんはオーディションで選ばせていただきました。順撮りで撮影したので、お芝居は初めてだった野内さんがだんだん紗良になっていく様子が、登場人物の成長を描いた物語の中で、役者として成長していっているようで、印象深かったです。竹内は河井青葉さんをイメージして当て書きをしたので、そのまま河井さんに出演をお願いしました。
今後のビジョンについて教えてください。
今作では、紗良の父親の存在など、時間的な制約もあり描ききれなかった部分があるので、そこはいつか改めて作品にしたいと思っています。ndjcに参加したことで、たくさんのスタッフさんたちと出会うことができました。この出会いを大切にしつつ、自分のペースで頑張っていきたいと思います。
『なっちゃんの家族』 道本咲希監督

©2022 VIPO
【STORY】
登校中に家出を思い立つ小学生のなつみ。遠い祖母の家を訪れると突然の訪問に驚かれるが、なつみの心境を察し温かく迎え入れてくれた。なつみは両親の不仲に疲れ切っていたのだ。自然体で接してくれるおばあちゃんとの時間になつみの心はほぐれていくが、翌日両親が現れ… キャスト:上坂美来 白川和子 斉藤陽一郎 須藤理彩 山﨑光
本作では、問題を抱える家族をとてもリアルに描かれています。
子供が子供らしくいるべき時期に、周囲の環境のせいでそうあれないことは悲しいことだと思います。暴力やネグレクトなどの虐待とは違い、家庭内で会話がないことはすごく辛いけれど、なかなか外部に助けを求めることができないですよね。そんな世の中にたくさんある、中途半端な家庭を描きたかったんです。
登場人物のキャラクターはどのように作り上げられたのでしょうか?
私の実体験を元にしているので、それぞれモデルになった人がいます。ただ、そのままでは物語にならないので、登場人物がそれぞれどんな気持ちでいるのかをノートに書き出すという作業を行いました。なつみはオーディションで大人を冷静に見る目が素敵だなと思った上坂美来さんに演じていただきましたが、とてもはまり役だと思います。
今後、どのような作品を作っていきたいですか?
ちょっと笑えるけれど問題提起もできる、そして救いのある作品を作っていきたいです。今までは自分の経験を元にした作品ばかりだったので、異性や年齢が離れている人の気持ちを描くことにも挑戦してみたいですね。
『LONG-TERM COFFEE BREAK』 藤田直哉監督

©2022 VIPO
【STORY】
大企業に勤めるキャリアウーマンの優子は、ある日、直樹という男にナンパされる。職業は俳優、しかも自身の家を持たず、他の人の家を転々と居候しながら暮らしているという、これまで出逢ってこなかったユニークなタイプの男・直樹に惹かれ、優子は一年後、彼と結婚する。 キャスト:藤井美菜 佐野弘樹 福田麻由子 遊屋慎太郎 小槙まこ
男女の複雑な人間関係を描く作品を作ろうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
僕自身が30歳になり、周りの友達が結婚や出産をしたり、不倫の話を聞くようになったことです。複雑な人間関係や、それぞれの価値観を描くに当たり、30分という時間の制約の中で情報過多にならないように気をつけました。脚本を作っている段階で、どこを見せるべきなのかを熟考し、あえて簡潔に描写することで、観る人の想像力に委ねたり。でも結局情報過多になってしまい、編集で苦労しました(笑)
監督からみた、キャストの皆さんの印象はいかがですか?
藤井美菜さんは、佇まいや存在感が“デキる女”のイメージにピッタリですね。佐野弘樹さんは以前からの知り合いですが、役と同じで人の心に入り込むのが上手い人です。福田麻由子さんと遊屋慎太郎さんは顔の造形なのか、異質な存在感を感じさせる方なので、メイン2人の脇に立つキャラクターにキャスティングさせていただきました。
今後の目標を教えてください。
僕は映画制作を通して、たくさんの人たちと出会うことができました。このプロジェクトでは、自主制作よりもさらに多くの人と関わることができて、とても楽しかったです。映画の規模が大きくなればなるほど、出会いも多くなるので、とても大規模な作品を作って色んな人と出会いたいと思っています。
『少年と戦車』 竹中貞人監督

©2022 VIPO
【STORY】
窮屈な日常やイジメに悩む中学生の田崎は時々言葉を交わす少女、咲良に思いを馳せることが唯一の楽しみだった。湖に戦車が沈んでいるという情報を知った田崎は捜索へと出るが、そんな彼を待ち受けていたのは自分自身の思春期と向き合う壮大な精神の旅だった。 キャスト:鈴木福 黒崎レイナ 笠井悠聖 林裕太 松浦祐也
“中学生の少年”と“戦車”というユニークな組み合わせはどこから着想をえたのでしょうか?
観た人に自分の中学生時代を思い出してもらえる作品を作ろうと思っていたときに、「浜名湖に戦車が沈んでいる」という話を聞いたんです。撮影に使った戦車は御殿場にある車屋さんがアメリカの映画撮影用に手作りでこしらえたものをお借りしました。
各キャラクターはどのようなイメージで作られたのですか?
主人公の田崎は冴えない中学生だけれど、妄想の中で凶暴性が暴走していきます。戦車の上でキスをして面白い10代は誰かと考え、鈴木福さんに演じていただくことになりました。咲良は田崎の凶暴性の具現化ですが、中学生ならではの年上女性への憧れという意味で妖艶さも持たせています。友人の江田は物語がダークになりすぎないように、なるべくポップで可愛らしい感じに。田崎をいじめる3人は田崎との対比になるよう、学校では優等生なのに裏では答案を盗みにいかせているという二面性を描きました。
このプロジェクトに参加してみていかがでしたか?
自主制作をしているときは何でも自分でしてしまうので、どこまでが監督の仕事なのか曖昧だったのですが、ndjcに参加してそれがはっきりしたことで、改めて、映画監督という仕事に付きたいなと感じました。

完成作品は3/18(金)からミッドランドスクエア シネマにて、期間限定ロードショー。3/19(土)には監督ほかによる舞台挨拶も予定されている。
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