日本が歓喜した長野オリンピック、スキージャンプ金メダルの舞台裏を語る

  • 福岡

日本中が歓喜に沸いた1998年の長野オリンピック、スキージャンプ団体による大逆転の金メダル。その栄光を陰で支えた25人のテストジャンパーたちの知られざる感動秘話を映画化した『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』がついに6月18日に全国公開。4人の代表選手と25人のテストジャンパーたち、それを支える家族や関係者らの真実を描いた心打たれる感動のヒューマンドラマ。主演に人気・実力共に今最も旬な俳優・田中圭を迎え、注目作への出演が続く若手実力派女優の土屋太鳳、さらに山田裕貴、眞栄田郷敦、 小坂菜緒(日向坂46)、古田新太ら豪華キャスト陣が集結。東京オリンピックを目前に控え、一足先にスポーツの感動を届けてくれる。その公開を記念して田中圭が演じた主人公のモデル、西方仁也氏が福岡の電気みらいホールに登壇。本作の見どころと共にメディアでは伝えられなかった長野オリンピックの舞台裏を語ってくれた。

……今回ご自身が主人公の作品を観てどのように思われましたか?
「当時自分が思っていたことが、そのまま映像と言葉になって皆さんに伝えることができて嬉しいです。と言うのも日本のスポーツ界の選手は悔しさや悲しさ、失敗した時の無念さとか、そういう感情を表現することをタブー視する傾向があって。あらゆる場面で孤独で静かに感情をむき出しにしてはいけないみたいな美学があって。そういうこれまで心に閉まっていたものを映画を通じてお伝えできたと思います」

……田中圭さんとはどんなお話をされましたか?
「田中圭さんから「この台本にあることは本当にこんな風に考えられていたんですか?」と尋ねられて、「言葉にしようと思えば、台本にあるようなことでした」と答えると田中圭さんが「ガチですね!これで台本にある気持ちのまま素直に演技ができます」と言ってくださってお会いして良かったと思いました」

……スキージャンパーとしてのアドバイスなどはされましたか?
「スキージャンプの板ってものすごく長いんですが、それを持って歩くシーンではただ歩くのではなく、例えばモデルさんがランウェイを歩くような大胆で大きく見せる感じで、プロとしての自覚と自負を歩く時のオーラで表現すると良いですよというお話はさせていただきました。スキー用のブーツって実は歩きにくいんですが、皆さんが意識していただいたおかげですごくかっこ良かったですよね」

……今回の撮影は長野オリンピックの舞台となった白馬で行われたと聞いていますが、映像をご覧になってどのような感想を持たれましたか?
「すごいの一言です。映像はほぼパーフェクト。実はこの映画を撮る時に雪が少なくてラージヒルをほとんど使えない状態だったのでノーマルヒルですべて撮影し、それを合成してラージヒルに繋ぎますと聞いていたのですが、本当に見事で観た感じ全くわからなかったです。今の映像技術に驚かされました」

……映画をご覧になって改めて気付きになった点などありましたか?
「本作にも登場する高校生ジャンパーの小林賀子さんがオリンピックのテストジャンパーに選ばれてすごく喜んでいたんです。でも僕ら大人たちはオリンピックの選考に漏れた選手の集まりなので素直に飲み込めない気持ちで出場していた部分もありました。でも25人がひとつなって達成しなけれればならない目標ができ、それに向かって突き進むことができたのは、その高校生のキラキラした目の輝きを見て、自分が高校生に持っていた嬉しさと重なることができて本当に良かったです」

……原田雅彦さんがアンダーシャツを借りられるシーンもありましたが、あのエピソードも事実ですか?
「そのままリアルなお話です。大会当日の朝、テストジャンパーの部屋がジャンプ台の下あったんですが、そこに原田君が入ってきて。25人のテストジャンパーがいる中にオリンピック選手が入ってくること自体異例なのですが、僕の前に来て「アンダーシャツ貸してくんない?」と言われて「今着てるのだったら貸してもいいよ」と答えたんです。僕としてはウォーミングアップ用で使うのかなと思っていたら試合の一本目にその貸したアンダーシャツを着ていて「嘘だろ?オリンピックの大舞台で何考えてんだろう?」って驚きました(笑)。でもその姿を見て言葉がいらなかったと言うか、一緒に戦うんだぞという彼の想いが伝わってきましたね。世間的にはその一本目は失敗とか言われていますが、悪天候で重たい雪が降っていてトップスピードが4kmも落ちている状況を考えると、あのジャンプは原田君じゃなかったら、あそこまで飛べてなかったと今でも信じています」

……それから奇跡の2本目に繋がったわけですね。
「2本目の前に斎藤選手が「(雪の)状況どうですかね?」と聞きに来たんです。それで「悪天候で今のところ全く飛べる状況じゃないね」と答えたら彼が「このまま終わらせるわけにはいかない。このままだと4番で終わってしまう。俺たちは絶対メダルを獲りたいと思ってるんです」ということをちらっと言ったんです。その時に自分も4年前は日の丸を背負って出場していたから気持ちがすごくわかるし伝わってきたんです。だからどうにかメダルを獲らせたいと言う思いが溢れてきて、テストジャンパーたちもひとつになって臨むことができました」

……それでは最後にメッセージをお願いします。
「この映画は昨年の6月公開予定でしたが、コロナ禍の影響で一年延期になり、オリンピックも同じく一年延期になりました。そんな中で大勢の選手たちが目標としていた大会が全て中止、延期となり結果を残せず悔やんでいると思います。私自身もオリンピックでは怪我や挫折、そして断念することもありましたが、その時々でできることを一生懸命に頑張ったことで、振り返った時に良かったなと思えるようになりました。今回の映画は、そんな辛い思いをされている方々へ少しでも勇気や希望を与える作品として伝わっていったら嬉しいです。ぜひ皆さんも劇場でご覧ください」


西方仁也(にしかた じんや)
スキージャンプ選手。1968年12月長野県生まれ。1994年リレハンメルオリンピックに出場し、ラージヒル団体戦で銀メダルを獲得。1998年の長野オリンピックでは、テストジャンパーとして団体戦の金メダルに貢献。2001年現役を引退後、指導者として後輩の育成に携わる。現在は雪印メグミルク株式会社にご勤務。

STORY
誰もが知るあの栄光の裏には、誰も知らない25人のテストジャンパーたちが起こした、奇跡があった―。
長野オリンピック・ラージヒル団体で日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。そこに、エース原田のジャンプを複雑な想いで 見つめる男―元日本代表・西方仁也(田中圭)がいた。前回大会・リレハンメルオリンピックで、西方は原田とともに 代表選手として出場するも、結果は銀メダル。4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表を落選。失意の中、テストジャンパーとして オリンピックへの参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。そして迎えた本番。団体戦の1本目のジャンプで、 日本はまさかの4位に後退。しかも猛吹雪により競技が中断。メダルの可能性が消えかけた時、審判員たちから提示されたのは、 「テストジャンパー25人全員が無事に飛べたら競技を再開する」という前代未聞の条件だった…。命の危険も伴う悪天候の中、金メダルへのかすかな希望は西方たち25人のテストジャンパーに託された―。この隠された真実に、あなたはきっと涙する-


『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』2021年/日/114分
監督:飯塚 健
出演:田中 圭、土屋太鳳、山田裕貴、眞栄田郷敦、小坂菜緒 (日向坂46)/濱津隆之/古田新太
主題歌:MISIA「想いはらはらと」(Sony Music Labels)
挿入歌:MAN WITH A MISSION「Perfect Clarity」(Sony Music Labels)
※6/18(金)全国公開
https://hinomaru-soul.jp//

Ⓒ2021映画『ヒノマルソウル』製作委員会