「悪魔は悩みや葛藤を抱えながら生きている」-映画『十二単を着た悪魔』舞台挨拶レポート

  • 関西

数々の名作傑作を生み出してきた脚本家・小説家の内館牧子の『十二単を着た悪魔 源氏物語異聞』(幻冬舎文庫)を黒木瞳が監督を手掛け映画化した『十二単を着た悪魔』。
自信を失ったネガティブ男子・伊藤雷(伊藤健太郎)が突然『源氏物語』の世界へトリップ。そこで弘徽殿女御(三吉彩花)に陰陽師として見い出され、彼女と出会ったことで雷が少しずつ成長していく姿が描かれている。

11月14日(土)には映画の公開を記念し、なんばパークスシネマにて舞台挨拶が行われた。当日は、弘徽殿女御役の三吉彩花、黒木瞳監督が登壇。映画を観終わったばかりの観客の温かな拍手でふたりが迎えられ、黒木監督が「関西は第二の故郷ですので、気持ちも和やかになります」と挨拶。「内館先生が『源氏物語』の中であまり良く描かれていない弘徽殿女御は本当は志をもって強く生きるとても素晴らしい人なんだという長年の構想を基にした異聞に、現代の若い男性が登場人物たちに影響を受けて成長するという物語を拝読して、とてもスカッとした。これは映像にしたら面白いだろうと思った」と映画化へのいきさつを語った。

信念を貫く強い女性・弘徽殿女御役を演じた三吉彩花は「ここまで強い女性を演じたのは初めて。母親としての優しさや力強さをどう表現しようか迷っていたら黒木監督が猛特訓してくださり、やっと弘徽殿女御が見えてきました。黒木監督に作っていただいたようなものです」と黒木監督への感謝の気持ちを述べた。三吉が演じる弘徽殿女御のセリフは歯切れの良い印象的なものが多く、MCから一番好きなセリフを問われた三吉は、「悩みますね(笑)。最初の登場シーンで述べる“能書きは要らぬ。男は能力を形にして示せ!”というセリフを今見るととても幼く感じられて、最後に“やれることもやれぬこともやって、私は生きる”というセリフに重みがあり、その違いが面白く感じたので、その最初と最後のセリフが好きです」と答えた。
三吉への女優としての素晴らしさを聞かれた黒木監督は、「“悪魔は強い人”という一面だけでなく、本当は悩みや葛藤を内面に抱えながらも“強くあらねば”と生きているのだと思う。そうした内面と外面の両方の強さを美しく品良く演じてくださった」と三吉を大絶賛。黒木監督の期待に十二分に応えた三吉の貫禄ある弘徽殿女御の姿は本作の大きなみどころのひとつでもある。

最後に黒木監督が「内館先生が弘徽殿女御って本当はこういう品格のある人だったのでは? という想いを映像化できて本当に嬉しく思う」と感謝の意を表し舞台挨拶は締めくくられた。

エンディングで流れる主題歌のOKAMOTO'Sの『History』は、黒木監督が映画音楽にロックを! と強い希望のもと数あるバンドの中からOKAMOTO'Sへ依頼し書き下ろされたもの。音楽や衣装など黒木監督が随所までこだわり抜いた渾身作、現在全国にて公開中。

『十二単衣を着た悪魔』
監督黒木瞳
原作内館牧子「十二単を着た悪魔 源氏物語異聞」(幻冬舎文庫)
出演伊藤健太郎、三吉彩花、伊藤沙莉、他
制作・配給キノフィルムズ

全国公開中
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