ガウディの“頭の中を覗く展覧会”!「ガウディとサグラダ・ファミリア展」名古屋市美術館で2024年3月10日まで開催。

  • 名古屋

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が名古屋市美術館で開催中だ。本展は、スペイン・バルセロナを中心に活躍した建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)の創作活動を、100点を超える模型、図面、写真資料などでひも解く4章立ての展覧会。これまでもガウディ建築を網羅的に紹介する展覧会は日本で開催されてきたが、本展は、サグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞り、いかにしてこの建築が生まれたのかを知る試みとなっている。

その独創性はどのように生まれたのか?
サグラダ・ファミリア聖堂に続く道

第1章・第2章では、ガウディが生きた時代の建築や装飾に関する資料が展示され、3つのキーワードを通してその建築を見ていくことで、有機的なフォルムのガウディ建築が生まれた構造を知ることができる。

3つのキーワードとは、「歴史」「自然」「幾何学」。これは、本展に展示されている、若き日のガウディ自身の建築論、装飾論などが書き綴られた直筆の「ガウディ・ノート」にも記されているテーマ。

ガウディといえば、自身の自由な発想で造形を生み出したというイメージを持つ人も多いかもしれないが、本人は意外にも人による0からの創造を否定し、歴史上の建築に見られる形や、大自然の中の形、そこから見える幾何学の形といった、既に存在するものを発見し、そこから出発するのが人による創作だとしている。

例えば、サグラダ・ファミリア聖堂の放物線は、ガウディ建築のシンボルともいえる形。ガウディは、「逆さ吊り実験」を通して自然な釣り合いを模索していた。まるで物理学者の実験のような模型は、糸の両端を固定して垂らすとできあがる逆アーチに、材料の重さに対応するおもりを下げて合理的な建築の形を模索する独自のもので、“自然の法則に合わないものは、建築には合わない”とした彼の考えが、建築へ反映されていることが理解できる。

[奥]コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験(部分) [手前]コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験 スケール1:50 いずれも1984-85年 西武文理大学

第2章展示風景より、「逆さ吊り実験」の模型。その下に置かれた鏡を覗き込むと、建築の形が浮かび上がる。

コローニア・グエル教会堂、地下聖堂模型 スケール1:25 1984-85年 西武文理大学

第2章展示風景より、コローニア・グエル教会堂、地下聖堂模型。こちらは「逆さ吊り実験」のきっかけとなった建物。

ニューヨーク大ホテル計画案模型(ジュアン・マタマラのドローイングに基づく) 1985年 制作:群馬県左官組合 伊豆の長八美術館

名古屋会場のみの展示となる「カサ・ミラ正面図」は、世界遺産にも登録されている住宅建築の図面。窓などの波打つような曲線は、洞窟の形がルーツと言われていて、二重らせんの造形はサグラダ・ファミリア聖堂にもみてとれる。

アントニ・ガウディ カサ・ミラ、正面図(建築許可申請) 1906年 ガウディ記念講座、ETSAB

ガウディのすべてを詰め込んだ
サグラダ・ファミリア聖堂を大解剖!

“ガウディの頭の中“を覗き込み、その建築構造・思想への理解が深まったところで、第3章ではいよいよサグラダ・ファミリア聖堂を見ていく。

聖堂が着工したのは1882年。その翌年、2代目建築家に就任したガウディは、そこから1926年に亡くなるまでの43年間をこの聖堂の建設に捧げた。図面のみならず膨大な数の模型を作り、その構造を練り上げ、初代建築家による当初案を大きく変更。らせん状の柱や、樹木のように枝分かれする構造など、ガウディのすべてを詰め込んだ巨大建築プロジェクトへと生まれ変わらせていった。本章ではこの変遷を数多くの模型や貴重な資料とともに紹介する。

サグラダ・ファミリア聖堂全体模型 2012-23年 スケール1:200 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 サグラダ・ファミリア聖堂

サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型 2001-02年 制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室 西武文理大学

模型などのほか、本章ではガウディ自らが手がけた彫刻が展示されている。ガウディはいかなる距離や角度から観られても自然に見えるように、写真撮影や模型などを用いて膨大な制作と検証を繰り返したという。

ガウディ没後もその建築は続く。日本の展覧会としては初公開となる「歌う天使たち」は、イエス・キリストの誕生を祝い、讃美歌を歌う様子を表す、降誕の正面に設置されていた石膏像で、1978年以来サグラダ・ファミリア聖堂で彫刻家として従事する日本人・外尾悦郎が制作した。これは、ガウディ没後に勃発したスペイン内戦により、聖堂は被害に遭い、模型や図面類も破壊、焼失してしまったなか、ガウディが残した当時の彫刻写真を参考に復元させたものだという。

アントニ・ガウディ サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:[左から順に]女性の塑像断片、女性の塑像断片、少女の塑像断片、キリストのトルソの塑像断片、少年の塑像断片 いずれも1898-1900年 サグラダ・ファミリア聖堂

外尾悦郎 サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面:歌う天使たち(サグラダ・ファミリア聖堂、降誕の正面に1990-2000年に設置) 作家蔵

最後の第4章ではガウディが後世の建築家に与えた影響などを紹介しながら、その現代的意義を問いかける内容となっている。NHK制作による、現在のサグラダ・ファミリア聖堂の壮麗な空間を空中散歩する映像も美しく、本展で見た数々の展示を思い浮かべながら見てもらいたい。

「人間は創造しない。人間は発見し、その発見から出発する」とはガウディの言葉だが、ひとりの人間の真摯な探求から、こんな創造物ができるのかと、その崇高さに圧倒される展覧会。名古屋にこれだけの資料が集まる機会はなかなかない。この機会にぜひ、足を運んでもらいたい。

ガウディとサグラダ・ファミリア展
会期2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)
会場名古屋市美術館(名古屋市中区栄2-17-25)
TEL052-212-0001
開館時間9:30〜17:00、2月23日を除く金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日月曜日(1月8日[月・祝]、2月12日[月・休]は開館)、12月29日[金]~1月3日[水]、1月9日[火]、2月13日[火]
主催名古屋市教育委員会・名古屋市美術館、NHK名古屋放送局、NHK エンタープライズ中部、中日新聞社