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フライング・ポストマン・プレス 東京版

2018/02/24

本日より、期間限定ロードショー!「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2017」注目の若手監督5人へのインタビュー

メイン写真

 

 

 

本日より、「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2017」の製作実地研修で完成した、短編映画5作品が有楽町スバル座で期間限定上映される。(3/2(金)までの一週間)監督5人に、作品、本プロジェクトについて話を聞いた。

 

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『化け物と女』 

監督:池田 暁

ある夜、三味線の音色に惹かれた女は

不気味な妖怪に出会った・・・

 main「化け物と女」

 

池田:題材はタイトルの通り「化け物と女」です。化け物と女の関係を見ていただければいいと思っています。観終わった後に、「あの化け物ってなんだったんだろう」と考えてほしくて制作しました。化物は僕が描いたものをそのまま形にしてもらったものです。また、三味線を聴くことが好きで、いつか三味線を使った映画を撮りたいと思っていたので、ちょうど今回、化け物が弾くっていうのは面白いなと思い使いました。

 

―独特のリズムと映像の質感、色味。作品は、まるで日本昔話のように、音やリズム・色味が、映像というよりも体験として残る感じがしました。これらはどのように演出されたのでしょうか。

 

池田:脚本を書くときに昔話というか童謡のようなイメージはありました。その中で、画に関しては紙芝居じゃないですけど、一枚一枚の絵のようなイメージはありました。演技やリズムに関しては、俳優さんに、演出というより振り付けみたいと言われました。手の動き一つ一つも決めた動きになっている。それが一定のリズムに繋がっているのかなという気がします。

 

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『カレーライス  Curry and Rice』 

監督:奥野 俊作

素晴らしいわ。

 

main「カレーライス」

 

奥野:脚本をちゃんと書くのが、今回が初めてでした。ジャンヌという女性が出てくるのですが、彼女のモデルは学生時代の知り合いの妹のフランス人です。カレーを作った人が死んで、そのカレーだけが残って。それは美味しくなるのか、誰かが食べるのか、という単純な着想から、脚本を仕上げました。結論や強烈なメッセージがある脚本ではなかったので、それをどう映画にしようかと考え、とりとめのない時間が30分流れているということに不思議な魅力を感じる映像に挑戦しました。

 

―カレーライスはお好きなんですか。

奥野:カレーライスは好きです(笑)。

 

―作品はモノクロで撮られていますね。

奥野:淡々ととりとめがなく、中身もない話なので、それをドラマチックに、そして極力淡々と、画のトーンも乾いたトーンでやっていこうと思ってモノクロにしました。

 

―夜道で主人公がジャンヌと会話した中での、チンピラは“薄っぺらで、おかしくて、寂しい”というセリフが、この作品の中だからこそ、とても腑に落ちるものとしてとても印象に残っています。そういう雰囲気について、何か気を使われた、意識されたところはありますか。

奥野:自分は普段、広告映像を作っているのですが、そのなかでも悲しみとおかしみはどこかに紛れ込ませたいという意識があります。この映画は多分そういうところが意識したというよりは“出ちゃった”という感じだと思います。映画の中でのチンピラの定義については、好きだとおっしゃってくれる方もいらっしゃって。あのセリフは自分自身に言ったことでもあるんですけど、自分の人間観・人生感が出ているんだと思います。

 

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『もんちゃん』 

監督:金 晋弘

ママはしゃしんにうつりません。

 

 main_yoko「もんちゃん」

  

金:私は非常勤の保育士として働いています。そのなかで、現代の保育園児を表現した詩集を作ってみたいと思い、架空の保育園児の名前をタイトルにたくさんの詩を書きました。(金は、現代日本の保育園児を表現した詩集『ボクラノホイクエン』を出版している)今回、その中の一編「もんちゃん」を原作に映画を作りたいと思いました。テーマはグリーフ、つまり死別したことによる悲しみです。それをどうすれば癒していけるのかというグリーフサポートが今、大切だと言われています。もんちゃんがお母さんの死を受け入れられずに立ち止まっていて、治癒に向けてどうしたらスタートラインに立つことができるのか。誰しもがいつかは死別を体験する。その時にこの映画がなんらかのヒントになればいいなと思っています。この話は実体験ではありませんが、保育園児と関わる中で、いつも「ママがいい」というのを感じていて。母性というものを作品の中に取り入れて伝えていければと思っています。

 

―気付くと主人公のもんちゃんに完全に感情移入して、亡くなってしまった“ママ”のことを想って、もんちゃんと一緒に日々を過ごしているような感覚になりました。自然と感情移入できるような演出はあったのでしょうか。

金:カメラワークで言えば、もんちゃんの目線の高さで後ろをついていくというのが、そういった気持ちにさせたんだと思います。死別したママの幽霊がずっともんちゃんの後ろをついていくイメージで撮れればと取り組みました。

 

—回想シーンなどがなく、お母さんの姿をあえて出さない。もんちゃんが自問自答でお母さんの存在を喋っている幾つかの場面では、台詞を聞いているだけで涙が出でてきました。

金:あまり説明をしたくなかったんです。説明をしないで、どうやってわかりやすくするかと考え、自分で言うのがいいんじゃないかと思って脚本を書きました。書いていく中で、「ああやって、自分で言っちゃう子もいるかもな」と思いました。お母さんが全く出てこない、お母さんがなぜ死んだのかもわからない。それがもんちゃんの気持ちにさせたのかもしれませんね。

 

―もんちゃんを演じた子役さんの演技がとても上手でした。彼への演技指導はどのようにされたのですか。

金:リハーサル練習を2日間ほど行いました。演技のレッスンは最近始めていたようですが、あまり経験はない子なので、オーデションの時から、他の子が喋っていても聞いている芝居をやっていました。それが上手だなと思って選びました。子役に指導する時は、同じ目線にたって、一緒に取り組んでみようという感じです。大人の方の演出をするときと大きくは変わらないですが、子どもに対しての方が優しいです(笑)。

 

 

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『トーキョーカプセル』

監督:齋藤 栄美

ワンフロア、70個の人生

 main「トーキョーカプセル」

 

齋藤:日本や東京の独特なロケーションを舞台にした映画を撮りたいなと思うなか、カプセルホテルをメインの題材にした映画はまだ他になかったので、やってみたいと思いました。30分という限られた時間の中では、私は1日を描くことが時間的にちょうど良いと思い、あるささやかな1日、でも一歩前に進めるような1日を、学生とホテルを題材に作れたらいいなとこの映画を作りました。この映画を作ろうと思ってから、カプセルホテルにたくさん泊まり、取材もさせていただいて、そこで得たエピソードを脚本に取り込みました。

 

―就活生を入れたことには、理由があるのですか。

齋藤:実際にカプセルホテルを取材しに行った中で、おじさんたちだけでなく、割と就職だったり転職だったりで東京に来てカプセルホテルを利用している人が多いと聞きました。実際にロビーにいると履歴書を書いてる人もいて、それも一つのドラマだなと思いましたので入れました。

 

―カプセルホテルという独特の場所を舞台に、物語が盛り上がっていく部分では、映像と音楽が混ざり合って、走り出す主人公と一緒に加速していくような体験をさせていただきました。

斎藤:主人公が走るシーンは、真夜中の渋谷で撮影をしました。事前の打ち合わせでは、人通りも信号も多い渋谷で、あれだけの長い走行シーンを撮ることは難しいだろうという意見が多かったのですが、どうしてもあのシーンを撮りたくて。そう思っているうちに、「今ならいけるんじゃない?」という瞬間があり、撮影することができました。主人公役のりりかさんも、何度も走らせてしまったのに、疲れを見せることなくあの場面に臨んでくれました。

 

—クラブのシーンでも衣装が60年代風だったり、カプセルホテルもブロックだったりしたのは、意識されてのことですか。

齋藤:現代風にするという方向性もあったと思いますが、クラブにも実際に取材に行きまして、今のパリピみたいな女の子を映すのは自分のテイストとは違うと思いました。とすると、自分の好きなレトロポップというか、古めかしいけど可愛い女の子っぽい感じ、カプセルホテルもキューブ状のちょっと古いもので統一できればなと思いました。

 

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『さらば、ダイヤモンド』 

監督:中川 和博

まっすぐ、そのままに… 想いを白球に込めて。

 

 main_yoko「さらば、ダイヤモンド」

  

中川:この作品を作ろうと思ったきっかけは、最近、友人がゲイであることをカミングアウトしたことでした。僕は31歳になるのですが、友人がカミングアウトしたことよりも、30歳になって、本当の自分と向きあって、これからどういう風に生きていくのかという、自分の道を選んだことに心を動かされました。自分も30代なので周りも結婚し、子供ができている中で、自分は映画という道を選んで、人はどこかで道を選ぶことになる。そしてその道を選んだ人を認めたい、そういう姿がいいなというのが作品のテーマです。登場人物たちが野球をやっていたのは、僕が野球をやっていたからです。

 

―男性3人というトライアングルを描かれていますね。

中川:これが例えば男女の話だったら、よくドラマなどで見る普通の三角関係で、それを単に男性3人に置き換えただけです。恋愛ものだと三角関係って普通ですよね。そういうドラマの定番を差し替えられたらいいなと思ったんです。

 

―夜の球場で、3人が野球をするシーンはとても印象的でした。あのシーンでこだわった点などを教えてください。

中川:実は、この映画の前半15分と後半15分でシーンの数が全く違うんです。前半は10数シーンあるのですが、後半は3、4シーンしかない。作り方としては、あの野球場のシーンをたっぷり見せるというのが一つ、クライマックスだと思いました。そのためには、実際に野球ができる人じゃないとあのシーンは撮れないと思ったので、実際ピッチャー役に人は甲子園まで行ってベスト4のエースをやっていた人、キャッチャー役も大学まで野球をやっていた人を選びました。実際に野球をやってもらって、その上にお芝居を乗せていく、という点が、あのシーンで一番大切にしたことです。

 

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【ndjc:若手映画作家育成プロジェクトについて】

―プロジェクトに参加したきっかけ、魅力を教えてください。

 

池田:35mmで映画を撮れる機会は今後なかなかないと思ったのがきっかけです。今までとは違う環境で、色々なスタッフの方と映画を撮ることで、学んだりアイデアを得たりできるのが一番大きいと思います。脚本は一人で書きましたが、絵の撮り方やセットのことは僕が考えていたものより面白いものが多かったです。

 

奥野:直接のきっかけは『嘘を愛する女』の中江監督がこのプロジェクトに過去参加して、自分と同じように広告をやりながら映画を取っているのをずっと見ていて、自分も映画をやってみたいと思ったということです。このプロジェクトは、脚本指導から始まり、準備・撮影・編集に至るまで、映画を作ることを一から教えてもらえる。色々なスタッフの方に意見やアドバイスをいただいて学べる、しかも35mmでオーソドックスな映画の作り方が体験できるということが意義かなと思います。

 

金:もんちゃんという詩の一片で映画をつくりたいと思った時に、ちょうどSNSでこのプロジェクトを知ったのが、応募したきっかけです。たしかFacebookで友達が投稿していたのを見たんだと思います。商業映画を作っていきたいと思っているなか、プロのスタッフの方達と、どのようにコミュニケーションをとっていくのかという点が一番勉強になりました。

 

齋藤:私は10年助監督をやっています。見習いから始まり、監督を目指していくのですが、その「監督になる」ということが、今の映画業界ではとても難しい。そうなると自分で何か動かさないといけない、と思った時、このプロジェクトを知り応募しました。助監督を10年やってきて、商業映画というものを知っているつもりだったのですが、それは本当に一部分だったと実感しました。脚本を0から書いて、準備をして、撮影に臨み、作品を仕上げ、上映に立ち会う、という大きな流れを監督として、それも35mmでやらせていただけることが一番の魅力です。

 

―監督として新しい発見はありましたか。

齋藤:私は助監督をやっていたときから、自分が監督になったぐらいの気持ちで監督にプレゼンをしたり、色々な準備をしたりしていたのですが、実際に自分が監督になってみると、全然違って。それは何が違うのかというと、「一つ一つのことを決断していく覚悟」と「それに伴った責任」が監督と助監督では大きく違うなと思いました。

 

中川:僕も助監督をやっていまして、実際7年前のこのプロジェクトで助監督としてついたことがあります。知ってはいたのですが、仕事のタイミングなどもあり、応募できてなかったのですが、今回はちょうどタイミングが合ったので、応募しました。実際やってみて、一番良かったと感じたことは「機会がある」ということです。自主制作という手もあると思うのですが、それだといつ完成させて公開しようかということまで自分でやらないといけない。ワークフローが出来上がっていて、しっかり面倒を見てもらい完成まで作っていける環境がすごくいいなと思いました。

 

―助監督として、このプロジェクトについていた時との違いや、印象に残っていることはなんですか。

中川:監督として自分が決断するということは、たとえそれが間違っていても、みんながその方向に進んでいくという怖さがありました。助監督だと間違ったことを言っても周りのベテランスタッフが怒ってくれるのですが、監督だとなかなか言ってもらえない。それをいかに言ってもらうかというコミュニケーションを取らないといけないということを監督になって痛感しました。

 

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「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2017」

文化庁の日本映画振興事業の一環として2006年からスタートしたプロジェクト。優れた若手映画作家の発掘と育成を行い、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップなどを実施すると同時に、作品発表の場を提供することで若手映画作家を支援し、日本映画の活性化を目指している。ndjc出身の映画監督は、たとえば昨年は「湯を沸かすほどの熱い愛」中野量太監督、直近では「嘘を愛する女」中江和仁監督など、続々と長編デビューを果たしている。

 本年も 8月に行ったワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ5人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作。こうして生まれた新作がついに公開となる。

 

■上映日時:2月24日(土)~3月2日(金)連日18:15

■上映劇場:有楽町スバル座map

■入場料金(5本まとめて):一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円  *全席自由

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2017」監督情報&作品情報はこちら

 


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