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フライング・ポストマン・プレス 名古屋版

2019/02/25

注目の若手監督5人へのインタビュー!3月8日(金)〜3月14日(木)公開「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018」

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3月8日(金)〜3月14日(木)に、「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018」の製作実地研修で完成した、短編映画5作品がミッドランドスクエア シネマで期間限定上映される。次代を担う監督5人に、作品、本プロジェクトについて話を聞いた。

 

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main_yoko「くもりときどき晴れ」

 

『くもり ときどき 晴れ』

監督:板橋基之

母と暮らす晴子の元に一通の手紙が届く。それは生き別れた父の生活保護扶養照会だった。25年前に両親が離婚して以来の父の消息。家族の中で晴子にだけは優しかった父。そんな父に晴子は会いに行く・・・。金属加工職人の父の口癖。それは「設計図通りに生きろ」。25年ぶりの父の姿に扶養すべきかを悩む晴子は、家族の言葉に揺れ動く。

 

板橋監督:暮らしをテーマにした作品はこれで3作品目となります。30分という時間の中で、家族をのんびりと撮りたい、料理が美味しそうに見える家庭的な映画を撮りたいと考えました。何十年ぶりに会った認知症の父でも、もう2度と会いたくないと思っている親子でも、「家族はどんなカタチでも家族」だと思います。どこかズレているけどつながっている家族を描きました。

 

—「人生は設計図通りにいかない。」というセリフについて—

板橋監督:NHKでドキュメンタリーを撮っていた時に出会った金属加工職人さんが、趣味で花を育てていて、「金属加工は設計図通りにいくけど、お花は設計図通りにいかない。お花は有機物だから、その時の育て方で変わる。そこが面白い。」と話してくれました。それをセリフに反映させました。

 

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main_yoko「はずれ家族のサーヤ」

 

『はずれ家族のサーヤ』

監督:岡本未樹子

恋人との間に子を宿した母親は、幼い娘・沙綾を実家に預け、新しい生活を選んで出て行った。こうして「家族」の枠から外れてしまった沙綾は現在小学3年生。あれから何年も祖母と二人きりで暮らしている。母親は沙綾を家に呼び寄せることが出来ず、時折、父親が違う弟・光希を連れて会いにくる。沙綾は弟が大好きだがちょっぴり羨ましい。一緒に暮らせるお父さんもお母さんもいるんだもの…。そんなある日、沙綾は学校帰りの公園で、古い木箱を売るおもちゃ売りの男に出会う。何の変哲もないその箱にはある不思議な力があるという…。

 

岡本監督:私は作品を手がける上で、相手が何を考えているのか深読みしてしまう女性ならではの視点を映画に取り入れるよう心がけています。悲しいことに最近虐待のニュースをよく目にします。しかし、虐待まではいかなくても苦しんでいる子どももいると思います。大人は自分の幸せを選ぶことが出来ても、子どもは大人が選んだ幸せについていくしかない状況を、今作では第三者の視点で捉えました。

 

—印象的な子どもの表情について—

岡本監督:その人が何を考えてその行動をしているのか、観ている人に伝わるようにしたいと思っていたので、沙綾役の横溝菜帆ちゃんとは、彼女の表現したいものと私の表現したいものが一致するように、「沙綾は今こういう気持ちなのかな?」とコミュニケーションをとることを意識した結果、様々な表情が生まれたと思います。

 

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main_yoko「最後の審判」

 

『最後の審判』

監督:川上信也

日本最高峰の東京美術大学の受験に挑む稲葉は浪人5年目。今年で最後の挑戦と決めている。試験は2日間で描き上げる人物着彩。試験開始の直前に平然と現れる独特な風貌の初音。しかし試験がはじまると初音はとてつもない画力で他者を圧倒する。稲葉も初音の絵を意識するあまり自分の絵を描くペースを見失ってしまい、1日目の試験が終了してしまう。怒りに震える稲葉、ゆらりと歩く初音に声をかけ初音の画力の秘密を聞き出す。初音の個性的な絵を描くスタイルは路上で似顔絵を描いてきた中で培ってきたものだった。

 

川上監督:僕は15年近くCMやMVのディレクターをしていて、ショートフィルムも何本か撮ったことがあります。例えばCMでは15秒しかないからこそ、テンポよくストーリーを展開させる必要があり、役者さんの演技が演技に見えないようリアルな表現を意識することが多いという環境が僕の映画の撮り方にも反映されています。また、美術系の大学を卒業したこともあり、画をしっかり撮ることを意識しています。今作は、僕自身が東京藝術大学を受験して敗れ去ったことをベースに、受験の失敗や挫折、誰の心の中にも存在する出来る人や前に進んでいる人への妬みと尊敬をエンターテイメントとして描きました。さらに、美大受験の試験会場や多様な似顔絵など、みんなが映画館で観たことがない画を意識しました。

 

—緩急・勢いのあるストーリー展開について—

川上監督:30分という世界でも小さくまとまらないように意識しました。あまり、広告と映画のモードを切り替えすぎないようにして、それが例え受け入れられなくても自分が表現したいものを表現するという覚悟をもって臨んだ作品です。『最後の審判』というタイトルも最後の賭けを連想させ、40歳を超えて映画に挑戦する僕自身と主人公をリンクさせています。

 

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main_yoko「サヨナラ家族」

 

『サヨナラ家族』

監督:眞田康平

一年前、目の前で突然父が死んだ。いまだ受け止めきれない洋平は、妊娠中の妻を残して一周忌のため実家に帰省する。実家の母は父がふっと帰ってくるような気がすると仏壇に話しかけ、妹は妹で自分なりの方法で父の死を受け止めようとしている。それが洋平にはどうしても納得できない。困惑する洋平の前に不思議な現象が見え始める。私たちはどうやって大切な人の死を背負っていくのか。自分の無くした半身を探し続ける家族の物語。

 

眞田監督:とにかく脚本で物語を伝えることを意識した作品です。人間の欠落をどう埋めるかという重い物語を役者を通して誠実に向き合いたいと考えました。実際に自分の父親が3年前に目の前で亡くなり、実際に話したこと、自分の弟や母がどう父の死と向き合ってきたかなど、実体験を織り交ぜながら作った作品です。映画ならではのアプローチとして、家族が全員2人に見える現象を取り入れました。一般的な生活をしている自分と父の死を思い出して悲しくなる自分、2つの自分が関わり合いながら生きていく様子を表現しました。

 

—繊細に描かれる、亡くなった人に触れる感覚について—

眞田監督:父が亡くなった時に僕自身が感じていたことや、妹が棺桶開けて父に触れようとしたことなど、実際にあったことを脚本に取り入れたからこそ、より繊細に表現できたと思っています。正直脚本を書いているときは当時のことを思い出して辛かったのですが、俳優さんが演じてくれたことでもやもやを消化できたと思います。

 

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main_yoko「うちうちの面達は。」

 

『うちうちの面達(つらたち)は。』
監督:山元環

鎌田家にはある珍妙な事件が起きていた。二週間前、夫婦喧嘩が原因でママが姿を消してしまったのだ。パパと志保はどこへ行ったか検討もついていない中、13歳の浩次朗だけがママの居所を知っていた。ママは家の中のある場所にいる。ママがバレないように隠れるのを浩次朗が手助けしていたのであった。パパは仕事、志保と浩次朗は学校、日中だけがママの唯一くつろげる時間、浩次朗とママにしか分からない合図。そんな生活にも慣れてきた頃、日中帰って来ないはずのパパが帰ってきてしまう。絶体絶命、家族を巻き込んだ夫婦喧嘩はどこまで続くのか。

 

山元監督:作品を作ってから気づいたのですが、僕はベタな物語が好きなのかもしれません。ストーリーが分かりやすいことに対して悪いイメージを持っていましたが、この作品を作っているうちに、オーソドックスだからこそ多様なアレンジが可能で、それは一種のストロングポイントであると感じるようになりました。僕は父が亡くなってからの2年間母と2人暮らししていました。お互いにテリトリーや生活リズムを共有して、その日の出来事などを長い時間話すことが当たり前になっていました。しかし、そのことを周りに伝えると驚かれることが多かったんです。そこで、自分の家族にとって当たり前なことは普遍的に感じるけれど、それは家族単位で異なるものであるということに気づいたことを作品に取り入れたいと考えました。だから、母と父が喧嘩して母が家を出るというよくあるオーソドックスな展開に、本当は家を出てなくて居留守をつかってどこかに隠れているというコメディを30分の世界で表現しました。

 

—主人公・浩次朗の中間的な立ち位置について—

山元監督:設定として主人公だけはずっとリビングにいるんです。家族全員揃って食卓を囲みたい思いをもっていて、家族のスペースを共有しようとするキャラクター設定を大切にしました。

 

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—ndjcを知ったきっかけはなんですか?

板橋監督:僕はndjcで受賞経験のある監督さんに教えてもらいました。今までは自主映画として映画を撮っていたので、35mmフィルムで撮ることができるということに惹かれました。しかし、応募には推薦団体が必要ということで、推薦団体探しに苦労しました。そして、「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」という以前出品させていただいた映画祭にお願いしました。エントリー自体は前年もしていましたが、今回初めて最後の5人まで残ることができました。自主映画は気心の知れた仲間と気楽に作っていたので、初対面の制作プロダクションの方々と作るのはコミュニケーションの取り方が難しかったのですが、非常に刺激的でした。

 

岡本監督:ndjcに応募したのは今回で3回目です。普段は助監督をしているのですが、助監督の先輩に、「1度監督として映画を撮ってみたら?」とndjcのことを教えていただきました。助監督として撮影の流れは把握していたのですが、自分の表現したいものを周りのスタッフの皆さんが汲み取ってくれることは初めての経験でした。監督に提案する側ではなく、監督として私が考えていることを周りが膨らませてくれるという環境は新鮮でしたね。

 

川上監督:僕はずっとCMに携わっていましたが、映画は昔から好き好きでした。しかし、広告業界にいる僕は映画を作る方法を知りませんでした。そんな時、知人の紹介でアスミック・エース株式会社を立ち上げた原正人さんとお会いする機会がありました。そして、原さんからndjcを教えていただき、プランニングを始めました。2015年に応募した際は脚本が文字の羅列で終わってしまっていて玉砕。その後、脚本を書く勉強をするために、シナリオ・センターに2年間通いました。その結果、2回目の応募で映画『最後の審判』を手がけることができました。CMと映画を混ぜ合わせて新しい映画を作りたいと考えていましたが、それだけではなく、両者の流儀や違いを学びながら、お互いの良いところを取り入れながら新しい映画を作っていきたいです。

 

眞田監督:今まで映画は細々と撮っていて、チャンスは狙っていました。一昨年に出品しないかとお声がかかって、ワークショップまで進んで多くの方に脚本が好評だったのですが、落選してしまいました。俺を落とすなんて許せないと思って(笑)、リベンジすることを決意して、早めにシナリオを書き始めました。今回初めてプロの現場で映画を撮って、素敵なプロデューサーさんと出会えたのでこれからも一緒に何かやりたいと考えています。

 

山元監督:僕は今回初めて応募しました。いつndjcのことを知ったのか曖昧ですが、2015年に道頓堀を歩いていた時に、「ndjc、そろそろ応募締切やな。」と頭の中にふと浮かんできたんです。フィルムに触ってみたい、フィルムならではの面白さを体験したいと思って、応募をしました。撮影期間中は、プロの皆さんとのイメージの共有が難しかったです。僕が発する言葉をしっかり聞いてくださるので、プレッシャーを感じてしまって、口ごもっているうちに時間が経ってしまうこともあり、監督として自信を持って指揮する必要があるという課題が見つかりました。僕は26歳で、監督の皆さんの中では若いと思ってもらえる年齢なので、多めに見てもらえると嬉しいです(笑)。

 

—作中で特にこだわったところや注目してもらいたいシーンはどこですか。

板橋監督:家族3人で話すところや妹が語るところはワンカットで撮りたいとスタッフの皆さんにお願いをした思い出深いシーンです。

 

岡本監督:田村泰二郎さん演じるおじさんを人間なのか分からないように描いたり、沙綾が初めてお母さんに自分の思いを伝えるシーンにおいて、「沙綾は言えない子なんだよ。」と事前に横溝菜帆ちゃんと共有したことで、彼女が声を出す前に唇が震えるという演技をしてくれたところが見どころです。

 

川上監督:似顔絵対決で初音がサラリーマンに話しながら描いたことで、まさに彼女の天才性を自然に表現できたと思います。また、稲葉は最初嫌なキャラクターとして登場しますが、初音と出会って心が氷解していく瞬間の自然な笑顔を収められたことも嬉しかったです。

 

眞田監督:病院のお母さんが叩かれるシーンで、母としての子を守る姿が表現できたと思います。エンディングにつながるワンカットもキャストの皆さんに「2分間自由に使ってください。」とお願いして、困った時の人がどうするのか撮ってみることにしました。普段ドキュメンタリーなどを撮っている血が騒いでしまいました(笑)。

 

山元監督:ママを演じる濱田マリさんが机の下に潜っている時に椅子に乗ったことで面白いワンカットを撮ることができたと思います。

 

—ご自身の作品を俯瞰してみて、今後の展望につながる発見を教えてください。

 

板橋監督:セリフに都合よすぎる点があって、まだまだ描き足りないと実感しました。暮らしや料理がもっと映えるように、今後はロケ地も増やしたいですね。

 

岡本監督:作品を通して、やっぱり女の人の方が他者の考えていることを想像することが多いと実感しました。あと、子どもってかわいいなと気づきました(笑)。

 

川上監督:作品をあえて途中で突然終わるようにすることで、この先も見てみたいと思わせたいと決めていたので、その意図通りのものができた実感しています。このまま長編にもつながるような作品に仕上がったと思います。

 

眞田監督:30分ばっちりに収めることを意識しすぎたので、今後はカメラワークを存分に使うなど映画の余白を楽しめるような作品も作りたいです。

 

山元監督:今作は意図せずコメディ風になったので、キャッチーな深夜ドラマとかピッタリかもと思っています(笑)。卒業制作ではホームレスの人情味溢れる物語を描いていたので、今後も新しい発見を期待して様々な映画を撮っていきたいです。

 

<イベント情報>

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018」

文化庁の日本映画振興事業の一環として2006年からスタートしたプロジェクト。優れた若手映画作家の発掘と育成を行い、本格的な映像製作技術と作家性を磨くために必要な知識や技術を継承するためのワークショップなどを実施すると同時に、作品発表の場を提供することで若手映画作家を支援し、日本映画の活性化を目指している。ndjc出身の映画監督は、たとえば昨年は「湯を沸かすほどの熱い愛」中野量太監督、直近では「嘘を愛する女」中江和仁監督など、続々と長編デビューを果たしている。

 本年も 8月に行ったワークショップから選出され、製作実地研修に進んだ5人の若手監督が、講師による脚本指導を経て、各制作プロダクションの協力のもと、プロのスタッフ・キャストと共に35mmフィルム撮影による短編映画を制作。こうして生まれた新作がついに公開となる。

 

■上映劇場:ミッドランドスクエア シネマ

■上映時間:3月8日(金)~3月14日(金)連日18:30

※3月9日(土)のみ18:00〜

■入場料金:一般¥1,200円、学生・シニア¥1,000円(5本まとめて)

 

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2018」監督情報&作品情報はこちら

 


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