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フライング・ポストマン・プレス 名古屋版

2017/09/21

映画『散歩する侵略者』長澤まさみ、松田龍平、黒沢清監督インタビュー

FPP㈰

 

 

 

 

ある日、妻は夫に告白される。「地球を侵略しに来た」と。

 

劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの人気舞台「散歩する侵略者」を、黒沢清監督が映画化したことで話題の本作は、信じられないことが起こる時代に届ける、奇想天外で切ない愛の物語。

 

主演・長澤まさみ、松田龍平、黒沢清監督に、本作に込めた想いを聞いた。

 

 

 

 

 

—舞台作品を映像化した本作、とても衝撃的でした。映画化をする上で苦労されたことはありますか?

 

黒沢:舞台用に作られた物語を映画化するということは初めての試みでした。小説として読んで大変面白く、これを映画化したいと思ったのですが、実は前川知大さんの「イキウメ」という劇団の演劇として作られたものだと後々知ったんです。それから前川さんとも知り合い、イキウメの舞台を何度も観るようになりました。そのまま映画化するのはかなりリスキーだということが分かっていたので、シーンにもよるのですが、映画っぽいところと演劇めいたところをまぜこぜにしました。「俺、宇宙人なんだ」なんていうセリフも、とても危険なキーワードです。舞台だとこれは有りなんですが、映画の中で、その辺の街角でこんなこと言っていいのかと。それをどう現実としてドラマの中で扱っていくか、演劇的ではあるけれどどう映画として着地させていくかというところが、難しいポイントでした。

 

 

 

—長澤さんと松田さんは初共演ですが、共演されてみてお互いのイメージは変わりましたか? 

 

長澤:松田さんはイメージのままの方でした。あまり多くを語らないけれど、凄くユーモアがあって器が大きくて、穏やかで…。

 

松田:器が大きくて穏やか…なんか凄そうですね(笑)。

 

長澤:面白い方だなという印象が強くなりました(笑)。

 

松田:長澤さんと初めてお会いして、凄く素直というか正直な人なんだなと。相手が素直でいてくれると、こちらもそうならざるを得ないというか…。本当に居心地が良い素敵な人です。

 

 

 

—役では夫婦という間柄でしたが、撮影現場ではどのように過ごされたのでしょう。

 

長澤:他愛もない会話をして、夫婦としてのリアルな距離を縮めていきました。私自身、お芝居では緊張してしまうと思い通りに動けなくなるところがあるので、なるべく役に集中できる環境作りを心がけています。初共演の方もいたのですが、トーンが似た人達が集まったのか会話も弾んで楽しかったです。

 

松田:ふふふ…。いや、ちょっと思い出し笑い。

 

長澤:怖い、宇宙人みたいになってる(笑)。

 

松田:夫婦といっても、僕が演じた真治は、侵略者に乗っ取られてしまって右も左も分からない赤子のような状態だったので、とにかく妻であり地球のガイドでもある鳴海の後ろをついて行きます。鳴海という存在が凄く大切だということが、撮影に入る前にはなかなか想像しきれない部分もあったので、「あ、そういうことか」と演じながら、関係性を理解していったところはありますね。

 

 

 

—“概念を奪われる”人間のビフォー・アフターが大変面白いです。

 

黒沢:原作にある非常に優れたアイディアであると同時に、考えれば考えるほど、“概念を奪われる”とはどういうことなのか、よく分からなくもなります。その人が日々何となく大切にして拘っているキーワードであるとか、意識はしていないけれど縛られてしまっている考え方みたいなものが、スポンッとなくなったらどうなるのか、というところを役者さんには演じてもらいました。拘りや抑圧が取れるので、殆どが社会的には使い物にならなくなるけれど、急に幸せになります。皆さん楽しそうにやってくれました。ここまでやる?というくらいはしゃいでいただきました。楽しかったですが、あの人達がその後どうなったのかは、まったく分かりません(笑)。

 

 

 

—唯一“普通の人間”である鳴海を、長澤さんはどのように演じようと思われましたか?

 

長澤:終始、鳴海は怒っているのですが、それは夫婦間のことだけではなくて、監督から「身近なイライラではなくて、世の中の何かもっと大きなものに怒っている」というヒントをいただきました。ただの怒りでは、鳴海の感情が薄っぺらになるなと台本を読んでも感じたので、それが妻としての愛とか、もっと違う価値観、感情に繋がっていくものになればいいなと思い演じていました。

 

 

 

—侵略者である真治が、物語が進むにつれ、じわじわと「人間」らしくなって行くところも見どころかと。

 

松田:真治が大きく変化したのは、鳴海に「まず自分のことを理解したら?」と言われるシーン。そこからなのかなと思います。鳴海の一言で、もとの加瀬真治を理解しようと思うところから、だんだん自分が侵略者なのか、それとも加瀬真治なのか分からなくなって人間に影響を受けていってしまいます。その逆のことが起こったのが、長谷川さん演じる桜井です。地球を守るためにどうにかならないかと右往左往しているのですが、だんだん侵略者の方に感情移入していってしまう…そこの逆転が面白いのかなと思います。

 

 

 

—長澤さんは、近頃ではミュージカルなどにも挑戦されて、演じることの幅が広がっているように見えます。今後の目標は何でしょう?

 

長澤:10代の頃に思い描いていた仕事に巡り会えつつあって、そういう道を少しずつ歩めるようになってきているなと思いますが、今は、次の目標を見つける段階かなと思います。コツコツとやっていきたいです。

 

 

 

—10代の頃に思い描いていた仕事とは?

 

長澤:10代の頃に演じていた役というのは、自分自身からかけ離れた役が多かったので、共感しにくかったのですが、今はいいなと思ったことをいいねと共感してもらえる環境にいられるなと思っています。

 

 

 

—映画の注目ポイントを教えてください。

 

黒沢:1つだけ言いますと、車に乗っているシーンです。特に、長澤さんが何度も車を運転するのですが、その横には松田さんがいて、この2人の関係性が車に乗るたびに微妙に変化していく。何でもないようで意外と、車はこの映画全体のキーポイントになっているはずですので、お見逃しなく。

 

長澤:高杉真宙君と恒松祐里さんのパートは凄く見ものだなと思います。2人の俳優としての覚悟が感じられて、自分は同い年の頃こんな風だったかな…と思うくらいしっかりしていて、頼もしい共演者でした。特に恒松さんの映画がもっと見たいです。お仕事を一緒にさせてもらってファンになりました。

 

松田:やっぱり概念を奪うことによって変化する人間模様はすごく面白いポイントなんじゃないかなと思います。初めて完成した作品を観た時、概念を奪われた人の佇まいに凄く想像力を掻き立てるものがあり、僕自身も楽しかったので、そういった人々の変化を楽しんでいただけたらと思います。

 

 

 

 

 

<ストーリー>

 

数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってきた。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海。夫・真治は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか…? その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発する。ジャーナリストの桜井は取材中、天野という謎の若者に出会い、二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。「地球を侵略しに来た」真治から衝撃の告白を受ける鳴海。当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<映画詳細>

 

原作:前川知大「散歩する侵略者」

 

監督:黒沢清    

 

脚本:田中幸子/黒沢清   

 

音楽:林祐介

 

出演:

 

長澤まさみ 松田龍平 高杉真宙 恒松祐里 

 

前田敦子 満島真之介 児嶋一哉 光石研 東出昌大 小泉今日子 笹野高史

 

長谷川博己

 

©2017「散歩する侵略者」製作委員会 

 

 

 

公式HP  :http://sanpo-movie.jp/

 

ツイッター :https://twitter.com/@sanpo_movie  #散歩する侵略者

 

Facebook :https://www.facebook.com/sanpomovie/

 

 

 

ミッドランドスクエアシネマ他にて絶賛公開


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