エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス

2014/01/15

【インタビュー】銀杏BOYZ、9年ぶりとなる傑作アルバム『光のなかに立っていてね』完成!

現実と夢の対比。その両極を描くことで、

真ん中にあるもの浮かび上がらせたかった。


 

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前作から9年。フロントマンの峯田和伸以外のメンバーが脱退するという壮絶な長期レコーディングを経て、銀杏BOYZの新作アルバム『光のなかに立っていてね』とライブリミックスアルバム『BEACH』が完成した。ノイズの彼方に峯田が見たものとは――。

 


【interview】

 

――まずは長期間の制作をくぐり抜けたアルバムの完成おめでとうございます。

 

「ありがとうございます。やっと終えたなっていう実感はまだないんですけど、レコーディングが終わってからリリースされるまでの期間は、“あぁ、もう世に出るんだなぁ”っていうワクワクと“出てしまうんだなぁ”っていう寂しさが押し寄せてきて、たまらないです。マイブラ(マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン)のケヴィン・シールズが長期間のレコーディング中に彼女と破局して、完成したアルバム・タイトルを『Loveless』にしたっていう話がありますけど、僕の場合、アルバムが完成した時にはメンバーが誰もいなくなってしまった。ただ作業を粘った分、音には反映されているのでそれはよかったと思うんですけどね」

 

――制作はどのように進行したんですか?

 

「『BEACH』は曲を聴かせたいというよりも、ライヴハウスに入ってお客さんがぎゅーっと揉まれて、登場SEが鳴って、メンバーが現れるところからのライブ。終わって外に出てからも耳鳴りがずっと続く、そういう体験をパッケージにしたくてベースのアビちゃん(安孫子真哉)が中心となってがんばってくれました。そして『光のなかに立っていてね』に関しては、2007年に『光』っていうシングルを出したんですけど、その曲が核になるアルバムにしようという作品の大枠を決めたのが2009年ですね。それ以前の時期にも何曲か録っていたんですけど、結局今回の2枚には入りませんでしたし、アルバムにそぐわない曲は省いていった。レコーディング期間中にメンバーが病気になったり、なかなかメンバー4人がベストコンディションで作業することができなかった。まぁそれだけではないと思うんですけど…。制作工程に時間がかかってしまったんです」

 

――過去のライブ音源をリミックスした『BEACH』と新作アルバム『光のなかに立っていてね』ともに、全編で聴かれる多種多様なノイズ表現の追求に時間が掛かったんだろうなということは想像できました。

 

「このアルバムには、ギター・ノイズやパソコンで作るノイズなど、ノイズが何種類もあるんですけど、まず録ったものを寝かせて次の曲を録ってという作業の中で、作品を構成するパーツが埋まっていくと曲の在り方も変わっていく。例えば2009年に録ったものを2011年に聴いた時、“あの曲のノイズはもうちょっと上げよう”とか“このノイズはもうちょっとハウリングっぽい感じにしよう”ということになるんです。ただ、爆音での作業なので、没頭しているとみんな耳鳴りがあまりにひどくて、自分でも冷静に判断できないんですよ。だから3、4日何も聴かずに、その後で判断しようと。しかもそんなことをやっているうちに、ギター(ノイズ)を担当していたチン(中村)君と会ったら、“耳鳴りがして頭が痛い”と言って、ごはんも食べられない状態だった。最初は音のせいでそうなっていると思ったんですけど、検査したら腫瘍が発見されたり。そういうことが2011年くらいから続いて起こったんです」

 

――銀杏BOYZがノイズに傾倒していったきっかけというのは?

 

「オーストリアから出てきたエレクトロニック・ミュージックのフェネスですね。彼の『Endless Summer』というアルバムを聴いた時に、メロディをノイズで作るアプローチに衝撃を受けた。その時に自分が作っていた新曲にぴたっとハマったんです。そして震災も大きかったかもしれないですね。大きく揺れた後、しばらくしてテレビから流れてきた視聴者撮影による映像とテレビ局の定点カメラの映像に含まれていた“ゴーッ”ていう津波の音。それがどうにも頭から離れなくて、そこからノイズの研究を始めたんです。ただ、ノイズといってもそれはひとつのアイテムとしてのノイズではなく、その中にある声とかメロディ……銀杏BOYZの肝はそこにあると思うので、まずは声やメロディを用いてキャンバスにきれいなひまわりを描いて、それを最後にノイズで真っ黒に塗る、みたいな感じ。“なんで真っ黒に塗るんだ?”って思うかもしれないけど、そうやって描き出した真っ黒のキャンバスはただの黒いキャンバスとは違うんです。黒の中になんか黄色が見えたり、赤が見えたりとか、ただのひまわりの絵を見せるよりもそれを真っ黒にした悲しさだったり、直接的なメッセージよりもそれを奥に塗り込めた行為を感じて欲しかった。だから新曲の歌詞はどんどん抽象的になっていったし、メッセージ性よりも響きとかそういうものを重視していったんです」

 

――もうひとつ。銀杏BOYZはサンプリングや打ち込みにも傾倒していますよね。

 

「理由はふたつあって。ひとつは、僕たちはこれまで肉体的な音楽をやり続けてきたんですけど、ライブで怪我をしたりその後の疲労も含め、そうした表現の限界を感じていた。どこかでセーブしないと音楽どころじゃなくなるのかなって。だから非肉体的な音を2、3割盛り込んだ方がいいのかって思ったんです。もうひとつは、以前バンドサウンドで録った曲に対して、“この曲のよさを完全に活かすには、4つ打ちにした方がいいんだろうな”って思ったこと。そういうところから興味を持って。もちろん音楽を聴くという趣味としてテクノやヒップホップは聴いているんですけど、そういうものにしたいというより、日常生活で聴けるちゃちくて、しょっぱい音……ゲームセンターやパチンコで鳴っているようなサウンドを形にしたかったんです」

 

――これまでのバンドサウンドとノイズ、そしてサンプリングや打ち込みが渾然一体となった音楽世界を通じて、個人的には混沌とした世界のありようとピュアな精神性が感じました。

 

「それは現実と夢の対比なのかもしれないですね。自分に襲いかかってくるストレスやキツいものが現実にはある。それに対して夢というのは自分にとってマイナスな要素はない。でも現実をよく見てないと、夢が現れた時にそれが夢だと気付けない。だから夢を表現するためには、人が描いていないキツいところまで現実を描かなければならない、と。僕が本当に出したいのは、その真ん中にある部分。でもその真ん中の部分を出そうとすると、計算が入ってしまうけど、僕は計算ができないんです。だからその真ん中を出すためには現実と夢という相反する両脇を出してしまえば、真ん中に浮かぶものがあるんじゃないかなって思ったんです。僕がずっとバンドでやりたいのはそういうことなんです。うまくできたかはわからないんですけど、自分の中でやりたいことはある程度できた。次はその真ん中の部分だけでアルバムを1枚出したいですね」

 

――アルバムが完成したタイミングでメンバーの脱退が発表され、峯田君だけとなりました。レコーディングがそれだけ壮絶なものだったんだろうなと想像するしかないんですけど。今、どんなことを想ってますか?

 

「みんな一斉に辞めたんじゃなく、ひとりずつバタバタ倒れていって。ずっと一緒にやってきた仲間なので、もちろん寂しいですよ。ただ、あいつらのためにも俺が点を決めなきゃいけないし、一時期は終わらないかも、って思っていたアルバムがやっと出るのはうれしい。供養じゃないけど、ボツになった曲ややってくれたメンバーの気持ちも含めて、完成してよかった。ただひとつ悔やまれるのは、4人でゴールできなかったこと。いろんなアーティストがやっているように、最後のマスタリング作業を終えた後に飲み屋へ行って、“乾杯!”ってできなかったこと。今は会えないかもしれないけど、何歳になってもいいから、いつか4人だけで乾杯したいですね。そして音楽活動はソロになるとかそういうことはなく、固定メンバーをオーディションして銀杏BOYZはずっとやっていきます。せっかく作品をリリースするんだから、それを早くお客さんの目の前で発表したいし、作りたい作品もある。新しいメンバーと修業して、これまでの4人で作ってきた哲学を守りながらアイデンティティを固めて活動していきたいです」

 

Interview & Writing by Yu Onoda

 

 

■     プロフィール 

銀杏BOYZ(ぎんなんボーイズ)

前身バンド、GOING STEADYの解散を経て、’03年に峯田和伸(Vo.&G.)、チン中村(G.)、安孫子真哉(B.)、村井守(Dr.)で活動を開始。’13年末、長期に及んだ新作アルバム完成のタイミングで峯田以外のメンバーの脱退が発表された。

http://www.hatsukoi.biz/

 

 

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