エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス

2013/05/24

映画監督・木下惠介生誕100年記念映画『はじまりのみち』が6/1より公開!


『陸軍』(’44)、『二十四の瞳』(’54)、『喜びも悲しみも幾年月』(’57)、『楢山節考』(’58)などの名作を世に送り出してきた映画監督・木下惠介。人間のありのままの姿を肯定することを自らの作品の根幹に据え続けた、ヒューマニズムの名匠だ。

そんな木下監督の生誕100年記念映画『はじまりのみち』が公開される。メガホンを撮ったのは、日本屈指のアニメーション監督・原恵一。木下監督を敬愛してやまない原監督が今回初めて実写映画に挑戦。戦時下における若き日の木下監督の実話をもとに、普遍的な親子の情愛、さらには映画製作に賭けたひとりの青年の挫折と再生を、端正に描き出す。

 

第二次世界大戦中、脳溢血で倒れた母のたまを疎開させるために、惠介は兄・敏三と便利屋とともに、2台のリヤカーに母と身の回りの品を積んで山越えをしようと計画する。その当時の惠介は、監督した映画『陸軍』(’44)により軍部ににらまれ、松竹に辞表を提出したばかり。「これからは木下惠介から本名の木下正吉に戻る」と言い、何事もなかったかのように家族の前で振る舞い、母の面倒を見るのは自分の役目とばかりに尽くすが、母のたまは息子の胸の内に映画に対するあくなき情熱があることを承知していた。

 


それぞれに複雑な想いを抱え、リヤカーは出発。夜中に出発した一行は、闇の中、険しい山道を進んでいく。途中で雨に降られ、ぬかるんだ山道に四苦八苦しながらも、ただ進んでいく。原監督のカメラワークは端正で実直だ。ことさらドラマティックにあおることなく、ただありのままに映していく。それなのに、その姿に胸を締め付けられるような感覚を覚える。木下監督作品がそうだったように、本作には人間の強さや美しさだけではなく、醜さや弱さも映っているから。だからこそ観客は登場人物の苦難や葛藤を自分のことのように受け止め、噛みしめることができる。

 

主人公の惠介を静かな中に熱を秘めて演じた加瀬亮。決して出過ぎず、抜群のバランス感覚で物語を支えた兄役のユースケ・サンタマリアと便利屋役の濱田岳。役者陣の演技はそれぞれに素晴らしいが、母のたまを演じた田中裕子はやはり格別だ。言葉ではなく、その目が雄弁に物語る。さすがは名女優。その目が、その存在感が、物語に深みと説得力を与えている。

 



さらに、劇中で流れるさまざまな木下惠介作品も注目したい。とりわけ、惠介が松竹を一旦離れることになった『陸軍』。劇中で流れるのはクライマックスの一連のシーン。たまが惠介を思うように、この『陸軍』で描かれる母も、ただただ息子を想う。それは、いつの時代も変わらぬ母の愛だ。今の時代の私たちにとって、戦時下の日本は想像するしかない。だが、母の愛は共感できる。当時『陸軍』を観た多くの人々は、この母の姿を観て涙したと言う。きっと今の観客も、『陸軍』の母、そして惠介の母を観て涙するだろう。     


昭和と平成の観客が、こうして等しく涙を流せる素晴らしさ。映画の持つ大きな魅力を改めて教えてくれた木下監督、原監督に拍手を送りたい。

 

 

『はじまりのみち』

www.shochiku.co.jp/kinoshita/hajimarinomichi/

13年/日/96分  

監督・脚本:原恵一 

出演:加瀬 亮、田中裕子、濱田 岳、ユースケ・サンタマリア、他

※6/1(土)より全国公開

 

(C)2013「はじまりのみち」製作委員会



PR

FLYING POSTMAN PRESSは全国5都市で配布しています。