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2013/01/18

ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞! 旧東ドイツを舞台とした愛の物語『東ベルリンから来た女』公開


ベルリンの壁崩壊の9年前、’80年の旧東ドイツ。電車に揺られるひとりの女性の姿が映るところから、この映画は始まる。彼女はバルバラ(ニーナ・ホス)、美しき女医だ。全体的にどこか無機質な、無感情な印象を受けるが、その目を観た瞬間にハッと心を掴まれてしまう。“この女性には何かがある――”。ひと目見た者ならばそう感じずにはいられない、深い眼差し。その目に捉えられた瞬間から、彼女の一挙手一投足から目が離せなくなる。

 

旧東ドイツ、バルト海沿岸の田舎町の病院へと赴任してきたバルバラ。かつては、東ベルリンの大病院に勤務していたエリート医師がどうしてここに? 物語冒頭にちりばめられたヒントを追う内に、その答えは見えてくる。

例えば、バルバラの新しい上司となったアンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)は、彼女に聞かずとも彼女の自宅のある場所を知っていた。例えば、自宅まで怪しげな男がやって来ては、その男に執拗に尋問され、彼女は精神的に追い詰められていく。この辺りで観客は自然と思い至るだろう。彼女は西側の“スパイ”だと疑われているのではないか、と。

そのあまりにも緻密なプロットは、上質なミステリーの趣。だが、これはミステリーではなく愛のドラマだ。瀬戸際に立たされたひとりの女性の愛の物語だ。

 


もちろん、バルバラはスパイなどではない。恋人の住む西ドイツへの移住申請を行ったことから危険分子とみなされ、左遷された女性。つまりは、時代の奔流に押し流されてしまった、“ベルリンの壁”の被害者のひとりとも言うべき存在だ。常に秘密警察=シュタージによって監視されているため、彼女には気の休まる時はない。いつも猜疑心に苛まれ、さり気なく寄せられるアンドレのやさしさすらシュタージへの密告を疑い、はねのけてしまう。

 

説明的な台詞やシーンは一切ないのに、“伝わる”度合いは限りなく大きい。その大きなメッセージ性を支えているのは、ドイツの名匠クリスティアン・ペッツォルト監督の丁寧な演出、そしてなんといってもニーナ・ホスの演技だ。日本では知る人ぞ知るといった存在だが、本国ドイツでは演技派として名高いニーナ・ホス。深い絶望をまとわせたその身からは、瀬戸際に立っているからこその色香が濃厚に匂い立つ。静謐な佇まいの中にひとりの女性の愛と情熱、魂の叫びをものの見事に表現したニーナ・ホス。今後の世界的飛躍を予感させる。


 

西ドイツに住む恋人との危険な逢瀬の果てに、国外脱出を計画するバルバラだが、彼女を慕う患者への献身、そして誠実な態度を取り続けるアンドレの存在が、彼女を迷わせる。物語の最後、彼女の選んだ道に観る者は何を思うのか――? 衝撃の後に訪れる感動の余韻に、思う存分浸って欲しい。



『東ベルリンから来た女』

www.barbara.jp

’12年/独/105分  

監督・脚本:クリスティアン・ペッツォルト

出演:ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ライナー・ボック、他

※1/19(土)よりBunkamuraル・シネマ他にて全国順次公開

©SCHRAMM FILM / ZDF / ARTE 2012


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