エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス

2011/07/29

映画紹介『エッセンシャル・キリング』



【story】
アフガニスタンの荒野。偵察している米兵をバズーカーで狙撃したため、捕虜となったムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)。
激しい拷問を受けた後、護送車での移動中に事故が発生し、車から投げ出されたムハンマドは混乱に乗じて逃亡。
雪に閉ざされた深い森をさまよい続けるムハンマドが辿り着いた先とは…。




本作はポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキの最新監督作。’78年に『ザ・シャウト/さまよえる幻響』でカンヌ
国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、その才能が高く評価された。しかしその後映画の世界から長らく遠ざかり、
’08年に17年振りとなる監督作『アンナと過ごした日々』を発表。多くの映画ファンを歓喜させた。

そんなスコリモフスキが今回描くのは“逃亡する男”。米兵とムハンマドの関係性はテロ戦争を彷彿とさせるが、ムハ
ンマドがテロリストであるか否かは最後まで語られることはない。本作に政治的な色はなく、どの国に生まれても、ど
んな思想を持っていても変わらない、“人間の本能”をテーマにしている。

ムハンマドを演じるのは、『バッファロー’66』などが代表作にある俳優、ヴィンセント・ギャロ。生きるために強奪や殺
人を繰り返す男を、言葉を発することなく表情と動作だけで表現している。残虐的な役ながらも、死への恐怖や生き
ることへの渇望を繊細に演じ、観る者を共感すらさせてしまう。

また、大自然の風景も本作の魅力のひとつ。冒頭シーンの荒野から逃亡している深い雪山、辿り着いた川辺、すべ
てのシーンが絵画のような美しさで切り取られている。その一方で、自然の壮大さやダイナミックさを際立たせたカメラ
ワークで、ここで生き残ることが困難であるという絶望的な恐怖をも感じさせる。極限までシンプルにされた構成の中、
ギャロの演技と壮大な風景に見惚れてしまう映画だ。




『エッセンシャル・キリング』
www.eiganokuni.com/EK

’10年/ポーランド・ノルウェー・アイルランド・ハンガリー/83分
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:ヴィンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ、ザック・コーエン、イフタック・オフィア、他
※7/30(土)より全国順次公開




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