エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス

2011/07/08

映画紹介『いのちの子ども』



【story】
戦争の絶えないイスラエルとパレスチナ。対立を続ける両国に住む人たちが唯一、一緒に居ることができる場所がテル・アビブ郊外にある病院だ。そこに入院している生後4カ月半のパレスチナ人の赤ん坊・ムハマンドは、免疫不全を患い、骨髄移植手術をしなければ1歳までも生きられない状態。

病院に勤務するイスラエル人医師のソメフが、余命宣告をされたムハマンドを救うため、イスラエルのテレビ記者・エルダールに協力を求めたことから物語は始まる。手術に必要な55,000ドルを集めるため、エルダールはテレビ番組で寄付を呼びかける。やがて無事、寄付は集まったが、ムハンマドの手術にいたるまで、さまざまな困難が立ちはだかり…。





イスラエルの管理下で封鎖状態になり、紛争が絶えないパレスチナ自治区ガザ地区。その最前線で20年以上取材を続けてきた、イスラエル人テレビ記者、シェロミー・エルダールが初めて監督を務めるドキュメンタリー映画が公開される。本作は余命宣告されたムハマンドの姿を通して、今もなお続く紛争の悲壮さを映し出した意欲作だ。テレビ記者として培った経験を十分に活かし、紛争の爆撃シーンのリアリティを表現。また、登場人物の内面に寄り添い語られる物語は、劇映画以上にドラマチックな仕上がりとなっている。


エルダールが訴えるのは、”いのちの価値”について。“いのち”は当たり前のように価値があると思いがちだが、生きる国や場所が違えば考え方も異なることを伝えている。劇中でムハンマドの母親から語られるパレスチナ人にとっての“いのちの価値”は、平和な国・日本で育つ者からすれば衝撃的だ。死を恐れないどころか、死の意味すらないという宗教的思想から、殉教者(※自爆テロを行う者)になることが誇りなのだとムハンマドの母は語る。その民族のアイデンティティを見せつけられたエルダールは、必死で救おうとしているムハンマドの命が、数年後にはあっけなく失われてしまうのかと愕然としてしまう。


しかし物語が進むうちに見えてくるのは、一筋縄ではいかない、国として、民族として根が深い問題だ。それでも本作は、小さな命は民族や宗教を越えて守るべき存在であると揺るぎない意志を見せる。死が日常的となったやるせない世界で、小さな命に託した未来はひとすじの希望となり、この国の平和の可能性を感じさせてくれる。





【映画情報】
『いのちの子ども』



http://www.inochinokodomo.com/
´10年/米・イスラエル/90分

監督・撮影:シュロミー・エルダール
プロデューサー:エフード・ブライベルグ
出演:ラーイダ&ファウジー・アブー=ムスタファ―、ラズ・ソメフ医師、アモス・トーレン、
ナイーム・アブー=ムスタファー、サウサン・アブー=ムスタファー、他
※7/16(土)より全国順次公開





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