エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス

2011/06/24

映画紹介『蜂蜜』

© 2010 Kaplan Film Production & Heimatfilm GmbH + Co KG


6歳のユフス(ポラ・アルタシュ)は、森林に囲まれた山岳で両親と共に暮らしている。その森で、養蜂家の父親と過ごす

時間がユフスは大好きだ。ある日、森の蜂たちが忽然と姿を消し、父は蜂を探しに森の奥深くへと入って行くが、数日経

っても帰ってこない。そのことをきっかけに、ユフスは喋らなくなってしまった。母親はそんな彼を心配し、どうにかして話を

させようとするがユフスの口は閉ざされたまま。気丈に振る舞っていた母も次第に不安と哀しみに暮れていく。ユスフはそ

んな母を大っ嫌いなミルクを飲み、励まそうとする…。



第60回ベルリン国際映画祭での金熊賞をはじめ、数多くの映画賞を受賞した作品。監督のセミフ・カプランオールは、

デビューからわずか5作品で計40以上もの賞を受賞し、現代トルコ映画を代表する監督のひとりとなった。そんな監督

の自伝的要素を反映した“ユフス三部作”というものがある。

1作目の『卵』では成人して詩人になったユフスを、2作目の『ミルク』では高校を卒業したばかりのユフスを描いている。

そして完結編となる『蜂蜜』ではユフスの成長に大きく影響を与えたであろう、幼少期を過ごした町や森の風景と、家族

との関わり方を丁寧に紡いでいく。


6歳のユフスはとても内気。緊張すると吃音になってしまうことが、彼を自分の殻に閉じ込めてしまう要因になっている。

そんなユフスの一番の理解者は父親だ。母親ともうまく喋れない彼は、父とだけ親密な会話を交わしていた。しかし父

親が戻ってこないことで、ユフスは彼なりに父の不在を補おうと、少しずつ成長する努力をする。本作は『卵』と『ミルク』

で語られたユフスという人間が、どのように形成され、何が彼の核になっているのかに迫った物語。ユフスが大人になっ

ていくのを観るうちに、自分の核となっているのは何なのかということを、観る者に考えさせる映画だ。


また、本作では神秘的な美しさに満ちた自然の映像も見どころに。「映像から受け取る感覚を大切にしている」という監

督のこだわりは本作でも活かされている。全編通して音楽はほとんど使用されず、木々や川の水、自然のすべての息

遣いを繊細に捉えた映像は観る者の五感を刺激し、その匂いや手触りまでもが伝わってくるよう。映像が見せるどこま

でも美しく詩的な風景に心酔したい一作。


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『蜂蜜』





http://www.alcine-terran.com/honey/

´10年/トルコ/103分

監督:セミフ・カブランオール

出演:ポラ・アルタシュ、エルダル・ヘンクチオール、トゥリン・オセン、他

※7/2(土)より全国順次公開




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