エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 関西版

2018/10/19

【インタビュー:髭】デビュー15周年を迎えたロックバンド、髭が時流に乗らずに生き続けるワケとは

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――デビュー15周年、おめでとうございます!“ストロベリー・アニバーサリー”というのがとっても良いですね。

 

須藤寿(以下、同)「2017年の暮れに、15周年は大きく活動しようということで、何かスローガンを掲げようって思いついた言葉が“ストロベリー・アニバーサリー”。2018年を“ストロベリー・アニバーサリー”として、ツアーをまず決めて、次に音源を作ろうということになった時に、アルバムタイトルは“ストロベリー・アニバーサリー”しかないなと思ったんです」

 

――発想元は、髭のルーツにもあるビートルズにも由来して?

 

「いやいや(笑)、もう本当に、“15”か…、“イチゴ”か…ということだけで。ジョン・レノンが『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』を歌ってるっていうのも後から気づいたんです。髭はもともと、キーワードから歌詞が膨らんだりするバンドだから、そういうのと似てます。言葉遊びです」

 

――そういう発想が須藤さんらしいし髭らしいですね。イチゴをモチーフにしたこのジャケットのアートワークもいいですね!

 

「そう、“ストロベリー・アニバーサリー”という言葉が決まった時に、こんな絵が見えたんで。とりあえず、イチゴを買ってきて。あとは自宅にあった小物を加えてカラフルにしようと思ったんです」

 

――いろいろと想像力を膨らませられるアイテムになっていて、毎回、ジャケットもこだわってますよね。

 

「うん。好きなんです! 音源作る時もジャケット作る時も単純に、何かモノを作ってるのが楽しくなっちゃってる(笑)」

 

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――アルバムの楽曲はどんな風に制作されましたか?

 

「今回は、大きく分けるとふたつのセッションに分かれています。ファーストセッションは、アルバムの全体像を考えずに思いついた曲を書いていって、それをレコーディングしたんです。それがアルバムの後半に入っている5曲目『エビバデハピ  エビバデハピ』から、6、7、8、9曲目。それで、まったく脈絡のない5曲が揃っちゃったなってことで、アルバムとしてもう少しまとまったものにしようと思って、セカンドセッションでは、それ以外の5曲をレコーディングして、全10曲になったんです」

 

――なるほど。1曲目の『Play Limbo』とラストの『STRAWBERRY ANNIVERSARY』は、アルバムの構成を考えて、始まりと終わりの曲に相応しいものとして作られたんですか?

 

「そこまでは考えてなかったけど、15周年の髭として何をしたいのかということで、例えば、宮川(トモユキ)が言ってたのは、髭らしくラウドなギターサウンドが鳴るようなみんなが想像する“髭ちゃん”というものがあるとしたら、そういうものを意識して作曲しよう、と。それをレコーディングしていったのがセカンドセッションなんです。だから、2曲目『アップデートの嵐だよ!』や3曲目『スライムクエスト』はそういったメンバー同士の話し合いの中からフィードバックされたソングライティングになってると思います」

 

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――全10曲の中では、先行配信曲の『きみの世界に花束を』がちょっと異色ですね。大瀧詠一やフィル・スペクターを彷彿とさせるアレンジになっていて…

 

「大瀧詠一やフィル・スペクターはどっちも大好きだけど、自然に自分の中に入っちゃってるものだからね。こういう曲は少しオーケストレーションっぽく聞こえた方がいいなと思ったんだけど、あんまりいろんな音を入れるのはやめようと。よりバンドに戻って、メンバーだけで出せる音を出していこうっていう前作『すげーすげー』からの流れを汲んでるんです。アレンジも全部ギターを重ねて入れました。それで結果的に弦のオーケストレーションみたいになってるんです」

 

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――ラストの『STRAWBERRY ANNIVERSARY』のリリックに、「これでお終い おしまい」「恋人は離ればなれ」「少しセンチメンタル」というフレーズが耳に残って。アルバムを聴き終わった時、ちょっと物悲しさも感じました。

 

「うーん…、『STRAWBERRY ANNIVERSARY』の「これでお終い おしまい」って言ってる言葉が、マイナー感ある曲調にハマっちゃって、そう感じるのかも。他にも『きみの世界に花束を』とか、『Play Limbo』の遅いBメロ展開とかは、ちょっと悲しさを帯びてるのかな。まーそれが、自分たちの今のフィーリングなのかもしれないです。決してバンドを解散しようとしてこのアルバムを作ったわけではないから」

 

――今の須藤さんや髭の曲が物悲しさを帯びてしまう要因は何だと思います?

 

「やっぱ自分のプライベートな体験もあると思うし、15周年の総括として出会いと別れみたいなことが影響してるんじゃないですかね?」

 

――それもあると思いますし、髭のフロントマンである須藤さんは、もともと一筋縄ではいかない人物で、単に享楽的にロックを楽しんでいるわけではないように思うんです。そういう須藤さんの内側にあるものにファンは魅かれるんじゃないかな?

 

「僕の場合、ひとつの感情をストレートに吐き出すことができないんですよ、恥ずかしくなって。それをいろいろ自分流に、なんとも言えない悲しい気持ちとかをオブラートに包むように書こうとすると、“髭は煙に巻いてるようだ”って言われるフィーリングになっていくのかもしれない。(悲しい気持ちがあっても)まんま悲しんだ…って書くのはちょっと苦手なんですよね。今作では、『きみの世界に花束を』とかも、センチメンタルな部分はとってもあると思うんですけど、ちょっと泣き笑いみたいなところに持って行きたくなる。ひとつの感情にフォーカスしてバランスを崩した情感というのが僕は恥ずかしいんですよ」

 

――感情的になりすぎないように客観視してるんですね。

 

「うん。俯瞰してるとまではいかないけど、そういうバランスを取りたがる習性が歌詞にも出てると思います。センチメンタルになりすぎると思うと、一個違う言葉を挟んでみたり。そうすることで冷静を保とうとしてる感じがします」

 

――そんな須藤さんの独特のボーカルスタイルも髭にとって大切な魅力であり、武器だと思います。

 

「僕も、自分の声はみんなから褒められるんで、そろそろ、良い声なんだろうなって認めてるんですけど(笑)。でも、全くケアもしないし、フィーリングでやってるんですけどね。僕の人生は全部そう」

 

――元からハスキーな声質だったんですか?

 

「子供の時に、ハスキーな子たちだけが行く耳鼻科に通ってました。そこに通ってる子は、だいたい中学生までにポリープを取ってハスキーな声を直そうとするんですけど、先生から“須藤くんは取らなくていいよ”って言われたんです」

 

――それが今となっては功を奏したんですね。その声質だからこそ、尖った感情も、悲しみも効果的に表現できるんですよね。

 

「ああ、確かに。ラッキーですよね。(ハスキーな人は)高音を出す時、ブーストしますもんね。自然に歪んだ感じでディストーションがかかったようになって。そういうのはジョン・レノンとか、カート・コバーンもそうだし。どっちもハスキーの系譜ですよね」

 

――ジョン・レノンやカート・コバーンと同じ系譜の声質だっていうのは意識していたんですか?

 

「それは大人になってからわかりました。10代の時はわからなかったけど、聴いてるうちにわかってきて、ジョン・レノンが歌う『ツイスト・アンド・シャウト』とかは、僕のトップの時と同じ声だなって」

 

――その須藤さんの声質とも相まって、今回の『Play Limbo』でも、後半ちょっと物悲しい雰囲気が出てるところで効果を発揮しているなと思います。

 

「この曲は、Aメロの速いところが斉藤(祐樹)で、ゆっくりなところが僕の作風です。それをミックスさせてるんです」

 

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――歌詞の面では、『きみの世界に花束を』は深い愛を感じるようなとてもシリアスな雰囲気ですが、髭らしいナンセンスが炸裂しているものやシニカルなものもあって。『アップデートの嵐だよ!』の中の、「ダウングレード 任せたよ」とか(笑)。世の中の逆を突いてますよね。

 

「僕、アップグレードしないんですよ。昔のバージョンで使えるから。だから、スタッフさんから最新のイラストレーターでデータが来ても開けられなくて、“ダウングレードしてね”って頼んでるんです。要するに、僕は実話に基づく怒りしかロックにしてないんですよ。“アップデートしてんじゃねーよ!”っていう“怒り”(笑)。そういう沸々とした怒り。僕はそれをロックにしようと思ってる」

 

――『スライムクエスト』なんかもそうですか?

 

「“モンスター倒して 何になった? 経験値積もう!”ってなかなかシニカルですよね(笑)。まー、僕はドラクエ、ファースト世代ですっごいゲーム好きなんだけど。今はもう、やんないかな…。ロールプレイングゲーム(RPG)はバカでもクリアできるじゃん、想像力いらないなと思って。そう思ったらいつの間にかできなくなった。時間の無駄だなと…」

 

――『ヘイトスピーチ』のフレーズも頭に残ります。

 

「そうそう、これは最初“ヘイトスピーチ”という言葉の連呼だけが浮かんでいて。僕が歌詞を書く時のルールとして、はじめに浮かんだキーワード、センテンスは絶対に外さないようにしてるんです。“ヘイトスピーチ”ってキワドイ言葉じゃないですか。自分の中にポリティカルな意思がないのであれば、そんなこと言う必要もないけど、他の言葉で代用がきかなくて。最初のインスピレーションを信じて、歌詞は肉づけしていきます」

 

――これも元になっているのは、何かに対する“怒り”なんですか?

 

「まー、テレビ観てるうちに、“ヘイトスピーチ”という言葉がいつの間にかインプットされてて。民族間の問題だけじゃなくて、日常的に、“僕と君”の間でも“ヘイトスピーチ”は起こり得るわけで。SNS上でも。そういうちっちゃな戦争はあるじゃないですか。そういうものに置き換えて書いてみようっていう感じでした」

 

――そういう一個一個のキーワードも含めて、爪痕が残るし、髭らしい快感があります。

 

「うん。そうですよね。薬にも毒にもならないこと書いててもどうしようもないかなと思っちゃうんですよね。人は何かを感じたいから、いろんなものを見たり聴いたりするんだろうから。自分も揺り動かしたいし、何かを感じてもらえるアーティストでありたいと思いますよね」

 

――それが、デビュー15周年を迎えた髭のひとつの確信でもあるんでしょうか?

 

「そう。だから開き直りとも言えるかもしれない。斉藤が、“今回のアルバムは抜けがいいね”って言ってたんです。確かに、迷いがないというのかな。それが抜けがいいという言葉に置き換えられるなと。斉藤が言いたかったのは、“髭の美学に沿ったとても良いアルバム”っていうことだと思うんです」

 

――近年、髭はひと回りぐらい下の世代のバンドとも交流していますが、それによって、何か変わってきたことはありますか?

 

「やっぱり彼らを見て感化されないわけはないから、何か変化はあると思います。ただ、今の話にもつがなるけど、やっぱり彼らはひと回り下で、世代が違うから、そのフィーリングを掴もうと思っても無理なんですよ。それを俺たちが無理にやると逆におっさんくさいと思っちゃうんです。僕らには僕らのマインドがあるわけだから、そこがブレなかったことが、さっき言った、“抜けの良さ”につながってると思う。感化されることはあっても、自分を見失ってない。それがこのアルバムのような気がする。時流には乗ってないから、そこはデメリットだと思うんですけど。もうブレなくなったという意味では、15周年を迎えて、髭が太いレールに乗った気がした。そういう抜けの良さだなと思いました」

 

――では最後に、このアルバムを引っ提げて開催される「STRAWBERRY ANNIVERSARY TOUR」に向けての意気込みをお願いします!

 

「この『STRAWBERRY ANNIVERSARY』と同日にベスト盤『STRAWBERRY TIMES(Berry Best of HiGE)』が出てるので、裏コンセプトとしては、髭のオールタイムベストといえるセットリストになると思います。だから新旧入り混じった選曲で、新曲はもちろん、旧の部分では、ああ、その髭もいたな、この髭もいたなっていう曲のオンパレードになるような最高のセットリストになると思います!」

 

――3時間ぐらいやっちゃいますか?

 

「それぐらいの気分ではいますよ(笑)。それぐらいみんなが満足するような、全国9カ所すべてで、大団円を迎えられるように持っていきます。ぜひみんなに観に来てほしいです!」

 

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【Profile】

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髭(ひげ)

須藤寿(Vo.&G.)、斉藤祐樹(G.)、宮川トモユキ(B)、佐藤“コテイスイ”康一(Dr.&Per.)、の4人によるロックバンド。’03年ミニアルバム『LOVE LOVE LOVE』でデビュー。’04年に「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演を果たし、’05年『Thank you,Beatles!』でメジャーシーンに躍り出た。以来、サイケデリックかつロマンチックな髭ワールドで、シーンを魅了し続けている。’18年はデビュー15周年を迎え、9月26日にニューアルバム『STRAWBERRY ANNIVERSARY』を、同時にビクター・エンタテインメント在籍時のオールタイムベスト『STRAWBERRY TIMES(Berry Best of HiGE)』をリリース。10月20日よりライブツアー「STRAWBERRY ANNIVERSARY TOUR」を開催。

 

Interview & Writing by エイミー野中

 

【CD Information】
new album
『STRAWBERRY ANNIVERSARY』

Print

1. Play Limbo
2. アップデートの嵐だよ!
3. スライムクエスト
4. きみの世界に花束を
5. エビバデハピ エビバデハピ
6. a fact of life
7. 得意な顔
8. KISS KISS My Lips
9. ヘイトスピーチ
10. STRAWBERRY ANNIVERSARY
XQLX-1006
¥2,700(tax out)
※now on sale

 

best album
『STRAWBERRY TIMES (Berry Best of HiGE)』

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 1. 髭は赤、ベートーヴェンは黒(2005)
2. ダーティーな世界(Put your head)︎(2005)
3. ブラッディ・マリー、気をつけろ! (2005)
4. ロックンロールと五人の囚人(2006)
5. せってん(2006)
6. ボニー&クライド(2007)︎
7. ドーナツに死す(2007)
8. 黒にそめろ(2007)
9. 溺れる猿が藁をもつかむ (2007)
10. 夢でさよなら (2008)
11. 髭よさらば(2008)
12. D.I.Y.H.i.G.E. (2009)
13. テキーラ!テキーラ!(2010)
14. サンシャイン(2010)
15. 青空(2010)

 

Standard Edition
VICL-65057
¥2,315(tax out)

 

【Live Information】
「STRAWBERRY ANNIVERSARY TOUR」
10/27(土) 神戸 VARIT.
10/28(日) 京都 磔磔
11/17(土) 梅田 CLUB QUATTRO

 

オフィシャルHP:http://www.higerock.com/

 


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