エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 関西版

2017/06/19

【インタビュー:髭】新作『すげーすげー』を引っさげ絶賛ツアー中!髭のフロントマン、須藤寿が明かすバンドの美学とは?

髭ジャケ写

 

キャッチ

リード

 

 

―― 今回のアルバム『すげーすげー』、まず紙ジャケが良いですね。アナログ感があって。

 

「ちょっとカルチャーを感じるようにしたくて、レコード屋でも古着屋さんでも良いんだけど、5人がそこで買い物してるような絵にしてもらいました。ジャケットのイラストはバニー・ビスーっていうイギリス人の女性に描いてもらったんです。東京在住なのでちゃんと会って話しもできたんです。作品集を見せてもらったんですけど、髭だったらまた違う風合いになりそうだなと思ってお願いしました」

 

―― 須藤さん的には特にどんなところが気に入ったんですか?

 

「今回、『すげーすげー』っていう日本語のタイトルが決まってたから、あえて逆輸入的な絵にした方が中和されるかなと思って。外国の人に僕たちを描いてもらったらエキゾチックなジャケットになるのかなと思ったんです。日本人と海外の人では人間の描き方がちょっと違うんですよね。(*ここで、日本と海外の子供では、人を描くと目の大きさが違うと指摘しつつ、それを実際に描きながら教えてくれる)。そういう点で、バニー・ビスーが日本人を描くとやっぱりこの顔になるんだなって(笑)(*今回のジャケットを指しながら)」

 

―― ジャケットがアナログ感があるという話に繋がるかなと思いますが、今作はギターサウンド回帰というか、ちょっと懐かしいサウンド感ですよね。そのあたりは意識されましたか?

 

「単純に色々考えなくなったんだと思うんですけどね。アルバム作る時にこんな風にしてみよう、あんな風にしてみようっていう野心みたいなやつがなくなってきて。出来た曲録っちゃえばいいんじゃないの?みたいな。結構楽な感じだと思うんですけど」

 

―― 肩の力を抜いて?

 

「肩の力を抜いてリラックス感を見せようとしたわけじゃないんですけど、肩肘張らないとこんな感じなのかな、みたいな。一生懸命はやってましたよ、結構。ラフに作ったわけではなく」

 

―― 原点回帰のようなギターサウンドになっていったというのは、振り返ってみて何がそのようにさせたと思いますか?

 

「前作『ねむらない』っていうアルバムは、ドラマーが抜けて初めてのアルバムだったので。どうしても自宅作業になって、デスクトップ上でデモを作り上げて、それをメンバーにデータで渡すっていうやり方になっていったんです。音源はデモの段階でほぼ出来ちゃってるから、あとスタジオでは残りの2,3割ぐらいしかやることがなくて。他のみんながアレンジでアイデアを出し合う隙間が少なくなってたんです。テクノロジーの進化によって1人1人の頭の中を表現しやすくなったっていうのはいいんですけど、バンドだから、足し算であるべきで。少なくとも髭の場合は、初めて知り合った時にはデスクトップ上の便利なアプリケーションはなかったから。みんなでリハスタに集まって、それぞれの個性をペイントするようにぶつけ合ってアレンジしてったわけだから。前作はテクノロジーの進化で、メンバー同士が会わなくてもある程度出来上がった状態だったんだけど。髭がずっとそういうやり方でやってもつまんないから。今回はAメロBメロCメロが出来た状態で、僕が詰めすぎないでみんなに見せたんです。少なくともギターをアンプに繋いでる状態でみんなに会ってるんで、ギターサウンドがより顕著になってるんだと思うんです」

 

―― 須藤さんが髭のバンド感をもう一度出したくなったという、そもそものモチベーションはどこから?

 

「髭ってそもそもそっちだったよね、っていうこと。フィリポ(元ドラマー)の脱退が2014年ぐらいで、今2017年だから。俺たちもこの体制に慣れ始めたんで、そろそろシンプルに通常運転に戻しても良いのかなと思って。そうなれたのは、サポートドラマー(佐藤謙介)の役目が大きかったと思いますね。サポートドラマーと言いつつもほぼ一緒に5人でアレンジしたようなものなんで」

 

―― ジャケットも5人ですもんね。

 

「そうですね」

 

―― 前作の『ねむらない』という作品は比較的静かな印象で、“髭ってこんなアルバムを作るんだ”という驚きがあって。

 

「あのアルバムは特殊ですよね」

 

―― 今作では改めて初期を思い出させるような元気なバンド感が出ていて嬉しくもありました。

 

「色々イレギュラーな事が起こって、それを喰らってアルバムを作ったのが『ねむらない』。ある意味誠実だったと思うんですけど、そういった意味では禊(みそぎ)を終えて元に戻って来たっていう感じ。まぁ普通。かなり普通です、気持ちとしては」

 

―― 禊、っていうのがすごくシリアスな言葉だと思いますが、やはりメンバーが1人抜けるということはそれぐらいの気持ちになるんですね。

 

「友達の部分とビジネスパートナーの部分があるから、フィリポの脱退についてはかなり複雑な気持ちでした。人間としては大好きだけど、このままやってていいのかなっていうのもあったし。それは多分お互いがね。そういうイレギュラーなことが終わって、今は歌が普通に戻って来たっていう感じ」

 

―― 髭は続いていくっていうことですよね。

 

「解散する意味ないかなと思って。他のバンドも。結局、再結成しちゃうし。もう“活動休止”も言わなくて良いのに、って思っちゃってるもん。アルバムなんてどうせ10年後に出しても良いわけだから。すごいコアなファンの人に向けてね、いつやるかやらないか分からないのに、何も言わないのは失礼かなっていう気持ちは分からなくはないんですけど。“1年活動休止します!”って、それ普通じゃん?って思う時ありますよね。それって多分、店じまいする時と復活する時は金になるから言ってるだけで。なんか俺、それは微妙だなぁと思って」

 

―― 髭はそんな手は使わないと?

 

「自分の美学としてはあんまりカッコよくないかなと思ってるんですけど、スタッフさんから“お金になる”って言われたら、“そうですかぁ”ってなる可能性は否定できないですよね(笑)。でもあんまりやりたくないですね。だって嘘ついてるみたいなんだもん。だったらアルバムなんて、12年ぶりに出すことも全然あるわけで。それでいいのかなって思ってるんですよね。“その間何してたんですか?”って聞かれて、“牛乳配達してて…”っていうのも結構アリかなと思ってるんですよね。“農業やってました”とか…」

 

―― そういうのがサラサラ出てくる須藤さんはやっぱり面白いですね(笑)

 

「『すげーすげー』とは全然違う話なんですけど。僕みたいに十何年くらい音楽で食べちゃった人は、“才能あるのにそもそもバンドで食べる気がない”っていうような今の20歳くらいのバンドマンと全然考え方が違うんで。そこらへんは絶対的に価値観が違うから、出てくる曲が違いますよね。自分が古いとかそういうわけじゃなくて、世代が違うから、全然違う事やってる気がする。彼らは音楽で食べるっていうことにしがみついてないんだろうなって…」

 

―― 須藤さんはしがみついてる方?

 

「だって(自分たちは)音楽で食べてたから。でも今はあんまりそこに固執しちゃうと音楽がつまらなくなりそうだなっていう気がしてきたというか…。自分自身がね。感動しなくなっちゃうから。そういう難しさはありますよね」

 

―― 音楽をやっていく上で?

 

「うん。そういった意味では、今回の髭は非常に竹を割ったようなアルバムになったのは、“らしいな”とは思うんですよね。『ねむらない』の方向性を進めることはできるんですよね。でもそうじゃなくて、“楽しくいこうよ”って感じ。そこの中に髭の精神性を…っていう話さえも普段はしないですけど。こういう場になれば、“難しいことやりたくない”っていうのが僕の答え」

 

―― 1曲1曲を作り込んだり、歌詞にメッセージを込めることはせずに?

 

「メッセージは込められてると思うんですけど、自分なりに。髭ってバンド名にもメッセージがないし、『すげーすげー』っていうタイトルにもメッセージがないから。そこから何かを感じ取れる人だけが髭のファンになってくれるんだろうから。非常に難しいバンドだなとは思うんですけど」

 

―― “無意味さ”を楽しむっていうこと?

 

「無意味さ…みたいなものに対するロマン。泣き笑いできる音楽が1番好きなんですよ。The Flaming Lipsの『Race For The Prize』みたいな。ハッピーな曲なのに泣けてきちゃうやつが好きなんです」

 

―― 二律背反っていう感じでしょうか?

 

「そうそう。でも例外的にサザンの『涙のキッス』みたいに悲しいじゃん、っていう名曲もあると思うんですけど。そういうのじゃなくて、二律背反する、感情的には楽しいのに、なんか泣けるなこの曲…みたいなのが僕のやりたい事だと思うんですよ。だから、“拳を振り上げて怒りをぶつける”っていうのがむず痒いタイプなんですよ。泣きたい時にマイナーな曲聴いてどうすんだよ、っていう。例外的にマイナーマイナーで哀愁漂う曲も大好きなんですけど。中途半端なことやるんだったら、『すげーすげー』を聴いて、“ふっと一瞬、グッときた”みたいなものが、たぶん僕の美学。それが『すげーすげー』だと思うんですよね。一生懸命やったかと言われれば、もちろん一生懸命やったんですけど。“もう3ヵ月間誰とも喋れなくなっちゃって…”みたいな嘘はつきたくないんで。わりとすかしてるんですよね、俺って…」

 

―― 須藤さんのそういうところが好きな人はすごく好きなんですよね。

 

「なんかフラットな人が好きなんですよ。僕、オフィスで働いたことないですけど、朝来て、“機嫌悪そうだな〜”じゃなくて、いつ見てもこの人はこのままだな、みたいな人が僕はわりと好きなんで。それが自分の音楽でやりたいと思うんですよ。そういう人に私はなりたいって感じ。俺の音楽がね。何も言ってないようで、捉えようによってはバカだね、とか。でもちょっと悲しいね、とか。というものであったらいいなって。つまりそれはいつでも聴けるっていうことだから。そうなったらいいのかなとは思いますけど」

 

―― 感情的でもそれをストレートに出してるというわけではないんですね。

 

「ないですね。だけど、間奏にいく時に、ふっと一言だけ自分のほんとのことを一行だけ言っとこうかな、とか。すぐ次の曲は全然違うこと書いちゃう、とか。そういう感じなのかな」

 

―― 歌詞もそうだし曲の並びもそうですよね。

 

「うんうん。今回ちょっと狙ってないですけどバラエティに富みすぎちゃって、並べるのが難しかったです」

 

―― こういう並びの中で聴くメロディアスで切ない『スターマイン』はさらにグッときました。花火の華やかさと儚さをこの曲に感じて。

 

「並びで聴いた時の妙はありますよね」

 

―― すごくアグレッシブに振り切る曲もあれば、無意味さの極致みたいな曲もあるし、『スターマイン』とか『あうん』『U4』なんかはセンチな感じですよね。

 

「『あうん』とかは最後の方に出来たから、ソングライティングの面では多少バランスとったかも。あまりにもこのアルバムの良心がないなと思って。ずっとふざけてるみたいな…そりゃちょっとダメだろって。軽くなり過ぎちゃうなと思って。そういった意味でも『あうん』は、ちゃんと自分の良心みたいなものは書いておこうかなと」

 

―― 私的な思いが入ってる?

 

「そうかもしれない。曲につられるっていうのもあるんですけど」

 

―― キュンとくるポイントの1つですよね。

 

「ありがとうございます」

 

―― すでに今作のツアーはスタートしていますが、どのような雰囲気ですか?

 

「京都と神戸はすっごい盛り上がりましたよ。すげえ良かった。ツアーの初日が磔磔でした。今回のようにアルバムリリースから2・3日後にツアーしたのって初めてなんですよね。普通1ヵ月くらいあけてたんですよ、リリースとツアーを。俺たちも始まったばっかりで、フロアも『すげーすげー』を聴いてすぐに来て、お互い知り尽くしてない中でやるツアーって初めてなんで、勢いが出てて面白いなと思います」

 

―― ツアーではまた違った曲の並びになりそう?

 

「もちろんそうですね。『すげーすげー』をメインに据えながらも、ツアーは『ねむらない』よりも初期の曲の方が合ってきますね。サウンドメイクが近いから、セットリストもわりと昔の曲とかを組み込んでいって。定番のものもあれば、よく見に来てくれるファンのみんなが聴きたいんだけどなかなか聴けないような曲を、わりと優先して入れるようにしてます。髭のライブは勢いでいっちゃってるところもいっぱいあるから。曲知らなくてもある程度楽しめる気がしてて。そういった意味では知らなくても流れで面白いな、みたいなのもあるから。飽きたからあれやろうとか、ツアー中に曲順変えたりもするだろうし。ファイナルの頃には今と違うかもしれないですね」

 

interview & Writing by Amy Nonaka

 

 

 

 

 

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髭(ヒゲ)

 

髭_新アー写

 

須藤寿(Vo,G)、斉藤祐樹(G)、宮川トモユキ(B)、佐藤“コテイスイ”康一(Dr,Per)、の4人によるロックバンド。2003年ミニアルバム『LOVE LOVE LOVE』でデビュー。2004年にFUJI ROCK FESTIVALに初出演を果たし、2005年『Thank you,Beatles!』でメジャー・シーンに躍り出た。以来、サイケデリックかつロマンチックな髭ワールドで、シーンを魅了し続けている。5/24(水)にニューアルバム『すげーすげー』をリリース。5/27(土)から『すげーツアー』を開催。

 

オフィシャルHP:http://www.higerock.com/

 

 

 

 

 

『すげーすげー』

 

髭ジャケ写

 

¥2,700 +tax

XQLX-1005

 

<収録曲>

01. もっとすげーすげー

02. ヘルシンキ

03. S.O.D.A.

04. TOMATO

05. スターマイン

06. CLASH! LAOCHU!

07. ユーは13?14?

08. DEVIL’S ODD EYE

09. あうん

10. U4

 

※now on sale

 

 

 

『すげーツアー』 TOUR

 

■福岡公演

6/24(土) CB         

OPEN 17:30 / START 18:00

前売 3,800円(D別) 当日 未定

スタンディング

Info: BEA  092-712-4221

 

■大阪公演

7/1(土) 梅田CLUB QUATTRO

OPEN 17:15 / START 18:00

前売 3,800円(D別) 当日 未定

スタンディング

Info: Greens  06-6882-1224

 

■愛知公演

 7/2(日) 名古屋CLUB QUATTRO

OPEN 17:15 / START 18:00

前売 3,800円(D別) 当日 未定

スタンディング

Info: JAILHOUSE  052-936-6041

 

■東京公演

7/8(土) 恵比寿LIQUIDROOM

OPEN 17:15 / START 18:00

前売 3,800円(D別) 当日 未定

スタンディング

Info: HOT STUFF PROMOTION  03-5720-9999

 

 

★『JOIN ALIV』に髭の出演が決定!

 

7/15(土),16(日)に北海道・いわみざわ公演にて開催される『JOIN ALIVE』に出演が決定!

*髭は7/15(土)、FUTURE FLOWERSのステージに出演します!

 

『JOIN ALIVE』オフィシャルHP ⇒ http://www.joinalive.jp/2017/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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