エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 関西版

2016/06/17

【インタビュー:Drop’s】ニューアルバム『DONUT』をリリースしたDrop’sの中心的ソングライター・中野ミホに迫る。

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キャッチ

リード

 

 

―― ニューアルバム『DONUT』、すごく聴き入ってしまいました。このアルバムはどのように制作されたんですか?

 

「前作は私以外のメンバーが作った曲もあったし、いろんなことを詰め込んだアルバムだったんですが、今回はもっと私のパーソナルな部分や素に近いものを、私が中心になって作る一枚にしたいねって、メンバーと話をして作っていきました」

 

―― そこまで中野さんのパーソナルな部分に焦点を当てて作られたアルバムは今回が初めて?

 

「そうですね。そういう風にしようと思って作ったのは初めてです」

 

―― それは何かきっかけがあって?

 

「映画『無伴奏』の主題歌になっている『どこかへ』という曲を書く時に監督さんが、“映画のことは気にしないで、中野さんが想うたった一人の人に向けたラヴソングを書いてほしい。その方がよりいろんな人に届くんじゃないかな”っておっしゃってくださったんです。そこで、そうかもしれないって気付いたというか…。確かに、個人的な日記みたいなものや、個人のことを書いた歌って、聴いてると自分のことのように思えたりするし、広く届くんじゃないかなって思って…。だったら今回はアルバムのバランスよりも、とことん私の今思ってることや、素直な部分を好きなようにやってみようって思いました」

 

―― 今作にはもう一曲、『月光』という曲も同名タイトルの映画の主題歌になっていますね。これは映画のストーリーを元に作られたんですか?

 

「そうです。監督さんから、“最後に少し光が見えるような曲にしてほしい”っていうお話しがあって。扱ってるテーマはけっこう重いんですけど、他人と関わっていこうとすることで、最後に光が見えるような歌にしたいなと思って作りました。程度の差はあっても誰でも辛いことはあると思うし…。でも、誰か他の人と関わろうとするエネルギーとか、自分から何か救いを見つけようっていうエネルギーってすごく力になると思って。劇中にピアノが出てくるので、ピアノで作り始めた曲なんです」

 

―― 『月光』ってベートーヴェンの曲にもありますね。イントロからちょっとクラシックな趣もあって。

 

「ドビュッシーの『月の光』はすごい好きです。ピアノの響きって、何か涙が出てくるような…、ピアノにしか出せないものだなって思います。私はトム・ウェイツが大好きなんですけど、昔の曲を聴いてると、ちょっとチューニングがずれてるようなピアノの音があって、そのピアノでしか出せないフレーズにすごく惹かれるんです。せっかくピアノを入れるんだったらそういう曲が作りたいと思って。シンプルにピアノで作りました」

 

―― アルバムの楽曲自体はいつ頃から書き始めたんですか?

 

「『月光』と『どこかへ』の2曲は、結構早い段階から書いていて、去年の春先頃ですね。『ドーナツ』は夏に出来て、それ以外は秋以降です」

 

―― そういう季節感も各楽曲に反映されてるように感じました。

 

「そうですね。ほんと、そのままの時期の(自分のことを)そのまま書いたので…。それはすごく出てると思います」

 

―― その『どこかへ』もそうだし、中野さんのボーカルも、ほんとに心からの想いが伝わってくるようです。

 

「歌い方も、力が入りすぎない方がいいなと思って。無理にガッと感情を込めるというより、すっと歌う方が(聞き手の中に)入ってくるんじゃないかなと思って。レコーディングの時も最初の方のテイクを採用しましたね」

 

―― 荒々しいボーカルが特徴的だった初期の頃に比べると、すごく自然に力が抜けているような曲が多かったです。レコーディングはリラックスしてできましたか?

 

「前までは全部録ってから曲順を決めてたんですけど、今回は曲順も最初に決めて。だいたいその通りの順番でレコーディングをしていきました。レコーディングの時の空気もすごく良かったですし、自分が素直に思うことを歌詞にして、それをそのまま歌うっていう感じだったので、自然な感じでできましたね」

 

―― 歌詞は詩的な表現があったり、すごく刺さってくるフレーズがあったりして、どれも耳に残ります。『どこかへ』は中野さん自身の好きな人に向けて書いたラヴソングということですが。『G.O.O.D.F.E.E.L.I.N.G.』の「続きは君のものさ〜♩」っていう言葉は、聞き手に向けて歌ってくれているようで、とても勇気付けられますよ。

 

「『G.O.O.D.F.E.E.L.I.N.G.』は、お正月に一人でスタジオに入って作りました。何も考えずにエレキをガーッと鳴らした時に出てきたリフがすごく気持ちよくて。その時期、イマイアキノブさん(元The Birthday)のバンドのツアーに参加させてもらったことが自分にとってすごく刺激的だったので、そのことを書きました。その断片的な景色みたいな感じですね」

 

―― 王道的なメロディーで歌いたくなる『十二月』の歌詞は、1年が終わっていく時に感じる焦燥感のような想いに共感しました。この時はどういった心境だったんですか?

 

「なんか、いろんなことがありましたね…。人の気持ちもそうだし、街の風景も、毎日ちょっとずつ、絶対に変わっていって。それはどうしようもないことで、どうしてだろ?って…考えても絶対にわかんないけど、全部は過ぎ去っていくっていうことがとっても身に沁みてきて…」

 

―― でもその変わっていくことに抗わず、受けいれて、また新しい年を迎えようとしているようで…。

 

「そうですね…、抗ってもどうしようもないというか…。このアルバムを作り始める前から思ってたテーマとして、“変わっていく”っていうことがあって。変わっていくことはどこか切なかったり、どうしようもない、止められないって思ってて…。でも、それを否定するんじゃなくて、たとえ何にもない一日だったとしても、毎日は続いてくから…」

 

―― 『グッド・バイ』の中の、「ハッピーエンドだけがしあわせじゃない」という歌詞も心に残ります。この曲の背景にあるのは?

 

「うーん…、人って出会ったり別れたりするじゃないですか? 何かをやめて、そこは終わっても、その人はまだずっと続いていくので。その終わりが全部の終わりじゃないというか…。ハッピーエンドで丸く収まることだけが幸せじゃなくて。それがあるからまた次があって、前に進んでいくっていうか…」

 

―― それは、誰かとの悲しい別れだったり?

 

「そうですね、うん…」

 

―― こういう曲がラジオから流れてきた時、ちょっと救われそうな気がします。

 

「すごくうれしいです」

 

―― 今作の中には、“旅”っていうキーワードもよく出てきますね。

 

「はい、そうですね。毎日が旅っていう風にも思ったし。日々、色々あるけど、自分をどうにか肯定して、前に進んでいく、転がっていくっていうことが大きな意味での旅っていう感じがしたんです。だから、“ハッピーエンドだけがしあわせじゃない”っていう言葉にもつながってくっていうか…。旅は終わらないなって思います」

 

―― それが生きていくっていうことでもあって…。

 

「そうですね」

 

―― そんな風に内側にしっとり沁み込んでくる曲もあれば、『LONELY BABY DOLL』みたいな破茶滅茶ロックンロールもあって。「へたくそなエレキ・ギター、だけどイチゴ味」っていう歌詞がユニークで(笑)。

 

「(笑)これは、アルバムの中の遊びっていうか、そういう曲がほしいなって思って書きました。なんか、全部放り投げて破茶滅茶やりたいみたいな感じにしたくて」

 

―― アルバムタイトルが『DONUT』で、『ドーナツ』という曲も収録されているし、ジャケットも中野さんがドーナツを口にしている写真だったりして、“ドーナツ”というものがすごく象徴的だなって思いました。『ドーナツ』という曲自体は昨年夏に出来たとお話しされていましたが、このアイデアはどこから?

 

「これはもともと、弾き語りのライブ用に作った曲なので、がっつりテーマがあったわけではなくて。ふわふわした(とらえどころのない)気持ちというか…。私はもともと、世の中に対して何か言いたいことがあって音楽をやっているのではなくて、自分のことを記録しておきたいと思って音楽をやっているんですけど。結局はその時好きなものとか、誰かに影響されているんじゃないかと思った時があって…。本当の自分の中身ってなんなんだろうなって、空っぽなんじゃないかなって…。だけど、それは悪いことではないなと思ったし、それが甘くて穴が空いてるドーナツとリンクしたっていうか…。それでこの曲になりました」

 

―― すごい、ドーナツからそこまで考えるなんて…。

 

「(笑)甘いものが好きなんです」

 

―― でも、ドーナツを見て、“穴が空いてて、空っぽな”感じとか、そういう風に見てるところに中野さん独特の世界観が感じられます。

 

「そうですね…、ロックバンドでカッコつけてやるぜ!っていう感じよりは、今生きてる22歳の女子として、思ったそのままな感じですね」

 

―― レコードのことをドーナツ盤っていうから、そういうアナログ感にも通じるワードですね。楽曲のサウンド自体もアナログ感があって。懐かしいような、詰め込みすぎてない音作りで。

 

「うん、ホントに詰め込みすぎず、音もよりシンプルに作りこみすぎないようにしました。特別なことはほとんどしてないですね。隙間がある曲が多いと思うんですけど、いい空気感かなって思います」

 

―― Drop’sは鍵盤も入ってるし、5人のメンバーが出す音色が合わさることで、シンプルではあっても単調ではないですよね。フォーキーな音色も感じられて、70年代的な空気感も漂ってきます。

 

「アコギなものっていうのも(今作の)テーマでした。前からすごく好きだったアコギを去年買ったので、今までよりアコギで作った曲が結構多くて。アコギだと部屋で一人で弾きながら曲が作れるので、より素の部分に近いフォーキーな曲がいっぱいできてよかったなと思います」

 

―― ちなみに、中野さんのお気に入りのアコギってあるんですか?

 

「ギルドのアコギですね。トム・ウェイツが使ってたギターで、すごく柔らかくて大きい音が好きなんです。買った時、うれしくてずっと弾いてるうちにできたフレーズが『ダージリン』に入ってます。このギターはすごく気に入ってます」

 

―― 歌詞カードの中に写ってるメンバーの写真もそうだし、アルバム全体の世界観はロードムービーのような感じもします。

 

「ロードムービー好きですね。人それぞれに仕事があったり、生活があると思うんですけど。その中で歌詞のワンフレーズが引っかかって、それぞれの旅を感じてくれたらうれしいですね。歌詞も私が今思っていることが100%なので。ロックとかそういう外側の部分じゃなくて、内側に引っかかってほしいなって、今回は特に思いました。ホントに、生活の中でふとした時に聴いてもらって、“自分のことだ”って思えてもらえたらすごくうれしいですね」

 

―― 今作は中野さん自身に取ってどんな一枚になりましたか?

 

「シンプルに作ったし、私がやりたいと思うことをやったから、それが一枚にまとまった自信作になりました。やっぱり好きなようにやった方がいいなって思いましたね」

 

―― この新作を携えたツアー、“Drop’s 2016 TOUR 「DONUT JOURNEY」 “が、6月25日の大阪からスタートしますね。

 

「アルバムはけっこう私のパーソナルな部分にフォーカスしてますが、ライブではもっとメンバー各自のプレイが立ってきたらいいなと思います。今までバンドのライブでアコギは使ってこなかったんですけど、今回のツアーではアコギも使いたいなと思ってます。私は歌を歌うので、言葉をはっきり伝えたいと思うし、みんなも歌をすごく大事にしてくれてるから、そういう言葉がちゃんと伝わるライブになったらいいなって思いますね」

 

interview & Writing by Amy Nonaka

 

 

 

 

 

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Drop’s(ドロップス)

 

札幌在住、女子5人のロックバンド。2009年、同じ高校に入学し偶然出会った、中野ミホ (Vo&Gt)、荒谷朋美 (Gt)、小田満美子 (Ba)、石橋わか乃 (Key)、奥山レイカ (Dr) の5人でDrop’s を結成。 2013年9月、1stフルアルバム「DAWN SIGNALS」をリリースし、『第 6 回 CD SHOP 大賞 2014“北海道ブロック賞”』を受賞。“JOIN ALIVE” “WILD BUNCH FEST.”などの夏フェスへの出演を果たす。2014年5月、1st EP「コール・ミー」、7月には 2ndフルアルバム「HELLO」をリリース。8月全国ツアー“Drop’s「HELLO」TOUR 2014”( 全9公演 ) を開催、ワンマン公演を SOLD OUT させる。同年12月には2nd EP「さらば青春」をリリースし、キネマ倶楽部を初めとしたワンマン SHOWCASE TOUR を開催。年末ロックフェス“FM802 RADIO CRAZY”に初出演。2015年4月には3rd EP「未来」をリリース。7月には3rdフルアルバム「WINDOW」をリリースし、“ROCK IN JAPAN FESTIVAL2015” “RISING SUN ROCK FESTIVAL2015 in EZO”への出演も果たす。9月、Drop’s ONEMAN TOUR 2015「View from WINDOW」開催。2016年3月26日より全国公開の話題映画『無伴奏』主題歌、6月11日公開映画「月光」の主題歌を担当することを発表。3月にワンマンツアー 「Drop’s 2016 TOUR MARCH WITH ME」全4公演を終え、4月“ARABAKI ROCK FEST.16”への出演、5月25日4th FULL ALBUM「DONUT」をリリース。 『Drop’s 2016 TOUR “DONUT JOURNEY”』が、6月25日からスタート。

 

オフィシャルHP:http://drops-official.com/

 

 

 

 

 

 

 

『DONUT』

 

名称未設定-3

 

¥2,639 + 税

KICS-3386

 

<収録曲>

【1】G.O.O.D.F.E.E.L.I.N.G.

【2】CLOUD CITY

【3】十二月

【4】ダージリン

【5】誰も知らない

【6】ドーナツ

【7】LONELY BABY DOLL

【8】月光 (映画「月光」主題歌)

【9】グッド・バイ

【10】部屋とメリー・ゴーランド

【11】どこかへ (映画「無伴奏」主題歌)

【12】からっぽジャーニー

 

※5/25 on sale

 

 

 

 

Drop’s 2016 TOUR「DONUT JOURNEY」

 

■6/25(土)心斎橋Pangea 17:30/18:00

[L-code:55932]、[P-code:294-305]

Info:PLUMCHOWDER 06-6357-6969

 

■6/26(日)東京キネマ倶楽部 16:15/17:00

[L-code:75395]、[P-code:294-026]

Info:VINTAGE ROCK std. 03-3770-6900

 

■7/9(土)名古屋CLUB UPSET 17:30/18:00

[L-code:42420]、[P-code:294-023]

Info:JAILHOUSE 052-936-6041

 

[チケット]

Adv.¥3,000 [TAX IN/ドリンク代別]

DAY.¥3,500[TAX IN/ドリンク代別]

※小学生以下、保護者同伴の場合は無料

※未就学児童、入場不可

 

※now on sale

 

 

 

 

 

 

 

 


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