エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 関西版

2019/04/12

【インタビュー:植田真梨恵】インディーズから10年、メジャーデビュー5周年を迎えて、対になる2枚のミニアルバムに込められた思いを語る

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――2月にリリースされたミニアルバム『F.A.R.』と4月17日にリリースされる『W.A.H.』は対になっているんですね。

 

「そうですね。しっかりアートしているものを出したいなという気持ちで対になっているミニアルバムを出そうと思いました。インディーズの頃はコンセプチュアルなミニアルバムをリリースしていたので、そんな10代の時の原点に立ち返るという気持ちもありました。『F.A.R.』の方は最初に『FAR』という大切な曲があって、その曲れに合わせてコンセプトを決めて、他の曲を作っていきました」

 

――『FAR』という曲ができたきっかけは?

 

「プライベートな出来事ってわざわざ言うことではないと思うので難しいなと思うんですけど、2014年くらいに子どもの頃から住んでいた実家を引き払ったんです。その時にすごく心が揺れて、誰に聴かせるためでもなく、その時感じたことを曲にしたんです。リリースしようと思って作った曲ではなかったので、ずっと大切に持っていたんです。もともと、私は歌手になりたくて、そのために歌う歌を自分で作るようになって。10代の頃は、私がリアルに感じていることを曲として落とし込むことに意味があるなと思っていたんですけど、メジャーになるタイミングでより広い場所に向かって届けるには、曲の書き方を意識的に変えなきゃいけないんじゃないかと思ったんです。聴いた後に前を向けるような、ネガティブな作用だけで終わらない曲にしたいって。メジャーになってからはずっとそういう意識で書いていたんですが、ある時、昔の曲をマネージャーに聴いてもらったら、“これすごくいいですね”って言ってもらえて…。それが、『FAR』でした」

 

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――なるほど、そんなことがあったんですね。

 

「『F.A.R.』のテーマは“大人の成長”です。シンガーソングライターだからと言って特別なわけではなく、みなさんと同じように歳を重ねながら、歌を歌っているので。今の私が歌って、リアルな質感で曲を書いて届けるということにとても意味があるなと思っているし、そんな28歳の私がやりたい音楽として、“大人の成長”っていうテーマがしっくりきたんです。インディーズの頃から長いこと応援してくれているファンの方が多いんですよ。最初に出会った時は高校生でも、時間が経っていく中で成長して悩みの種類も変わってくるだろうし、私も同じように変化しながら進んでいる様を届けられたらいいなと思っています」

 

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――新しいミニアルバムの『W.A.H.』はどんなふうに制作されたんですか?

 

「コンセプトは“和”。関西に住んでるので“わ~”って(伸ばすように)言ったらいいかな(笑)。ジャポニズム、ジャパンの和です。アルバムに収録されている『勿忘にくちづけ』という曲を、昨年シングルでリリースしまして、この曲を歌うと、夏の暑い日にちょっと空気が涼しくなったりしたんですよ。それで、音楽によって空気の質感がガラッと変わるような、なるべくみなさんが心地よいと感じる音楽を届けたいなと強く思うようになったんです。心地よい時間、気持ちいい時間、心が爽やかになるような時間というものがアルバム1枚で届けられたらいいなと思って作りました」

 

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――ちなみに、『勿忘にくちづけ』というのは植田さんの故郷、久留米の伝統工芸・久留米絣(くるめがすり)のPR動画の主題歌として作られたそうですね。そういう伝統的なものとコンセプトの“和”というのが繋がるのかなと。

 

「まさにそうです。久留米絣は伝統工芸ですけど、今の若い方も身につけやすいカジュアルなものを作り続けているんです。伝統だからといって遠い存在ではなく、私たちの生活にしっかり密着しているものなので、そういう距離感の曲にしたかったんです。私たちが日々生きている中での和というか、現代の2019年のジャポニズムをやってみたいなという思いを込めたミニアルバムになっています」

 

――古風なスタイルではなく、現代の生活にフィットするような音楽にしたかったと?

 

「そうですね。植田真梨恵は本名なんです。普通に生きている歌が好きなだけのシンガーソングライターの私が届けるものは、嘘がなくて、なるべく自然に聴けるものにしたくて」

 

――収録されている曲はいつ頃作られたんですか?

 

「『勿忘にくちづけ』は一昨年で、『灯』という曲は私が出演させていただいた『トモシビ』という映画にあてて書いた曲だったのでこれも一昨年頃の曲ですね。『長い夜』はこの中で一番古い曲で、10代の終わり頃、19歳ぐらいに書いた曲です。一番新しいのは『Bloomin’』です。これは2月にできました」

 

――10年近く前の曲から最近できた曲まで、結構幅がありますね。

 

「そうですね。立ち位置を見つけるのに時間がかかったんですが、アルバムの導入になるのが『Bloomin’』という曲です。日本がテーマで春にリリースするアルバムだから、桜とか春の風物詩みたいなところをしっかり入れたくて。植田真梨恵として、どんな桜の曲をみなさんにお届けしようかなっていうところで悩みながら、でき上がった曲です」

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――個人的に、音数を絞ったミニマムなアレンジの『花鬘』っていう曲がとても印象的です。

 

「昨年の秋に弾き語りのツアーを回ったんですけど、アコギ一本でのツアーだったので、弾き語りでやるとすれば、こんな曲を持っていきたいなと思って作ったのが『花鬘』でした。『勿忘にくちづけ』も『花鬘』も私の中のジャンルは“和チル”なんですよ。アコギをメインに和のアルバムを作る上で意識していたのが“和チル”。ずっと一定のテンションでチルするというか、chill outのチルする感じが和であったらカッコいいと思って」

 

――“和チル”は植田さんの造語ですか?

 

「そうです(笑)。和チルな一枚にしたくて、その二大メインとなる大事な曲が『勿忘にくちづけ』と『花鬘』です」

 

――確かに日本的な感性が呼び覚まされるようです。ラストの『ひねもす』も心に残りました。

 

「嬉しいです。『ひねもす』は3、4年前に書いてたんですけど、特にリリースする気はなく、自分で持ってた曲でした。和チルなアルバムを作るのに、ちゃんと和のタイトルをつけてる曲書いてたやん! と思って発掘してきたんです」

 

――この曲で歌われているのはどんな感覚なんでしょう?

 

「朝方の、夜明けギリギリの時に部屋の中が青く照らされる感じを曲にしました。その時間帯の雰囲気とか色合いが好きで。この曲自体はとても好きなんですが、上手く説明できない曲だったりするので、聴き手のみなさんにお任せしたいです。ハッキリと結論付いたことを歌うのは苦手なのかもしれないですね。その情景を描写したり、心の動きを書き留めるように歌うのが好きで」

 

――冒頭の歌詞で、「なんだっていいのさ」っていうのは言い換えるとどういうこと?

 

「“なんでもいい”っていうことですね。“大丈夫”みたいな、(関西弁で)“なんでもええやん”みたいなことですね」

 

――ちょっと弱ってる時や悩んでる時に、“そんなことええやん”っていう感じですか?

 

「そうですね。投げやりに言ってるのではなくて、その前につく言葉があるとしたら、“生きてさえいれば”、“歌ってさえいれば”とか、そういう感じです」

 

――聴いてすぐに意味がわからなくても、しばらくして、その歌に込められた思いがふっとわかったりすることもあります。

 

「私もそんなことだらけです。自分で書いている時は、どうしてそんな言葉が出たのかわからなかったんですけど、何回も繰り返し歌っていくうちに、ああ、こういうことか…と思ったり。もしくは全然わからなくなったりすることもあるので。すごく不思議ですね。何かをコントロールすることは、音楽において不可能だなと感じていて…。メロディに対してこれしかないと思う歌詞でしか書いていないので」

 

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――サウンド面ではどんなところを意識しましたか?

 

「『F.A.R.』の方は乾いた印象にしていて、『W.A.H.』の方は雫がしとしとしずるような、ウエットな雰囲気にしたかったんです。ピアノの西村(広文)さんが私の曲に関わってくれると、曲がすごく濡れた感じになるんですよ。そういう感じは含ませたいなと思っていました。『Live of Lazward  Piano』で一緒に回っている方で、今回のアルバムでは沢山弾いていただきましたね。ギターという楽器で“和”を表現するのが難しかったんですが、ピアノという楽器で和を感じる和音というのが入った時に、一気に和が広がる感じがあったので、その感覚で作っていったところは大きいですね」

 

――この2枚のミニアルバムが完成して、今はどんな心境ですか?

 

「私はアートとか芸術というものが好きなので、何かを表現する者として等身大で皆さんに届けられるものができたなと。今までリリースしてきたどの曲よりも心に近い作品ができたなと思っているので。皆さんの日常に響いて、生活に密着してくれたらいいなと思っています」

 

――今年の9月に29歳になって、20代最後の一年が始まります。ひとつの節目を迎えて、シンガーソングライターとして何か確信されたことはありますか?

 

「私自身、20代の終わりで、音楽により身を預けていけるなと思っています。ずっと音楽をやっていきたいので、与えられている時間の中で全力で、いっぱい音楽を作ろう! って思ってます」

 

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――今回のテーマは“SPRIMG TIME”ということで、植田さんが春をイメージする音楽ってなんですか?

 

「春は絶対くるりを聴きますね。特に、『飴色の部屋』が入っているアルバム(『ジョゼと虎と魚たち』のサントラ)が聴きたいです。くるりの音楽って、優しいんだけど、ちょっとクレイジーなところもある気がして…、そこに春を感じるというか…」

 

――クレイジーっていうと、ちょっとドキッとする人もいるかもしれないけど、なんかわかる気がします。春って、日差しが暖かくなってハッピーなイメージもあるけど、春の嵐で天候が荒れたりするし、桜はあっというまに散ってしまったりして、何か儚さを感じたりもしますね。そういう日本的な季節感とか風土の中に、くるりが持つロックの激しさやクレイジーさがシンクロするのかもしれませんね。

 

「そうですね。あと春になるとサニーデイ・サービスとかも聴きたくなりますね。『青春狂走曲』のイメージが強いのかもしれないですけど。くるりもサニーデイもどちらも春っぽいですね」

 

――くるりやサニーデイは1990年代から活動しているバンドですが、その時代の音楽がお好きなんですか?

 

「90年代の曲がすごく好きですね。私自身はまだ小学校低学年頃だったんですけど。その頃流行ってた音楽がすっごく好きなことに、高校時代に気づきました」

 

interview & writing by エイミー野中

 

≪Profile≫
植田真梨恵 / うえだまりえ

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1990年生まれ。福岡県久留米市出身。中学3年生の時にGIZA studioが主催するコンテストで優勝し、中学卒業を機にGIZA studio本社のある大阪に来る。手探りで作詞作曲を始め、16歳から本格的な音楽制作活動をスタート。17歳の時に1stミニアルバム『退屈なコッペリア』をインディーズレーベルからリリース。’14年のメジャーデビューから5周年を迎える’19年、2月20日にミニアルバム『F.A.R.』、4月17日にミニアルバム『W.A.H.』をリリース。

 

≪CD Information≫
new mini album
『F.A.R.』
初回限定盤(CD+DVD)
2,500円 (tax out)
通常盤
1,800円 (tax out)
※now on sale

 

new mini album
『W.A.H.』 

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初回限定盤(CD+DVD)

2,500円 (tax out)

 

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通常盤

1,800円 (tax out)
※4/17 on sale

 

 

≪Live Information≫
‹植田真梨恵 LIVE TOUR 2019 [F.A.R. / W.A.H.]›
5/5(日)    宮城 darwin
5/11(土)   香川 高松MONSTER
5/19(日)  福岡 イムズホール
5/26(日)  愛知 クラブクアトロ
6/ 2(日)   北海道 KRAPS HALL
6/ 8(土)   広島 セカンド・クラッチ
6/16(日)   大阪 BIGCAT
6/23(日)   石川 金沢AZ
6/30(日)   東京 恵比寿 ザ・ガーデンホール

 

OFFICIAL WEBSITE

http://uedamarie.com/


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