エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス 関西版

2018/11/27

【インタビュー:太賀】映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』について主演の太賀が語る

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――今作の出演は、どのようなお気持ちで受けられたんですか?

 

「原作者の歌川たいじさんの実人生を元にした作品なので、これは生半可な気持ちではできないなって。歌川さんがその時感じていたこと、喜びも悲しみもひとつも取りこぼしたくない、全部ひっくるめて体現する気概がないとなかなかやれないなと思っていました」

 

――太賀さんが演じられたタイジと母親の光子とのやりとりはとても緊張感があり、激しくぶつかり合う壮絶な場面も出てきます。その中で、特に難しいと感じられたシーンは?

 

「僕自身、こんな壮絶な経験をしたことがないですし、それが実際に起こったことという重さもあり、どのシーンも気が抜けなかったです。その時の歌川さんの感情や思いを想像しながら、とにかく誠実に丁寧にやることが自分の仕事であり、何より僕自身がタイジを肯定することが重要だと思って演じていました」

 

――太賀さんにとってもやりがいのある役だったのでは?

 

「はい、とてもやりがいはありました。これほど真っ向から親と子が向き合う物語は今まで演じたことがなかったですし、感情の起伏も大きい役なので。なおかつ、原作者の歌川さんがゲイであることを公言しているので、それをどこまで表に出して演じるのか、クランクイン前に監督、プロデューサーさんとも、しっかり話し合いました。その上で、あえて表には出してはいないけど、やっぱり歌川たいじの話だからそういう男の子であるということを前提に演じることにしました」

 

――そうだったんですね。社会派な面もあり、とても考えさせられる映画です。

 

「そうですね、ネグレクトの問題、LGBTのこともありますけど、でもそれ以上に、“母と子のラブストーリー”っていうことを監督はずっとおっしゃっていました。脚本を読んだ時に、悲しい物語だと思いましたが、歌川さんの原作を読んでみると、とってもポップだし、タッチにやさしさと温かみがあって、これはただ悲しい物語ではなくて、悲しい出来事を乗り越える物語なんだなっていうことがよくわかるんです。本質はこっちにあって悲しいだけの話には絶対にしたくなかったんです。僕としてはもっと愛情深いことのほうを全面的に出したくて。それがスタッフ、キャストの総意だと思うし、僕自身はそういうふうに捉えています」

 

——愛のある映画だと?

 

「はい。監督自身も吉田羊さんが演じられたお母さんの光子を悪者にするつもりはなかったと思います。我が子につらくあたり、その行為は決して許されることではないですけど、この人もひとりの人間で、いろんな思いを抱えているということは切り捨てたくなかったんだと思うんです。キミツ(タイジを支える友人)の台詞で、「理解は気付いたほうがすべし」という言葉があるように、気付いたほうから寄り添ってあげるんだよって捉えていたんじゃないかな。ツラい親子なんだけど、その根底には愛があったということを監督は狙っていたんじゃないかと。僕自身もそのつもりで演じてましたし、どんなに争って母に罵詈雑言を浴びさせられようが、タイジの根底には恨みより、母に自分のことをわかってほしい、知ってほしいという欲求があったんじゃないかって思いますね」

 

――なるほど。そういうことは演じられる前から考えていたんですか?

 

「そうですね。ある程度は考えながら…。きっとこうだろうと思っていて、共演する役者さんとのやりとりの中でそれが確信に変わればいいなって思いながらやっていました。確信に変えていけばシーンが成立すると思っていました。事前に自分の中で決めすぎないで、いろんな共演者の方に引っ張ってもらって、いろんな引き出しを開けてもらって、自分なりのタイジになり得るかなと思っていました」

 

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――キミツ役の森崎ウィンさんたちと一緒に、ミュージカルのように歌い踊りながら演じられていた舞台のシーンはいかがでしたか?

 

「う〜ん、実はダンスに苦手意識があったので…、ちょっとしんどかったですね(笑)。最初の稽古の時に、そのフロア中に“僕の心が折れる音”が響き渡るというか…」

 

――えっ、それはどのような状況で?

 

「“パッキーン”って、それは誰が見ても、“あ、太賀心折れたね”みたいな瞬間があって。その時ウィンが、“大丈夫? 練習しようぜ!”って声を掛けてくれて。ウィンは歌も踊りもすごくできるんで、手取り足取り教えてもらったんです。“こうやったら踊りやすいんじゃない?”とか、“こういうときはこうしたほうがいいよ!”って、撮影の空き時間に一緒に練習に付き合ってくれたんです。そういう意味でもウィンがキミツでよかったなって思います」

 

――母親の光子を演じた吉田羊さんの演技は鬼気迫るほどでした。今作で吉田さんとの共演したことは、太賀さんにとってどのような体験でしたか?

 

「今まで3回ぐらい共演させてもらっていますが、今作のように親と子で、ここまで真剣に対峙する役は初めてだったし、うれしかったですね。本当にどうなるのか想像もつかなかったんですけど、いざ現場に入ってみると、羊さんと話すに話せないというか、何から話せばいいかわからない気持ちになったし、逆に言えば、たくさん会話する必要もないのかなと…、そういうモチベーションでした。羊さん自身も同じ心境だったそうで、撮影以外で必要以上のコミュニケーションを取ることはあまりなかったんです。だからこそ演じる上ではめちゃめちゃいい緊張感があり、最もいい状態で演じられた気がします。僕も毎カット真剣に臨んだし、羊さんもワンカットワンカット全力で演じてくれたので、僕自身引き出されることはたくさんありました。僕としては、“何かお母さんに(羊さんに)伝われ!”って気持ちでやってました」

 

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――太賀さんは、リアリティを求められる俳優さんというイメージがあります。ひとつひとつの表情にとても引きつけられるし、今作は観終わった後も、大賀さんが見せる喜怒哀楽のいろんな表情が脳裏に強く焼きつきました。

 

「うれしいです、ありがとうございます。僕自身もリアリティを持って演じることを大事にしてきたんですけど、今回は監督が、“普段の日常よりも10センチ上の世界観でいきたい”と言っていたので、そこの10センチを埋める作業が難しくて…」

 

――“10センチ上の世界観”っていうのは具体的にどう理解して?

 

「僕自身もどういうことなんだろう? って思いました。監督はシーンごとに、“もうちょっと、10センチ”っておっしゃっていたので、どうすればいいのか、監督とずっとディスカッションを繰り広げてたんです。監督は“躍動だ”とも言うし…。で、映画ができ上がってみて、やっとその10センチの意味がわかった気がしました。それはポップさだったり、明るさだったり…、そういうことが10センチだったような気がしました。タイジが、母親とのつらい出来事や悲しみを乗り越えるためにはその10センチが必要だったんだなっていうことを理解しました。その10センチ上げるっていう明るさがあったから、悲しみを乗り越える強さになったっていうか、それを監督は狙ってたんだなって。は〜、そうか…、監督の勝ちだって思いましたね」

 

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――そういえば、映画はタイジが楽しそうに歌いながらお料理するシーンから始まりますね。

 

「その冒頭の歌うところもそうだし、お母さんとのやりとりも撮影中に監督は、“ちょっとだけ浮かせる、乗せていく感じ、それをもっともっと”ってずっとおっしゃっていました。そうすることで、観る人の受け取り方や捉え方が変わってくると思うんですよ。その10センチで視野が広がるじゃないですけど、見やすさを狙ってたんじゃないかなって思いますね」

 

――確かに、胸が苦しくなるシーンもありますが、映像のトーンも含めて重いだけではない温かみも感じられました。

 

「監督は衣装にもこだわっていました。タイジは全編通して緑色の服を着ているんです。前半、タイジの心が凝り固まっている時は深い濃い緑。キミツや婆ちゃん(木野花)など周囲の人たちとの交流を通してタイジの心も変化し、母親とちゃんと向き合っていくことでタイジ自身が解放されていく。そんな後半の方の衣装はどんどんパステル色になっていくんです」

 

――映像においては、そういう色彩が与える感覚も大きいですね。太賀さんにとって、今作はどんな作品になりましたか。

 

「これまでの自分のキャリアの中でもいろんな題材の作品に出演してきましたけど、最初にお話ししたように、ここまで親と子を真っ向から描いた作品に出演したことはなかったと思うので、とても大事な作品になりました。やれる限りのことはやったと自負している渾身作なので、どうしても映画館で観てほしいですね。観ていただけたら、きっと何か伝わるような気がしています。ネグレクトという深刻な問題もあるけれど、それ以上にまず人には愛される権利と愛する権利があり、人と人が寄り添うことの大切さを少しでも感じて、持って帰ってもらえれば、この映画が生まれた意味があるなと思います」

 

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――今回演じているタイジと、現在オンエア中のテレビドラマ『今日から俺は!!』の役柄(今井勝俊)とはギャップがありすぎて、それも驚きです!

 

「笑っちゃいますよね〜。でも、両方とも自分と言えば自分だし、自分じゃないと言えば自分じゃないという感覚で…。う〜ん、でもやっぱ脚本と共演者と監督によって、おのずと(演技も)変わっていくし。そういうのも観てくれる方がおもしろがってくれたらいいかなと。いろんな役をやりたいとは思っているので。そこを楽しんでもらいたいですね」

 

――ちなみに、太賀さんご自身が今いちばん挑戦してみたいのはどんな役ですか?

 

「いちばんやりたい役…、難しいなぁ。最近はちょっとコミカルな役が多いので、それとは違う“熱い役”をやってみたいです。もうちょっとヒューマンドラマのようなもので…」

 

――例えば、熱血教師とか?

 

「熱血教師でもいいですね(笑)。熱苦しいぐらいの役をやってみたいです。久しくそんな役をやってないので」

 

――今後まだまだ味を増していって、いろんな役柄で楽しませてくれそうです。

 

「そうなればいいですね。頑張ります!」

 

Interview & Writing by エイミー野中

 

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≪Profile≫
太賀 (たいが)
’93年、東京都出身。『那須少年記』(’08/初山恭洋監督)で映画初主演を果たす。’14年に「第6回TAMA映画賞」にて『ほとりの朔子』(’14/深田晃司監督)、『私の男』(’14/熊切 和嘉監督)などへの出演が評価され最優秀新進男優賞を受賞。’16年には『淵に立つ』(深田晃司監督)で「第38回ヨコハマ映画祭」の最優秀新人賞を受賞した。ドラマや舞台、映画など活躍の場は広く、カメラマンデビューも果たしている。

 

≪Movie Information≫

映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』

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STORY
タイジ(太賀)は幼い頃から美しい母・光子(吉田羊)のことが大好きだった。だが、家の中にいる光子はいつも情緒不安定で、タイジの行動にイラつき、容赦なく手を上げる母親だった。17歳になったタイジは、ある日光子から酷い暴力を受けたことをきっかけに、家を出てひとりで生きていく決意をする。努力を重ね、一流企業の営業職に就いたタイジは幼い頃の体験のせいで、どこか卑屈で自分の殻に閉じこもった大人になっていた。しかし、かけがえのない友人たちの言葉に心を動かされ、再び母と向き合う決意をする。

 

出演:太賀、吉田羊
森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、斉藤陽一郎、おかやまはじめ、木野花、他
監督:御法川修 脚本:大谷洋介
原作:歌川たいじ「母さんがどんなに僕を嫌いでも」(KADOKAWA刊)
主題歌:ゴスペラーズ「Seven Seas Journey」(キューンミュージック)
配給:REGENTS
※全国公開中

 

 

 

OFFICIAL WEB SITE:http://hahaboku-movie.jp//

 

 ©2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会

 

 


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