エンターテインメントフリーペーパー フライング・ポストマン・プレス

フライング・ポストマン・プレス

2015/12/01

【インタビュー】12/5公開の日本・トルコ合作映画『海難1890』に二役で出演! 女優・忽那汐里が伝えたいこと

「言葉が通じない中でも、助け合う人々が目の前にいた。

本気でやってくださる人々が何よりの支えになりました」

 

『海難1890』メイン

 

 

 

1890年に起こったオスマン帝国の軍艦海難事故と日本人による救出劇、イラン・イラク戦争中のトルコによる邦人救出劇という感動の実話を描き、日本とトルコの長きにわたる友情を伝える映画『海難1890』。本作において、人命救助に尽くすハルとイランの日本人学校で教師を務める春海の二役を演じた忽那汐里に話を聞いた。国境を超えて繋がる人と人、時を超えて受け継がれる“人の想い”について――。

 


 

 

――日本とトルコの共同製作映画ということで、現場ではコミュニケーションの難しさも感じたのではないでしょうか。

 

「海外の方々と一緒に映画を作る際には必ず直面することだと思いますが、やっぱり文化が違いますから、いろいろと気を配る必要が出てきます。話し合う時間は日本だけで作る映画に比べて多かったと思います。とは言え、最終的には言葉を超えたところで通じ合えていたようにも思えていて。国を超えてキャストやスタッフが信頼し合い、気持ちの伝達ができればいいのだと。妥協せずに相手の言葉に耳を傾け、根気強く作品のことを思って現場を共にすれば、ちゃんと理解し合えるということを今回の現場を通じて教わりました」

 

――二国製作の作品であり、忽那さん個人としては二役を演じるということも挑戦だったかと思います。まずはエルトゥールル号海難事故編で演じたハルについて、どんなことを心がけましたか?

 

「ハルは過去に辛い経験をしていて、それがトラウマとなり、話せなくなってしまった女性です。以前にも一度、ほとんど言葉を発せない女性の役を演じたことがありましたが、演じていた間ずっともどかしさを感じ、そのもどかしさが完成した作品にも映ってしまったと感じたことがあったんです。そんな経験を経て今回このハルという役を演じることになり、まず思ったのは苦しい胸の内だけを表現する自己中心的な表現にはならないようにしようということ。特にエルトゥールル号の海難事故とその後の救出劇の場面は、スピード感を持って展開していきます。座礁事故の様子と事故現場の漁村の様子が重なり合って映る中、“苦しい苦しい”ばかりのハルの姿が映っていてはちょっと違うのかな…と。ハルがなぜこのトラウマを抱えることになったのか。日常生活を送る中どれほどそのトラウマが脳裏をよぎるのか。その感覚はきちんと自分のものにしながらも、自己中心的になり過ぎないよう、そのバランスを探っていく現場になりました」

 

――ハルを演じる上では、ハルが助手を務める医師・田村元貞(内野聖陽)との関わり合いも大切だったと思います。共演された内野さんの印象もお聞かせください。

 

「ひとことで言うと、とても熱い方でした。今回私たちは医師とその助手という役柄でしたから、救出劇のシーンをできるだけ慣れた手つきで行う必要があり、撮影前に医療行為の指導を受けたんです。そこで内野さんと初めてお会いして。ある会議室で行ったんですが、私が到着した時には既に内野さんが心臓マッサージの練習をされていて。初対面で、しかもお会いしてすぐにも関わらず、“ハル、来い!”と(笑)」

 

――その時点で既に役に入られていたんですね(笑)!?

 

「そうなんです。その内野さんの熱意に引っ張られ、もう付いていくしかありませんでした。ハルは話すことのできない女性ですから、“内野さんがハルと呼びかけたということは、話してはいけないのか…”とも深読みしてしまったりしながら(笑)。内野さんには現場でもずっと引っ張っていっていただきました。熱い内野さんがいらしたからこそ、私もハルとして、海難事故と救出劇の撮影に熱量高くして臨むことができました」

 

 

 

『海難1890』サブ2

 

 

 

――エルトゥールル号の海難事故と救出劇は、実際の事故現場である和歌山県串本町に当時の漁村を再現するセットを建てて、撮影したそうですね。

 

「はい。実際の現場近くで撮影できたことは本当にありがたかったです。ある日、トルコのキャストの方々が串本町の沖合の紀伊大島までタクシーで橋を渡って行ったはいいけれど、いざ帰ろうと思ったら帰る足がなくなって困っていたそうなんです。そんな時に、地元の方が乗せてくださったと。その乗せてくださった親切な方のおじいさんが、実際にエルトゥールル号の海難事故の際に救出にあたった方だったと。そんなことをごく身近に感じながら撮影できるというのは滅多にないこと。演技をする上で、とても大きなことだったと思います」

 

――忽那さんご自身は、海難事故と救出劇の撮影を通じてどんなことを感じましたか?

 

「一番印象に残っているのは、地元のエキストラの方々の姿です。真冬の極寒の中、ビショビショ、血のりまみれになっての過酷な撮影の中、エキストラとして参加してくださった方々が、見るに堪えないといった様子でキャストのみんなの体をあたためてくださったんです。その様子に、今回共演させていただいた内野(聖陽)さんとも“人の気持ちは当時も今も変わらないんだね”と話していて。言葉が通じない中で助け合うという光景が本当に目の前に広がっていた。本気でやってくださる人がそこにいたことが、この映画を作る上で何よりの支えになりました」

 

 

『海難1890』サブ5

 

 

――海難事故から約100年後、イラン・イラク戦争の際にイランの日本人学校の教師をする女性・春海も演じていらっしゃいます。ハルと春海に繋がりを持たせるといったことは考えましたか?

 

「敢えて役に繋がりを持たせることは考えなかったです。ただ、ハルを演じた上で感じたことを胸に留めて、春海という役を演じる際にも持っていこうとは思っていました。エルトゥールル号の救出劇がすべてのきっかけとなり、トルコの人々の心に強く残ったからこそ、イラン・イラク戦争においてのトルコによる邦人救出劇があったわけですから。海難事故当時の日本人たちの何がトルコの人々の胸に刻まれたのか。そこを理解することが一番大事であり、そこを伝えたいと思っていました。実は私自身、この映画のお話をいただくまで日本とトルコの間にこんなことがあったというのを知らなかったんです。今回初めて、エルトゥールル号の船員たちを日本人が助けたということがトルコの方々にとっては教科書にも載っているぐらいの史実だと知って驚き、同時に日本でほとんど受け継がれていないことを残念に思いました。だからこそ伝えたいと。全スタッフ、全キャストがそれぞれの国を背負って伝えるという強い想いを持って作った映画です。この映画が多くの人々にとって“知るきっかけ”となればいいと、そう願っています」

 

 


 

 

【profile】

忽那汐里(くつな しおり)

http://beamie.jp/t/shioli_kutsuna.html

’92年生まれ、オーストラリア出身。主な映画に『マイ・バック・ページ』(’11)、『許されざる者』(’13)。来年1/10より主演ドラマ『鴨川食堂』(NHK・BSプレミアム)がスタート。さらに本作に続き、来年2/27よりウェイン・ワン監督作『女が眠る時』の公開を控える。

 

 

 

【最新出演映画】

『海難1890』

http://www.kainan1890.jp

’15年/日・トルコ/132分

企画・監督:田中光敏

脚本:小松江里子

出演:内野聖陽、ケナン・エジェ、忽那汐里、アリジャン・ユジェソイ、夏川結衣、永島敏行、竹中直人、笹野高史、他

※12/5(土)より全国公開

(C)2015 Ertugrul Film Partners

 

 

 

【STORY】

1890年、和歌山県串本町沖。オスマン帝国(後のトルコ)の親善使節団を乗せた軍艦エルトゥールル号が事故に遭い、乗組員500名以上が嵐の海に投げ出されてしまう。そんな中、元紀州藩士の医師・田村元貞(内野聖陽)やその助手を務めるハル(忽那汐里)ら、地元住民が救援活動に乗り出すのだった…。そしてイラン・イラク戦争中の1985年。攻撃の緊張が高まる中、イランのテヘランには日本人学校で教師を務める春海(忽那汐里)をはじめ、日本人215人が取り残されていた。日本政府による救出も叶わぬ中、日本大使館は最後の望みとしてトルコに救出を依頼し…。


PR

FLYING POSTMAN PRESSは全国5都市で配布しています。