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2019/07/12

【インタビュー】7/13(土)より公開の映画『TOURISM』主演の遠藤新菜が語る“実体験を生かす”演技とディープなシンガポール旅

「枠から外れた旅をして楽しそうにしている姿を観て

自分もやってみたいなと思ってくださったらうれしい」

 

 

遠藤新菜さんアー写 

 

『大和(カリフォルニア)』(’16)が国内外で注目された宮崎大祐監督の最新作『TOURISM』は、日本からシンガポールへと旅立った女の子が、思いがけずシンガポール本来の姿に出会う様子を映したロードムービー。主人公のニーナを演じるのは、『大和(カリフォルニア)』にも出演した遠藤新菜。モキュメンタリーともひと味違う、独特のリアルな空気感はどうやって作り上げられたのか、話を聞いた。

 

 


 

 

――フィクションとドキュメンタリー、どちらの雰囲気もある映画だと感じました。とりわけ話す言葉が自然でしたが、本作には脚本はあったのでしょうか?

 

「ないに等しいです。でも宮崎監督の作品ってふわっとした空気感を醸し出しつつ、実はすごくしっかりした作りになっていて。今回も毎シーン、監督の中では“ここは絶対こういうシーンにするから”という流れはありましたね。そういう、監督の中にある流れをしっかりやりつつ、できる範囲で私とSUMIREちゃんのいつもの空気感を保ちつつ、という感じでやっていました。私が演じたニーナもSUMIREちゃんが演じたスーも、キャラクターとしてはどちらも“映画用の自分”にはしていますけど、関係値は普段の私たちからあまり離れていないんです。例えば、SUMIREちゃんって天然なところがあるんですけど、普段やっているように私が軽くツッコむということを今回の映画の中でもやっています。できるだけSUMIREちゃんの面白さが伝わるようにと思ってツッコむ言葉も結構考えました。多分、SUMIREちゃんのもそんなふうに考えながらやってくれていたんだと思う。お互いを生かせるようにと無意識でやっていた感じです」

 

――“映画用の自分”にした、という点を詳しく聞かせていただけますか。

 

「これは今回に限ったことじゃなくどの役でもそうなんですけど、何か新しい役にアプローチする時には、いつもまずは自分の引き出しの中にあるもので、その役の軸になりそうなものを探すんです。例えば、今回のニーナの場合は“バカっぽさ”がそうでした(笑)。私の中にある適当な喋り方というか…ちょっとバカっぽい喋り方を引き出し、それを割と強めに出していくようにしました。あとニーナの感じが見た目で伝わるようにと思って、ファッションに関しては自分でスタイリングをさせてもらいました。髪型はクセのあるウルフで、その撮影当時の旬を限りなく詰め込みつつ、ちゃんとニーナのルーツが見える服を、と思って選んだつもりです」

 

――自分の中にある要素を手がかりにして毎回演じると、いかに普段の生活でたくさんのことを経験し、インプットするかが大事になりますね。

 

「本当にそうです。私にとっては普段の体験が大事なんです。どうしてかと言うと、私は自分とは完全に違う人間を作るということがすごく苦手なので。もらった役の中に何かひとつでいいから共感できるもの、自分の要素を生かせるところを見つけてから演じていきたいんです。となると、自分の中にある要素が多ければ多いほどいいんですよね。そのためには普段の生活でできるだけ多くの体験をしておかないといけないのかなと。とにかく普段を精一杯生きる、何事も楽しんでいたいですね。例えばライブを観に行って、そのアーティストの良さをちゃんと自分の耳と目で感じ、自分の中にそれを保存しておこうとか。携帯をなくしちゃったり、お金が足りなくなったりした時に感じた“どうしよう…”という思いを大事に留めておこうとか。それってつまり全部を全力で生きるということだから、それなりに疲れるんですけどね(笑)」

 

 

tourism_sub2

 

 

――この映画の中でニーナは“旅先で携帯をなくす”という経験をしますが、そこもご自身の経験が生かされていたりするんですか?

 

「はい。私、結構携帯をどこかにやっちゃうんです(笑)。今回その経験が生きましたね。この映画では“携帯をなくす”というのは鍵になっています。今の世の中で携帯をなくすって大変な事態じゃないですか。でも、なくしたならなくしたなりの楽しみ方っていうのもあるってことがきっと観ていただくと伝わるのかなと思います」

 

――シンガポールには行ったことがありましたか?

 

「はい、何度か。私の父がシンガポールへ単身赴任している時期があって、母と一緒に父のところを訪ねたり。仕事でも行ったことがあります」

 

――本作に映るシンガポールのディープ・スポットにも行ったことはありました?

 

「ありました。これは多分、旅好きの両親の影響が大きいです。両親と一緒に旅するとザ・観光地っていうところに連れて行ってもらえないんです(笑)。シンガポールでもマーライオンのようなザ・観光地には連れて行ってはもらえず、リトル・インディアやチャイナタウンのようなディープな場所に連れて行かれるんです。多分、そうやって私を教育しようとか思っているわけじゃなく、ただただ自分たちが楽しみたいからそうしているんだと思いますけど(笑)」

 

――実際にそのディース・スポットを巡ってみて印象的だったのは?

 

「リトル・インディアが私は大好きですね。なんか意味がわからないんですよ、あそこ。ものすごくカラフルな、ワケのわからないオブジェが地面から生えていたりしますから(笑)。今回ほぼ丸一日かけてシンガポールのディープ・スポットを巡り、改めてシンガポールって面白いなって思いました。例えば、昼と夜とでは違う街を通り越して、違う星に来たのかなって思うぐらい雰囲気がガラッと変わります。また、夜になればランドマークのマリーナベイサンズが、こんなに光る必要あるのっていうぐらいに光り始める。それはもう近未来的な光景で。マリーナベイサンズのほうには、すぐそばに低い古い家が並んでいたりもするんです。ひとつの画の中に格差が映り、いろんな文化が映っている感じがあって。シンガポールっていい意味で一貫性がないんですよね。多分、もともとが移民の国というのも大きいんだと思います。またそういう場所だからこそ、もしかしたら日本に居たらちょっと浮くかもしれないニーナとスーがかえって馴染んでいたのかなとも思います」

 

 

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――ニーナにとってこのシンガポールの旅はどんな旅だったと思いますか?

 

「間違いなくニーナはこの旅を通して変わったと思います。ニーナだけじゃなく、スーも最後にはどこかたくましくなっているような気がする。ザ・観光地というところから離れたところに、携帯も持たず行ってみるってなかなか私たちみたいな若い人たちってやらないと思うんです。やっぱり怖いでしょうし。でも、ニーナとスーみたいな謎の親近感があるふたりが(笑)、こうしてちょっと枠から外れた旅をして楽しそうにしている姿を観て自分もやってみたいなと思ってくださったらうれしい。宮崎監督が言っていたんです。海外に行って“やっぱり日本がいいよね”とか“日本はこういうところがダメだよね”ということばかり思うんじゃなく、その行った場所の良さを吸収できる自分でいたほうがいいんじゃないかなって。私自身もこの映画を観た時、そんなことを思ったんです。できるだけいろんなところに行って“ここも面白い”という感覚を持つことってやっぱり大事なんだなって。だからぜひ、私ぐらいの歳のみなさんにたくさん観てもらいたいなって思います」

 

 


 

 

遠藤新菜(えんどう にいな)

 

’94年生まれ。’13年に『海にしずめる』で映画初出演にして初主演。’14年より雑誌non-noの専属モデルとしても活躍している。主な出演作に『無伴奏』(’15)、『大和(カリフォルニア)』(’16)。JP THE WAVYのMV『Just A Lil Bit』では監督を務めるなど、多才ぶりを発揮している。

 

 

『TOURISM』

http://tourism2019.net/

監督・脚本:宮崎大祐

’18年/シンガポール・日/77分

出演:遠藤新菜、SUMIRE、柳 喬之、他

※7/13(土)より渋谷ユーロスペース他にて全国順次公開

 

©DEEP END PICTURES INC.


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