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2019/01/25

【インタビュー】好評放送中! 新感覚ゾンビ・ドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』主演・石橋菜津美が語るドラマの見どころ

「人間らしさが現われ、胸を打つドラマが詰まっている

ゾンビになる過程を楽しんでいただきたい」

 

 『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』サブ2

 

 

 

現在放送中のNHKよるドラ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』。注目の劇作家・櫻井智也が脚本を手がけるオリジナル作品であり、“ゾンビ”をひとつのモチーフとして今の日本で生きる人々の漠然とした不安や、隠されていた欲望を映し出す、新感覚のゾンビ・ドラマだ。本作で主人公のみずほを演じるのが石橋菜津美。“ゾンビ”に遭遇して人生を見つめ直す女性を大方は低体温で、かつ時折爆発力を示しつつ、印象的に演じている。脚本について、現場について、これまでにないドラマの制作の裏側を語ってくれた。

 

 


 

 

――『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』の脚本を最初に読んだ時、どう感じましたか?

 

「脚本の櫻井(智也)さんは普段舞台を演出されている方で、だからか台詞の量が多いというのが第一印象でした。でも、笑える部分としっかりと伝える部分の緩急がついているためか、その台詞の量の多さを感じさせない脚本だなとも。また、しっかり伝える部分も人間から見たら深いテーマを感じますが、ゾンビから見たらかなり面白いことになっていたりする…そのサジ加減、具合がちょうどいいなと感じました。“これ言ってみたい”と思う台詞も多く、演じるのが楽しみだなと純粋に思いました」

 

――“言ってみたい”と思った台詞は、例えばどの場面のどんな言葉ですか?

 

「例えば2話で出てくる“黙れよ!”という言葉とか。別居中の夫・小池(大東駿介)に私が演じるみずほがぶつける言葉なんですけど、私は普段感情的になることがほとんどないので、言うのがすごく楽しみでした。実際、現場でこの台詞を発した時には本当に気持ち良かったです。あとみずほがドラマの序盤で、“死にたいわけじゃないけど、なんで生きてるかわからない”というようなことを言いますが、そこも言ってみたいと思うものでした。みずほの考えていることは、私自身が考えていることとどこか重なっています。私もふと、こんなことを考えたりするんですよ。そんな言葉を“みずほ”として発するのがなんだか恥ずかしいような…不思議な感覚も覚えました」

 

――ドラマ初回で、みずほが自転車を漕ぎながら「ああ寒い、死にたい」と何気なく言うところもリアルだなと感じました。本当に死ぬわけじゃないけれど、何となくそう思考してしまうところが。

 

「そう、こういうことってあるんですよね。本当に死にたいわけじゃないけど、“ちょっと今嫌だな”ということを“死にたい”という言葉に置き換えて何となく言ってしまうとか。若者、というくくりで言ってしまうのは良くないと思いますが…でも、私と同じ世代の若い人たちにとっては、このみずほの感覚はわかるという方が多いような気がします」

 

――みずほの心の声の表現方法もユニークですね。時には心の声にツッコむ心の声もあったり、何重にもなって響いてくるというのが。

 

「そうなんですよね。でもこういうことも良くありませんか? 例えばこうしてお話している間にも、自分が言っていることに心の声が“それ本当?”とツッコミを入れたり、“そうそう”と相づちを打っていたりする。2話ではそのみずほの心の声がワーッと響く場面がありますが、その場面のためにアフレコでさまざまな声の素材を録り、録った素材を混ぜ合わせて作られたものなんです。内容としてはすごく真面目な自問自答なのですが、ああしていろんな響きの音を入れることで、印象としてはポップになっている。できあがったものを観た時には私自身も面白いなって思いました」

 

――みずほと同居している同級生の女性ふたり、柚木(土村芳)と美佐江(瀧内公美)との距離感も絶妙です。

 

「ありがとうございます。1話の最初のほうで3人の同居する様子が映りますが、3人のシーンはそこから撮っていきました。何度かリハーサルをして、本番では一連で撮影して。やっぱり演じる私たちも人間なので、一人間として探り合いをしていくところから始まるのが普通ですが、このドラマの3人のシーンでは最初にそんなことをするようなこともなかったです。なんて言うか…みんな演じる役のままで現場に来た、という印象でした。だから、役以外の部分の探り合いをする必要が一切なかった。だから作り上げたという感覚もないんですよ。本当に、ずっと前から一緒にいた同級生同士という感覚に最初からなれた。すごくやりやすかったです」

 

――シーンの方向性について話し合う必要もなかったわけですね?

 

「はい。最初からちゃんと3人の共通認識がありましたから。例えば、“みずほだったらそうしそうだよね”とか、“柚木だったらこうしちゃうだろうね”というのがあったんです。もしかしたら、私以外のふたりのほうがみずほのことをちゃんとわかっているんじゃないかと思うぐらいでした。さっきお話したように、私自身、みずほとかなり近い人間だと思っています。だからふたりに“みずほってこうだよね”と指摘されると、まるで自分のことを言われているような感覚になるんです。そういうことってあまり感じたことがなく、少し怖い部分もあったりします」

 

――怖い、ですか。

 

「自分のことを他人に言い当てられるのって怖かったりしませんか? そういう感覚になることがこの現場ではすごく多いんです」

 

――となると、みずほを演じながら自分自身と向き合うような感覚になるんでしょうね。

 

「そういうところは多いです。このドラマの現場では、自分の在り方を考えることが多いです。例えば、今ここにいる自分は他人からどういうふうに見られていて、だからこういうふうにしたほうがいいな、とか。その一方で、そうは言ってもそんなに自分のことを他人は気にしていないだろうから、そんなことをしても無駄だよ、と期待する自分に常に厳しく言う自分もいます。二重人格というわけではないのですが、常に思考を巡らせているという感じはあります。自問自答は他人より多くしているかもしれません」

 

――それは演じる役に対してもそうですか? 様々思考を巡らせますか?

 

「考えてしまう傾向は強いほうなのかもしれません。例えば、この役はこういう時にこんな顔をする、と考えたとします。その考えたことを思うように表現できるとは限りませんし、またその自分で考えたことが監督が求めていることとかけ離れている、というような場合もあるわけです。その結果何もできなくなるというのが怖いので、あまり考え過ぎることのないようにとは思っています」

 

『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』メイン

 

――それにしても、ゾンビの個性が際立つドラマです。これまでに観たことのない、人間味溢れるゾンビが盛りだくさんですね(笑)。

 

「私もゾンビとして見ていいのか、ヤバイ風邪を引いた人ぐらいで見ればいいのか、と混乱してしまうぐらいです(笑)。それぐらい、みなさん、ゾンビになる前の人間の色が強く出ていて。ゾンビになったことはないのでわからないですけど(笑)、多分実際はこんな感じになっちゃうのかなと思うんです。ゾンビになってしまう人も、近くにいる人がゾンビになってしまう人も、すぐに割り切ることはできないんじゃないかと。例えば、これまで近くにいた人を“はい、ゾンビになったから差別します。さようなら”と、急にはできないと思うんですよ。変化していって、いよいよ言葉も通じなくなり、噛まれそうになって初めてあきらめて野に放とうとする…というぐらいかなと。私だったらそうですね。いよいよのところまでは、ちゃんと見ておこうと思うだろうなと」

 

――今後は、そのゾンビと同居生活も送ることになるとか(笑)?

 

「はい(笑)。ゾンビをツールとして使おうと同居するんですけど…」

 

――え、“ゾンビをツールとして使う”って(笑)?

 

「そうとしか言えないんですけど(笑)…でも根本ではゾンビになったからと言って、人間じゃなくなったとは言い切れない、という想いあっての同居です。同居するゾンビのことも、半人間・半ゾンビとして少し丁寧に扱う、と言いますか…完全に人間として扱うまではしないけど、完全にゾンビの仲間に入れてしまうほどゾンビ扱いはしない、という。そのぐらいの中間な感じで演じています」

 

――みずほが関わるゾンビの中でも、特に石橋さん自身が好きなゾンビを教えてください。

 

「小池か神田くん(渡辺大知)のどちらかで迷いますね。ハッピー・ゾンビは神田くんで、本能むき出しなのが小池。難しいけど、どちらかひとりを選ぶとしたら小池ゾンビでしょうか。 “ああ、こんなにも人ってみっともないんだな”と思わせる部分も含めて愛おしいと言いますか(笑)。演じる大東さんが、小池のゾンビになる過程を考え抜かれていて。リハーサルでいろんなことを試され、これをどうまとめてくるんだろうと思っていたら、本番では“そこに行き着いたか”というものを見せてくださった。現場では必死に笑いを堪えるぐらい面白かったです。大東さん、こうしたほうがゾンビとしては面白いというものが即座に出てくる。ゾンビ・マスターだなと思います(笑)」

 

――今後の見どころを教えてください。

 

「まず、誰がゾンビになり、誰が人間のままでいるのか、というところを楽しみにしていただきたいです。また、ゾンビになってしまう人に関しては、そのゾンビになる過程を観ていただきたいです。このドラマではこれからゾンビになろうという人は、その過程で人間らしさを溢れさせます。そこに胸を打つドラマが詰まっています。そして、みずほとしてはその経験を経てどう変わっていくのか。徐々に変わっていくみずほを見て、ちょっと世の中の見え方が変わったと思ってくださる方がうれしいです。ぜひ最後まで楽しんでいただきたいです」

 

 


 

 

石橋菜津美(いしばし なつみ)

 

石橋菜津美アー写 

 

’92年生まれ、東京都出身。ドラマ近作に『昭和元禄落語心中』(’18)、映画近作に『三つの光』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(いずれも’17)。現在はNHKよるドラ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』が放映中他、FOD・Netflixにて主演作『夫のちんぽが入らない』が2019年に配信予定。

 

 

 

『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』

https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/zombie/

作:櫻井智也
演出:梛川善郎、中野亮平、野口雄大
出演:石橋菜津美、土村 芳、瀧内公美、大東駿介、渡辺大知、原日出子、岩松 了、他

※NHK総合にて毎週土曜23:30~(連続8回)


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