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フライング・ポストマン・プレス

2018/06/02

【インタビュー】全国順次公開中! “映画の向こう側へと突き抜ける”『聖なるもの』出演の小川紗良が語る≪映画≫というものづくり

「いろんなカルチャー、レイヤーを重ね合わせ

“今っぽさ”が乗った映画になった」

 

聖なるもの

 

©2017『聖なるもの』フィルムパートナーズ

 

 

 

 

長編デビュー作『花に嵐』でPFFアワード2016準グランプリを獲得した岩切一空の新作『聖なるもの』が映画界をザワつかせている。自主映画の制作過程をフェイク・ドキュメンタリー方式で映し、予測不可能な展開を見せながらいつしか観客を“映画の向こう側”へ誘う、新しくぶっ飛びまくった映画。この映画で自身と同じ名前の“小川”役を演じている小川紗良。女優業のみならず、自身が監督を務め映画を撮るなど作り手としても才能を発揮している若手注目株に話を聞いた。

 

 


 

 

 

――『聖なるもの』はフェイク・ドキュメンタリー形式で展開する作品ですが、脚本にはどれだけ忠実だったのでしょうか?

 

「ちゃんと脚本はあり、物語の大筋はそこに書かれていた通りです。でもやっぱり、撮りながら岩切(一空)監督の頭の中でどんどん映画が膨らんでいき、シーンも追加されていって。最初にあった軸はそのままですが周りが大きく膨らみ、最終的にこの映画に仕上がったという感じです」

 

――となると、最初に脚本を読んだ時の印象と完成した映画を観た時の印象は違ったのでは?

 

「違いました。でも…実は最終的にどんな映画になるのか、最初に脚本を読んだ時点でもまったく想像がつかなかったんです。もしかしたら映画の完成形を観た今でも、この映画のすべてを理解できていないかもしれません。でも、それでいいのかなって。なんて言うか…言葉にできないような映画だと思いますので」

 

――小川さんが役に関してはいかがでしょう。このキャラクターも撮影を進めるほどに変化していったりしたのでしょうか?

 

「いや、私の役に関しては割と最初からアテ書きだったのかなと思います。私は“小川”という役を演じていますが、これが現実とかなりリンクしていて。映画の中の関係性と同じで、岩切さんと私は同じ大学の映画サークルの先輩・後輩という間柄なんです。岩切さんは私の性格をよく知っているので、“岩切さんから見た私”といった感じだと思います」

 

――この映画を観て、小川というキャラクターを好きにならない人はいないだろうと思うぐらい、魅力的なキャラクターです。

 

「どうでしょう(笑)。ずっとブーブー文句を言いながら岩切さんの映画作りを手伝っていますけど」

 

――でも、文句を言いながらも滝行を真剣にやってみたり(笑)。あの生真面目さが可笑しく、愛おしく思えます。

 

「ありがとうございます(笑)。実は映画の中で小川が置かれている状況は、そのまま私の状況に重なっていて。映画の中で小川は“ちょっと手伝って”と岩切さんに言われ、自分では少しだけ手伝うつもりが、どんどん岩切さんの映画作りに巻き込まれていくじゃないですか。現実もそれと一緒で、最初岩切さんに“ちょっと出演して”と言われ、“ちょっとだけならいいですよ”と参加したんです。そうしたらどんどんシーンが増えていって、“あれ、これいつ終わるの…?”みたいな感じになり、結局は最後の最後まで撮影していたという(笑)」

 

――この映画の撮影中、岩切さんと議論することもあったのでしょうか?

 

「ありました。一番話し合ったのはフェイクドキュメンタリー風の映画というところで、どれだけお芝居をしたらいいのか、どれだけ素でいていいのかというところです」

 

――またアテ書きとなると、現実と映画の境界線がより曖昧になりますね。

 

「そうなんですよ。自分と同じ名前の役に最初はどこまで芝居すればいいのかと悩みました。でも岩切さんが、“フェイクドキュメンタリーとは言え、映画だし、作り物だから、劇映画と同じで結局お芝居をしているのと変わらない”と。それで結局はいつもと同じように、他の劇映画と同じようにちゃんと演じようと思ってやりました」

 

――この映画を観ると、改めて“映画ってなんなんだろう?”と考えてしまいます。

 

「そう、“映画の映画”ですよね。岩切さんは“映画は祈り”と言っていて。現実では叶わないことを祈るように撮って映画にしていくんだと。そういうことが伝わる映画です。あともうひとつ、生まれた時からさまざまなメディアやカルチャーに触れてきた私たちの世代を象徴するような映画とも言えるのかなと。いろんなカルチャーを詰め込み、レイヤーを重ね合わせ、“今っぽさ”が乗った映画になったと思います

 

――映画というものを小川さん自身はどう見ているのか、聞かせてください。まず小川さんは、演じるだけではなく監督として映画を作ったりもされている。自分も映画を撮りたいと初めて思ったのはいつのことですか?

 

「高校生の時に文化祭や体育祭で発表する用にドキュメンタリーを撮り始めました。そこから映像を作ることが楽しくなっていって」

 

――ドキュメンタリーからフィクションへと移行したのはどうしてですか?

 

「高校生の時はそういう学校の枠組みの中で、友だちに観てもらうことが楽しくてやっていたんですけど、大学に入ったら自然と枠組みがなくなって自由になり、自分の撮った映像を友だちだけではなく、もっといろんな人に観てもらいたいなと思うようになりました。となるとやっぱり映画かなと。それでフィクション映画を作り始めました」

 

――映画監督として、最も惹かれるテーマはどんなものですか?

 

「いろいろありますが…やっぱり女の子の気持ちを描いていきたいという思いがあります。これまで女性として生きてきて、あの頃はこう思っていたなとか、今はこう思っているとか、これから先こう思うだろうとか…そんなふうに女性の目線で映画を撮っていきたいなと」

 

――つまり、小川さんが生きて考えたことや見てきたこと、思い描くことがすべて、物語になりえるわけですね?

 

「はい。だから日々、いろんなアイデアを書き留めたりしているんです。ただ…今はどちらかというと女優業をしっかりやっていきたいという思いがあって」

 

――それはどうして?

 

「ひとつは、大学に入って3年間毎年映画を撮ってきて、ここら辺で一旦練る時間というか、考える時間が欲しいと思ったこと。あともうひとつ、私は今21歳ですが、女優としての勝負の年齢だなって思っていて。そもそもそんなに器用ではないので、監督と女優を行き来しているとどうしても集中し切れなくなる瞬間もあるんです。それで一旦ここで女優業に集中しようと。もちろん、将来的には作るほうもできたらと思っていますが」

 

――海外では女優として一線に立つ方が作り手としても一流であるという例は多々ありますが、日本映画界では稀ですよね。ぜひ、前例となっていただきたいです。

 

「そうなれるよう、がんばります」

 

 

 


 

 

 

小川紗良(おがわ さら)

 

小川紗良2018年宣材

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

’96年生まれ、東京都出身。早稲田大学に通いながら女優・監督として活躍。監督作『最期の星』『BEATOPIA』は各地の映画祭で上映中。女優業の近作に主演映画『ウィッチ・フウィッチ』(いずれも’18)。6/3(日)22:30より放送の日本テレビ系連続ドラマ『崖っぷちホテル』第8話にも出演。

 

 

 

『聖なるもの』

http://seinarumono.com/

’17年/日/90分 

監督・脚本・編集:岩切一空

出演:南 美櫻、小川紗良、岩切一空、他

※全国順次公開中


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